上手くいかずとも自分を信じてみる
神や霊魂や前世・来世、あるいは運命の糸などといった、現在の科学で証明できないことはあるのかも知れない。例えば神の存在については多くの哲学者が論理的な証明を試みたが、理論物理学が理論的な模型や理論的仮定を基に理論を構築し、既知の実験事実(観測や観察の結果)や、自然現象などを説明する学問同様、神や宗教概念についての理論的考察を行う学問もある。それらを「神学」といい、主にキリスト教を指すのが一般的だが、こ...
View Articleある一人の女性を偲ぶ日 ①
子どもの頃、幽霊を信じていた理由は、子どもだからである。幽霊がいるから幽霊の映画や怪談噺があるのだろうと子ども心に信じていた。疑う根拠も知恵も知識もなかったがあるとき、「幽霊の正体見たり枯れすすき」という句を知った。なるほど、これが大人のいう幽霊の正体だったのかと思った。子どもの自分には幽霊だが、大人にとっては枯れすすきなのだと。幽霊の映画で怖かったのは、『四谷怪談』であった。主人公はお岩の亡霊であ...
View Articleとある一人の女性を偲ぶ日 ②
「また朝がやってきた。19日以来の、このどうしようもない感情、憂さ晴らしに酔うだけ酔って、すべてを嘔吐し忘れた方が良かったのかもしれない。(中略)あなたと二日の休日を過ごしたい」。長い長い記述の最後に、旅に出よう…の詩で最後の日記が閉じられている。19日のことで神経を揺さぶられている彼女だが、何があったのか、日記の冒頭には以下の詩がある。 一切の人間はもういらない 人間関係はいらない...
View Article小林麻央さんを偲ぶ
小林麻央さんが長い闘病から解放された。彼女の痛みや苦しみがどれほどであったかを想像するのは難しいが、死が彼女を救ったのだと感じた。人の死は悲しいが、人の死はまた苦しみを和らげるもの。おそらく彼女は、どうしてこんなに苦しまなければならないのかを日々実感していたし、この苦しみを耐えることが良い方向に繋がると信じたこともあったろう。が、いつしか苦しみの果てには悲しい現実が訪れることも予感していただろう。そ...
View Article犬が嘘をつくという話
人は誰でも嘘をつくが、嘘をつくときは真実よりも嘘に価値を置いているからで、そのとき嘘は自分に利益があるからだ。いかなる動物にあって、人間だけが嘘をつくが、「嘘も方便」として許容される嘘もあるといい、果たしてそれは都合のいい解釈であって、「嘘も方便」とさえいえば、いくらでも嘘をつける、正当化もできよう。20代のころ、こういう論争をしたことがある。人間だけが嘘をつくのは言葉があるからで、動物は絶対に嘘な...
View Article結局、がんというやつは…
10年位前だったか友人が、「打ちのめされるようなすごい本があるので読むか?」というので、「これまで借りて読んだ本で気に入ったものはなかったが、誰の何ていう本だ?」と聞くと、「とにかく打ちのめされるようなすごい本。明日持ってくる」というので、「いいよ、面白くなければ止めるが…」。翌日持参した本のタイトルを見て、「なんじゃこりゃ~」と笑った。...
View Article結局、がんというやつは… ②
「あいつは単細胞なやつ」という。単細胞とは単一の細胞の意味だから、考え方が一面的で単純な人。物事をあまり深く考えない人。などを総称した言葉で、言わずもがな誉め言葉ではない。がん細胞は、DNA(遺伝子)が何らかの原因によって傷ついてしまうと、ある1つの正常な細胞が突然変異し、無秩序に増殖する。これががんの始まりとされ、増殖の仕方はまさに暴走である。普通の細胞は例えば切り傷などの場合、皮膚の細胞はけがの...
View Article結局、がんというやつは… ③
「人間は最終的にとことんのところ何を欲しているのか。それは世に理解されることであり、世に認められることである」と、谷沢永一は言っている。それこそ人間は、「息をひきとるまで生涯をかけて、私を認めてくれ、私を認めてくれと、声なき声で叫びつづける生き物であろうか」。マズローの欲求5段階説のうち、承認欲求は4番目の欲求に位置付けられている。承認欲求はその名の通り、「欲求」であり、その人が満たしたいと感じてい...
View Article結局、がんというやつは… ④
1993年9月6日午後3時、日本テレビ本社内2階のホールで緊急記者会見を開いたフリーアナウンサーの逸見政孝は、テレビカメラを前に緊張した面持ちで以下のように述べた。「私が今、侵されている病気の名前…、病名はがんです。このままこれを放置すれば…、年単位ではなくて、月単位でがん細胞は蝕んでいくであろうと、いうふうにおっしゃいました…」。上記の言葉は要旨であり、記者会見の臨んだ逸見の第一声は以下のように始...
View Article正直、医師はがんに対し… ①
情報社会と言われる現代だが、情報の洪水のなかで必要な情報が埋もれてしまい、課題を正しく理解したり、意思決定したりすることが困難になる状態を、「情報のオーバーロード(information...
View Article聡太、勇気に屈す!
社会には話題にすれば様々なことがある。社会に話題は必要なのか?ならば誰が必要とするのか?話題の張本人が話題にされて喜ぶならそれもよかろう。でなければ、メディアやマスコミが勝手に話題にして、何かにあやかろうとしているのは、腐肉にあやかるハイエナのようである。藤井聡太四段が将棋が強いというだけで、ああまで話題にしていいものか?将棋を知らぬ人の話題にしていいものか?まるで国民的話題としての騒ぎようである。...
View Article正直、医師はがんに対し… ②
「逸見さんが末期であったにもかかわらず、羽生先生が手術をしてしまった理由は、正直私にもわかりません。私なら、おそらくやらない手術ではある。『なんとかなる』という思いがあったのかもしれません」と、これは執刀医の羽生富士夫批判ともとれる言い方だ。当時羽生はゴッドハンドと言われていた。その羽生を批判することは誰もできなかったろう。林にすれば、ゴッドハンドとて過ちを犯すと今ならいえる。羽生は後に胆管がんとな...
View Article正直、医師はがんに対し… ③
国立がん研究センターによると、都道府県別のがん死亡率(人口10万人あたり何人ががんで死亡したか)で最も高かったのは青森県で、2004年から12年連続でのワースト記録を更新中だ。一方、1995年から20年連続で最もがん死亡率が低かったのは長野県である。青森県で長きに渡ってがん死亡者が多い原因のひとつとして、同県の喫煙率が高いことが挙げられている。厚労省2013年国民生活基礎調査によれば、青森県の喫煙率...
View Article正直、医師はがんに対し… ④
前立腺がんで浮かぶは映画監督の深作欣二と将棋連盟会長の米長邦雄。このお二人は自他ともに認める性豪の称号がある。深作が前立腺がんを診断されたのは1998年だから68歳であった。荻野目慶子は公然の愛人であり、不倫関係にあった彼女との性生活に支障がでると、抗がん剤やホルモン療法を拒否、放射線治療に専念したが、脊椎転移で2003年1月12日死去。前立腺がんのなかで、もっとも根治が期待できる治療法が、「前立腺...
View Article正直、医師はがんに対し… ⑤
「死ぬのは怖くない。でも、苦しむのは嫌だ」。これがゴッドハンドと言われた外科医ががんに侵された際の本心である。医者はがんと闘うが、それは他人のがんであって、腕利きの医師であれ自身の手術はできない。医師が患者のがんと闘う目的は、いかに延命させるかであろう。治癒の見込みがないとならば、一日でも長く生きていたい患者の心情である。であるなら、医師は患者の要望に応えるために、あらゆる手立てを尽くして延命を図る...
View Article正直、医師はがんに対し… ⑥
がん告知のメリット、デメリットはいろいろあるが、かつては患者のみ非告知で、家族には告知されたが、その最大の理由は告知された患者が不安にや絶望感に襲われ、自殺の恐れすらある、というのががんを知らせないとする最大の論拠であった。2人に1人が何らかのがんにかかる時代にあって、いつまでもそんなことでは患者に疑心暗鬼を抱かせることになる。がんになるのが稀な時代なら、それでもよかったかもしれぬが、それとは別の告...
View Articleがんを生きる…
がん「告知」と言っても、早期がんと末期がんとでは、告知する医師の気持ちがちがうように、告知を受けた患者のナーバス度も違うだろう。昨今の早期がんの治癒率は目に見はるものがある。告知の是非が議論された十数年前、末期がん患者を収容するホスピスでさえ、入居者の半数以上が自分の病名を知らない患者が多く、医師も看護師も家族も芝居を強いられた。一般的にがんは治療後5年以内に再発しなければ治癒したとみなされる。これ...
View Articleがんに死す…
死を選べるなら何で死にたい?こんなことを60過ぎたオッサン(いや、じいさんか)が、まともに答えるわけもないが、若いころはこんなくだらない会話をしたものだ。選べるハズもない死だからするだけ無意味だが、若いさというのは無駄も含めて有り余る時間に恵まれている。当時は、「がん」がもっとも悲惨といわれていたし、がんで死にたいというのはなかった。「ぽっくり心臓麻痺がいい」が圧倒的だった。理由は、「痛いのは嫌だか...
View Articleがんとともに…
がんというやつがシャーレ―にあれば簡単に殺すことは可能だが、がんの治療がこれほど難しいのは、がんが人間の体内にあり、正常な細胞を殺すことなくがん細胞を殺さなければならないからだ。がん細胞というと、とんでもない悪玉のイメージがあるが、実はがん細胞というのは普通の正常細胞と基本的には変わらない。大きく違うのは増殖のスピードである。過去半世紀にわたってがんの研究者は、この増殖こそががんの本性と見据え、増殖...
View Articleがんの未来に… ①
こんにちの日本は誰もが知る高齢化社会であるが、一般に高齢化といっても三段階に分かれていることを知る人は少なくない。高齢化社会には、「高齢化社会」、「高齢社会」、「超高齢社会」に分類されており、その3つの分類をどのように行うかについていえば、これは全人口を通して見た高齢者の割合を示す、「高齢化率」という指標によって決められている。ここでいう高齢者とは満65歳以上の人をいい、実際にその指標を元に日本のデ...
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