「忍ぶ川」の志乃
中三の卒業記念の寄せ書き帳に、全学年トップ成績(であっただろう)の才媛Kが、自分の差し出すノートにこう書いた。「想い出は美しいもの切ないもの、一人寂かに忍ぶもの」。忍ぶは偲ぶではなかった。当時はまだ、「偲ぶ」という漢字はあまり見なかったが、さすがにKは書くことが違うなと思った。何度も読んだが、中3当時は的確に意味を理解していたと言い難い。諺としても見たこともない言葉女であり、女性しさも感じられた。「...
View Article三人の教師の想い出 ①
学童期というのはいつ頃までをいうのか?「童」の語句から考えてみた。「童」は「わらべ」、子どものことを言う。印象深いのはシューベルト作曲『野ばら』であり、日本では、♪ 童は見たり 野中の薔薇と歌われるが、ゲーテによる原曲の訳詞は、♪ 少年が見つけた小さな野ばら とても若々しく美しい。童が子どもなら、子どもはいつまで子どもなのか?...
View Article『彼岸花』に見る父娘の争い
『彼岸花』は1958年製作・公開された小津の初のカラー作品である。自分がこの映画を気に入る理由は、以下の台詞のやり取りに見られる、娘の結婚相手を気にいらないと反対する父親に対し、真っ向立ち向かう娘の意志の強さを見るからだ。娘の突然降ってわいた結婚話に怒る父が、「許さん」と承服できない旨娘に告げるが、古い観念を娘は打破しようと抗う。大手企業の常務である平山渉(佐分利信)には、適齢期の長女節子(有馬稲子...
View Article彼岸花
やはりというか、映画『彼岸花』の記事を書いていた。2008年2月3日だから、9年と10か月前だからアバウト10年前となる。30年前、50年前でも自ら体験したことなら克明にとまでいわずともそれなりに覚えているが、ブログの記事執筆は体験と言わず、「10年ひと昔」に書いた記事は覚えていない。昨日の記事と比べながら読んでみると、いろいろ感じることもあった。...
View Article再び、映画『彼岸花』 ①
猿は人間が育てても猿にしかならないが、もし、人間を猿が育てたらおそらく人間としての大部分の能力は開花することはないだろう。学びを必要とするのは人間に限ったことではないが、人間は生涯にわたって学んでいける動物である。子どものときは遊びを通して多くを学ぶ人間を、遊びを遮断してひたすら物を記憶させる訓練ばかりする親を憐れと思っている。が、憐れと思わない親たちはそれで満足し、自分のような考えの人間を憐れと思...
View Article再び、映画『彼岸花』 ②
彼岸花』の主人は誰であるとか、中心人物が誰とか、そんなことよりもこの映画は何を創りだしているのかを考える方が面白い。物語の内容や監督の製作意図は映画を観れば誰にも分かる。天才監督になるさっぱり意図の見えない映画もあるが、小津はそういうタイプではない。ありきたりの話をありきたりに見せ、カメラワークやカット手法などで観客を感動させる。作品のほとんどが家族を題材とし、そのなかに日本的在り方としての人情や人...
View Articleオシドリ夫婦
誰が名づけたか「オシドリ夫婦」。雄雌が番(つがい)となって生涯離れないことから、夫婦仲の睦まじいことことの例えとして使われている。ところが、実際のオシドリはそんなではない。ラブラブカップルのオスは、メスに恵まれないもてないオスたちから自分の妻を取られないようにするために、いつも寄り添って見張っているが、ここまではオシドリ夫婦である。ところが、オシドリのオスはメスが卵を産むと、抱卵や子育てをまったく手...
View Article関白亭主が妻を寝取られた ①
◎号泣会見は亭主関白すぎる太川が怖くてと思った。太川の笑顔の陰に物凄い怒りが見えて逆に奥さんの今後が心配だ。◎なんか奥さんを女として見てない感じがそもそも浮気に走った理由な気がした。 ◎男上げたか? 逆に器の大きい旦那像を装っているのが見え見え。奥さん、息苦しくて、安らぎの場を求めたような気がする。 ◎太川は亭主関白でDV男でしょ。だから奥さんの心が離れるんじゃないの?...
View Article関白亭主が妻を寝取られた ②
「友人に裏切られた」という言葉は、友人であることが錯覚だと思えば済む。真の友人とは自分の利得のために相手を裏切ることはない。太川に話を戻すが、彼は「妻を信じる。その理由は妻だから」といった。一方の妻はといえば、不倫は否定したが、開き直ることをせず、ひたすら泣いて見せ、「こんな妻で申し訳ない」と殊勝な言葉で自らの非をアピールした。「太川さんなしでは生きていけない」とまで言われた太川は、やふにゃふにゃ状...
View Article結論!妻を寝取られ関白亭主?
それ以降、嘘をつかぬ女が自分にとっての良い女の基準となる。あきらかな女の嘘は問い詰めない。問い詰めるより嘘だと確信する洞察力の方が大事で、嘘つき女と分かった時点で見切るため。もしそれが身近な妻だったらどうする?言わせてもらうなら、自分はそういう女をハナから妻になどしないし、「信頼されたいなら嘘をつくな」を早期の段階から言い含める。言い換えるなら、これを教育というのだろう。「自分に害を及ぼすことはする...
View Article赤穂義士の武士道 ①
師が走り回るほど忙しい時節というが正確な意味ではないようだ。11月25日は、三島由紀夫切腹の日、12月14日は浅野長矩切腹の日だから一週間遅れの「忠臣蔵」だ。命日は忌日ともいうが、人が死んだ日を命日としたのは、『灌頂経』という仏法における法律や慣習を記述した書物の中にある、「命過日(めいかにち)」から取られている。「過」は過ぎるということ。一期の寿命が過ぎ去った日という意味からこれを略して、「命日」...
View Article赤穂義士の武士道 ②
宗家を広島藩主に、分家を赤穂藩主に持つ浅野氏家系は、清和源氏頼光流土岐氏の庶流で、承久の乱後に土岐郡浅野の浅野館に蟄居すると共に浅野氏を名乗る。当主浅野長勝は尾張織田氏に弓衆として仕えた。天正年間に安井城(現・愛知県名古屋市北区)を築城後、後に浅野城(同県一宮市)に移る。その後、織田信長の命により羽柴秀吉に属す。養女ねねは秀吉の正室となる。広島藩浅野家の支藩にあたる播州赤穂城主浅野長矩は、5万石なが...
View Article赤穂義士の武士道 ③
沈む夕陽のなかに赤く染まりながらも、「平凡に生きたい」。「平凡な人生が欲しい」と涙する三島であったなら、彼こそは平凡な人生を送る資格者になり得ただろう。自己の存在の特殊性という悲劇に涙することなく、ただ当たり前のように平凡な生活を始めるものは、抑圧に加担していることになる。三島が唯一、「真」と見つめるものが「死」であったかもしれない。自身の言動について、それが愚直なまでに真実であることを、人はどのよ...
View Article赤穂義士の武士道 ④
南部藩士を父に持つ新渡戸稲造は、まぎれもない日本人だが、英語で『武士道』を著した。日本人が異国語で武士道を論じたということは、その事だけでも異国人の目で武士道を見たことになる。英語によって武士道を可能な限り典型的な、能う限り日本的な美徳として描き出そうとする新渡戸の感性および知性の裏付けとなったのは、典型的な西欧思想(キリスト教)だからである。...
View Article赤穂義士の武士道 ⑤
先のプリンクリンが感動したという場面というのは、日本の武士が生命に変えてまで守り抜こうとした、「名誉」の美しさにあった。大正元年(1912年)9月13日、明治天皇の御大葬の日、陸軍大将乃木希典は天皇に殉じて自刃を遂げた。殉死は300年前の寛永三年(1626年)に禁止されていた。赤穂浪士の武士道は、『葉隠』のいう「死ぬこととみつけたり」とは異質であった。赤穂浪士たちは結局死にはしたが、それが最後に残さ...
View Article末は乞食かルンペンか
人間がその成長過程で自己と格闘するものだが、なぜ格闘するのかを考えてみる。誰もが思うのは朝起きがけに、「あ~、仕事に行きたくない」という思い。「行きたくない」の程度の差こそあれ、「温かいベッドから離れたくない、このまま続けて眠れたらどれだけ幸せであろうか」などは当たり前に思う事で、一日の始まりはそうした自己との闘いから始まっていく。ごく小さな闘いであるが、「仕事に行きたくない」の原因が、それらとは違...
View Article覆水を盆に返すには…①
「覆水盆に返らず」の出典は後秦の時代に成立した『拾遺記』とされ、以下の要旨となっている。太公望が周に仕官する前、ある女と結婚したが太公望は仕事もせずに本ばかり読んでいたので離縁された。太公望が周から斉に封ぜられ顕位に上ると、女は太公望に復縁を申し出た。太公望は水の入った盆を持ってきて、水を床にこぼし、「この水を盆の上に戻してみよ。」と言った。女はやってみたが当然できなかった。太公望はそれを見て、「一...
View Article覆水を盆に返すには…②
藤吉久美子の不倫疑惑報道で感じたのは、何のために太川陽介が会見したのかである。それだけ見ても太川のバカさ加減が判ろう。おまけにあの笑顔である。意図は分からぬでもないが、亭主関白夫が妻に浮気をされたことの体裁の悪さを、どう誤魔化すかという会見だったに過ぎない。「笑って誤魔化す」という言葉があるが、あれはまさにその場面であった。だから会見を開いたのだろうが、最近の亭主関白というのはなんともチャラいものよ...
View Article覆水を盆に返すには…③
映画『うなぎ』は夫の夜釣りに乗じ、妻が夫を自宅に引き入れていた。夫はそれを確かめるべく自宅に戻り、妻の浮気現場を目撃する。全裸で夫に対峙する妻は無言のままに夫に刺されてしまう。浮気現場に突然夫の出現という不測の事態に言葉を失う妻がリアルであった。そういえば元モー娘矢口真理も、夫留守中に自宅で浮気の最中に夫に侵入されている。言い訳や問答無用の現場直撃である。夫の中村昌也は矢口を刺し殺すこともなく、1千...
View Article45年を経た再会。その後… ①
沢山の出会いがあった。出会いの数だけ別れもあった。思春期の入り口を15歳とし、その後に異性との別れは結構あった。男と女が恋をすれば、恋から学ぶのは異性の正体だろう。正体?いや、実態というべきか。異性を知るためにはまず己を知ることが先決だが、そうもいかないのが若さというものだ。自分を知らずに、「異性が分からない」と、これが若さである。「異性が理解できない」などという。それ以前に自分の性が持つ性質をわか...
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