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Channel: 死ぬまで生きよう!
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がんとともに…

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がんというやつがシャーレ―にあれば簡単に殺すことは可能だが、がんの治療がこれほど難しいのは、がんが人間の体内にあり、正常な細胞を殺すことなくがん細胞を殺さなければならないからだ。がん細胞というと、とんでもない悪玉のイメージがあるが、実はがん細胞というのは普通の正常細胞と基本的には変わらない。大きく違うのは増殖のスピードである。

過去半世紀にわたってがんの研究者は、この増殖こそががんの本性と見据え、増殖に狙いをつけて抗がん剤を作ってきた。ところが、増殖する細胞を殺せど、殺せども、がんは治らなかった。抗がん剤でがんは根治しないのは間違いないが、それでも抗がん剤を使うのは、増殖を止められるからである。しかし、毒性の強い抗がん剤が激烈な副作用を伴うことに変わりはない。

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正常細胞を殺さずにがん細胞だけを殺す方法として、放射線治療や重粒子線治療があるが、いまだにがん治療で最も効果的なのは外科手術であるのは動かない。がんの部位を物理的に切除するのは理に適っているが、それでも取り切れないがんは多い。悪性脳腫瘍などは周囲の正常細胞に沁み込むようにがん細胞は散らばっており、手術で取り切っても間違いなく再発する。

がんには普通のがん細胞とがん幹細胞があり、普通のがん細胞を動物に移植してもがん化しないが、がん幹細胞を移植するとがんができる。がん幹細胞が親玉とすればがんは子供であって、親玉と子供はまったく性質が違うものである。抗がん剤はがん細胞には効くが、がん幹細胞にはまったく効かない。理由は抗がん剤は増殖する細胞を殺すよう設計されている。

増殖中のがん細胞には効くが、冬眠中(静止期)のがん幹細胞は全く効かない。であるなら、静止期のがん幹細胞をむりやり起こして殺すというのが、がん幹細胞を殺す新しいアイデアであるが、どんながんにも有効かなど確かめられていない。研究の成果として少しずつがんを追い詰めてはいるが、静止期にあるがん幹細胞を無理やり起こすのは危険という説もあったりする。

動物実験段階で効果は見えても、人間に用いる危険性は実証されていないし、確認もされていない。現時点ではがんは予防的意味合いが強く、その成果で減少しつつあるのは間違いない。肺がんの大きな原因とされる喫煙が減り、胃がんの主原因であるピロリ菌や、肝臓がんの原因であるB型やC型肝炎ウィルス、子宮頸がんの原因であるパピローマウィルスの対策が講じられている。

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今後益々がんは大きく減少するであろうことは予測される。我々はつい、「がん研究は進むこともなく、停滞しているように感じる」が、研究の世界というのは5年、10年の短期間でみれば目立った進歩はないが、50年、100年単位で見れば大きく進歩している。50年前のがん研究と比較しても格段に進歩していることになり、少なからず恩恵を受けているのだ。

小池都知事が豊洲市場移転問題の記者会見で庁内検証報告を発表した。政策決定過程の責任者は特定できず、組織内の連携不足が原因と指摘。「ガバナンス(統治)、責任感が欠如していた」と批判した。「それぞれの段階で流れの中、空気の中で進んでいった」と説明、山本七平の『空気の研究』を引き合いにだし、「空気が動かす都庁」と間接的ではあるが断罪した。

日本の思想史に多くの功績を残した在野の思索家山本七平の『日本人とユダヤ人』、『空気の研究』はあまりに有名、死後25年になるが未だに売れ続けている稀有な本である。七平は1991年12月10日、すい臓がんにて69歳で没した。彼は不幸なことに入院先のK病院の担当医から十分な痛み止め治療がなされず、憤慨して救急車で国立がんセンターに転院する。

その様子を絶筆となる闘病記『病床つれづれ草』のなかで、「人間というものは、他人の「痛み」にいかに無頓着であるかを、改めて思い知らされた」と記している。1990年11月7日、16時間にも及ぶ手術を経て翌91年2月24日退院となる。以後は会員制の在宅ケアのサービスを受けられる、「ライフケアシステム」に入会、創始者でもある佐藤智医師の往診を受ける。

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9月24日、国立がんセンターの定期健診でがんの再発を告げられ、妻のれい子に入院治療を奨められるも頑なに拒否、「自宅で佐藤先生に診ていただく」と、最期まで自宅で過ごす決意をする。「自分の最期は、自分で決める」の好例だが、自分の最期の選択を他人に託す人もいるであろう。正解はないし、個々の選択の問題だから、自分も延命治療はせず緩和ケアを選択する。

今がどんなに健康であれ、死の準備というのは健康な時にこそすべきものである。歩けるときに歩く。食べられるときに食べる。買いたいものは買う。趣味も存分に楽しむ。言いたいことは言う。書きたいことは書く。行きたいところは行けばいいが、特にない。今の境遇は1日24時間が自由に供与されているので、自由人志向の自分には何のストレスもない。

これら一切が死の準備であるが、それでも死ぬのが悔やまれるなら、贅沢というものだ。人間はどうあがいても永遠の命はないわけだから、痛くない死さえ選べたら何の不足もない。できることなら、脳卒中や心筋梗塞でバッタリだけは願い下げだが、あくまで希望である。近年の芸能人の死から受けるまでもなく、かんと診断される人の割合は増加しているようだ。 

国立がん研究センターがん対策情報センターの2013年データによると、生涯でがんと診断される確率は男性で62%、女性で46%である。これが、「日本人の2人に1人がガンになる」という根拠のようだ。がんと診断される人が増えているのには、診断技術の向上も関係しているとはいえ、「半分の確率でがんになる」といわれるのはもはや誰もが知る常識に思う。

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ただし、実際にがんになるとしても、それが自分自身にどれほど差し迫ったものか、数字に惑わされることなく、年齢によって大きく異なることを考えてみるべきだろう。上記国立がん研究センターのデータを基に、たとえば30歳男性なら、10年後の40歳までにがんと診断される確率は0.5%となり、この確率は20年後の50歳で2%、30年後の60歳でも7%にとどまる。

あくまでも統計的にみれば、60歳までの現役世代のうちにがんになる確率は10人に1人以下に過ぎない。では、「2人に1人がガンになる」のはいったいいつ?現在30歳の人なら、男性は50年後の80歳で42%、女性は50年後の80歳から天寿を全うするまでの間の46%となる。が、日本人の平均寿命は男性80歳、女性86歳で、死亡の確率が半分になる頃とほぼ一致する。

がんは身近な病気とはいえど、「2人に1人」の確率で発生するのは、ほかの要因も含めて死亡のリスクが高まる世代になってから。したがって、「2人に1人はガンになる」という通説には誤解があるということになる。さらには人によってがんになりやすい体質かどうかの問題もある。一部のがんに遺伝的要素はあるが、がんが遺伝疾患でないことは分かっている。

それでも用心深いアンジェリーナ・ジョリーは、発病もしていないのに乳がん予防のために乳房の切除手術を受けた。これはアンジェリーナの母が、乳がんで10年もの闘病生活の末に56歳で他界、さらに母方の祖母も卵巣がんのため、40代の若さで亡くなったことによる。アンジェリーナは2013年に両乳房、2015年には両側の卵巣・卵管を切除する手術を受けている。

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ほとんどのがんは生活習慣によって引き起こされ、同じ遺伝子を持っていても、がんになるかならないかはその人の生活次第である。がんのでき始めは進行が遅く、不摂生の影響が出るのは数十年後。がんの患者数は60歳以降に増加し始め、70歳以降に急増するが、突然がんになったわけではなく、体に悪いことを積み重ねた結果、高齢になってがんを発症している。

健康に神経質になる必要はないが、若いうちから健康に気を配っておけば、将来がんになる可能性を下げられることになる。「転ばぬ先の杖」ということだが、両乳房の切除、おまけに卵巣・卵管も…、ここまで踏み切るとはよほどの覚悟と想像する。小林麻央さんが乳房全摘手術を受けなかったのは本人や海老蔵であり、医師は摘出を勧めたというが、全ては終わったこと。

がんは優れた治療法が確立していない怖い病気であるが、それゆえにがんと共存する時代にあることも事実である。反面、がん患者の半数は治癒しているのも現実である。外科手術ががん医療の担い手で、外科手術で治らなければもうダメだ、という冬の時代が長く続いたが、最近では、放射線、化学療法が格段に進歩し、がんが多少進行してもコントロール可能となっている。

樹木希林さん(73歳)は自ら、「全身がんだらけ」を公言するも、昨年2月、「クローズアップ現代」に出演した際、キャスターの国谷裕子氏に、「全身にがんが転移しているとはまったく思えないが?」と問われると、「来週にはまた治療に入るんですけれども (中略)、私は死ぬ死ぬ詐欺なんて笑っているんです」。と自嘲気味な微笑を浮かべながら答えていた。



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