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回想と未来についての考察

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長幼とは、年長者と年少者。また、大人と子どもをいうが、親と子にも当てはまる。「長幼の序」の「序」とはいうまでもない、「秩序」のことをいう。年長であることをいいことに、威張り腐っていいわけはない。親は子の健やかな成長の妨げになってはならない。そのように考えると、教師は生徒の、師は弟子の、上司は部下にどうあるべきか正されるハズ。

「正される」としたのは、現実には長が幼を制するという現実がある。儒教思想の問題点は、幼は長を敬えというが、長が幼を慈しむことをしない。子どもの争いに際して親が下を叱るのは間違いだと思っていた。勿論、状況にもよるが、友人などから下の立場にある者の不満をたくさん聞いたからである。「お姉(兄)ちゃんに反抗してはいけません」などと…

反対に、「お姉(兄)ちゃんなんだから、妹(弟)を可愛がらなきゃだめでしょ!」も、同様に上の者は納得できない。上だから、下だから、を基準にした裁定は、家庭の中に儒家思想を持ち込んでいるのだが、良い(便利)な面もあるわけだ。「親に逆らうなど許されない」というのは、まさに最たるものである。こういう言い方をされると納得できないのが人間だ。

兄(姉)だから、親だから文句をいうな、従うべきだ、反抗はとんでもない、こんな言い方を受容できるのは警察や軍隊や消防などの階級社会所属者である。そういう社会は、規律や命令を最大尊重しなければ、個々がバラバラで組織行動ができないからである。家庭は組織ではないが、企業は組織である。したがって、「イズム」を機能させて成功した企業は多い。

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新しく着任した上司が気に食わない、前の上司が良かったなどは、中小規模の会社ではありがちだが、大企業においてそんな問題は大事の小事であり、存在することが問題とされる。つまり、組織は組織力で稼働し、人間関係だどうのこうのであってはならない。新規入社の歓迎会・送別会、Vデイの義理チョコ、はたまた慰安旅行などを禁止の大企業に習う時代になった。

人間関係重視の中小企業ではそういうものが必要なのはわからなくもない。家庭も人間関係で成り立っている。封建時代や家父長制はいにしえのこと。自分は家庭を持つときに、何より家庭内の人間関係を重視することを目指した。したがって、我が家では「お姉ちゃん」、「お兄ちゃん」という言葉は生まれなかった。下も上も名前で呼び合う。

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苗字ではないのは当たり前で妹が姉を、「佐々木さん!」と呼んでどうする?それでも上の権威は必然的に生まれた。自分は、「権威というお荷物」という表題で、中学の学級新聞に投稿したことがある。確かに権威は必然的に生まれるものだが、権威ある者が誤った権力を持つことが問題。権威とは?権力とは?その辺りを学習したのがなだいなだ著『権威と権力』である。

ナダルはテニスプレーヤーだが、なだ氏は精神科医である。同書は1974年3月28日初版とあるが、以後も版を重ねているのだろうか?これは幼子を持つ親、これから親になろうとする人には、そこいらの育児書より(読んだわけではないが)はるかに良書であろう。著者を訪ねてきたという高校生でクラス委員のAくんと筆者の対話形式で問題を浮き彫りにしていく。

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    はじめに
    第一章:失墜した権威
    第二章:権威と権力
    第三章:権威とは何か、権力とは何か
    第四章:いうことを聞く心理
    第五章:判断と権威
    第六章:日常の中で
    第七章:説得の方法
    第八章:権威と反権威
    第九章:まとまりなき社会
    あとがき


なだ氏は、Aくんがクラス委員として打ち明けた悩みから出発し、やりとりの最後に以下の言葉をAくんに投げかけた。「ま、君も、自分がクラス委員としてクラスの調和をもたらすことができなくとも、絶望するんじゃないね。自分の理想を押し付けて、無理にまとまりを作り上げるよりも、失敗に終わっても、その方が人間にふさわしいことなのだから」。

「その方が人間にふさわしいこと」。この意味は何であろうか?自分はいろいろ考えたが、時々目を通す著書の最後の言葉は、年齢ごとに理解が変わっている。基本的に変わらないのは、「失敗は絶望ではない」ということ。したがって、失敗は何かをやったことの「証」であり、結果いかんにかかわらず、何かを「やる」という行為に勝るものはないということかと。

自分がそのように生きてきたのは、この著書の恩恵だけではないが、何かを行為する時には当たり前に結果は起きてないわけだから、結果を憂える、結果を怖れるというのは、「おかしなこと」から始まって、昨今では、「道理に合わないこと」となっている。確かに未知のものを怖れるのが人間であるけれども、怖れるあまりに行為をしないというのはバカげている。

「結果よりも、過程の中に多くのエキスが詰まっている」。失恋も、別離も哀しいが、そのプロセスに勝るものはない。こんなことをいう人は多い。「ペットを飼いたいけど、死んだときの哀しさを考えると、とても飼えない」。言ってる意味は分かるし、この言葉に反論したことはなかった。少年時代に広場で子犬三匹を飼っていた。名を、ゴロ、コロ、チロとつけた。

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ある日学校から帰ると小屋に姿がない。大捜ししたが近所のおじさんが、「犬捕りが連れて行った」と教えてくれたが、母が保健所に電話したと分かった。自分の食事や、家の食べ物を犬にやるのを気に食わぬ母。そんな母の悪口をありったけ家の壁に書いた。憎き保健所の悪口も書きなぐった。子どもにはそれくらいしかやり場がない。本当は母を殺し、保健所に火をつけたかった。


自分が最も大切にしているものを奪われ、命までも葬る大人にやり場のない怒り、それに加担した母はクソババでしかない。どうしてあんたは自分をそんなに苦しめるんだ?子どもの苦しみなんか、まるで分からない鬼であった。それはともかくとしてもペットを飼えない人の哀しみも気持ちもよくわかる。が、生あるものに対する気構えは生あるものの心がけであろう。

たとえ最愛の動物の死が寿命であったとしても、大切なものを奪われるのは事実である。当たり前だが、生きるということは死ぬことでもある。だれにでも等しく訪れる、「死」という現実。人は死ぬために生きているともいえるだろう。この事実に向き合い、積極的に受け入れることで、よき、「生」につなげる。「死への準備教育(デス・エデュケーション)」の考え方もある。

死という現実に目を背けることなく、死を受け入れるために人間は絶対にネガティブであってはならない。自分の体験で言えば、自分が死のうと考えたとき、相手を抹殺しようと考えたとき、それが単に考えであったことは実行しなかったことからしてその通り。がしかし、それ以降の自分が、いっそう、「生」に執着するようになった。つまり、「死」を見つめたからだろう。

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そのことで、「命の大切さ」以上に「時間の大切さ」を知った。人間にとって限られた時間、つまり、「生きる時間」は限られているという現実は、普段はあまり意識されない。意識されないことを考える機会に携わったということ。ギリシア語に、「時間」を意味する言葉が二つある。「クロノス」時間、「カイロス」時間という言葉だが、目に耳にした者はいよう。

古代ギリシャ人は、過去から未来へと一定速度・一定方向で進む時間をクロノスとした。これは現代人の時間感覚と同じで、何もせずじっとしていても時は過ぎ行く。もうひとつのカイロス時間は、ギリシャ神話にでてくる機会(チャンス)を意味する男性神カイロスに由来する。彼は前髪は長いが、後頭部は禿げた美少年だった。美少年がハゲという疑問は沸くがそれはさておき。

チャンスの神クロノスは前髪しかないないので、素早く掴まなければ掴み損ねるということである。一度きりで二度と訪れない決定的な瞬間、質的な時間、「カイロス」である。一度たりとも、「死」を意識することにより、今まで漠然と過ごしてていた時間を、かけがえのない一度限りの機会としてとらえ直せるなら、一瞬一瞬を大切にして生きることができる。

年端もいかない少年や少女の自殺をはじめ、年間約3万人もの人が自ら命を絶つという今の日本にこそ、「生」と「死」を考える教育が重要だ。日本の教育水準の高さは世界に誇れるが、「死への準備教育」の面では不十分と言えるが、これは宗教的なバックボーンによるものかも知れない。さらには、「生きる」といえども、「自分らしく生きる」のも個性である。

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若者とそうでない者の差は年齢であるが、他にもある。人生の前半期は、誰も彼も、「すべきこと」に追い立てられるように、それだけすべきことが多すぎる。恋愛、結婚、繁殖、蓄財、遊興、仕事しかり…。ところが人生も後半になれば、これらのことには決着がつき、したがって、生き方にも自由度が増してくる。これを、「余裕」といっていいだろう。

「ゆとり」ともいえる。忙しい子どもたちに、「ゆとり教育」を強いたこともあったが、高齢者の、「ゆとり」は自発的なものである。これらは、「もう一つの人生」と名付け、置き換えていいものだろう。今までとは別の、ちがった、余裕のある、ゆとりの人生をどのように横臥するかは人それぞれだ。それを前向きに楽しむ人こそ、「死への準備学習」といえなくはないか。


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