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他人の不幸は見えにくい ②

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事件の被害者、被害遺族、不慮の事故や、震災などで生活基盤を失った人は、不幸に見える。おそらく不幸なのかも知れぬが、一時的な不幸や幸福ならいくらでもある。誰にでもある。一年前は不幸と言いながら、今は幸福という人もいれば、真逆の人もいる。不幸な人、幸福な人は永続的な人をいうのか?でなければ幸福だ、不幸だのという定義に当てはまらないのか?

違うな。違うと思う。その日、その朝、目が覚めて幸福を実感する人は、幸福な人に違いない。目が覚めて、たちまち今日の食材に困る人、働く糧を失ってる人、病でベッドから立ち上がれない人、死を宣告されて日々を過ごす人、人にはさまざまな境遇がある。その中で、幸だの不幸だのを考え、探り、見つけなければならない言われはないように思う。

ある日、ある時、ある場所で、幸福を実感したことがある。そういう人は少なくない。同様に、ある日、ある時、ある場所で、「わたし、今すごく幸せ」という言葉を耳にしたことがある。まぎれもない、他人の幸福を感じた瞬間だ。こういう言葉も耳にした。「女の幸福は男に愛されること」であると…。「男の幸福は女に愛されること」という言葉は聞かない。

その歴然とした違いは、女の受動性を現しているからだ。「男は愛し、女は愛される」と、言葉自体が女の受動性を示している。「いや、そんなのは古い、古い」という言葉も聞こえてきそうだが、女の受動性はその性器の形からしても歴然であるが、精神は逞しく、能動的になったのか?疑問符にしたのは、そういう女性もいるだろうことは半世紀も生きてれば分かる。

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♪ 女はいつもふた通りさ、男を縛る強い女と男にすがる弱虫と…と、拓郎の歌詞にあるが、縛る女が強いのはわかるが、すがる女を弱虫というのは、自分と感性が異なる。歌の歌詞には出来兼ねるが、男を縛る女は、"男をダメ"にする。男にすがる女は、"男を生かす"という風に思う。もっとも、自分の考えであるけれども、かつて男はそうであった。

そうあるべきと育てられた。母親が自分に厳しかったのは、強く、逞しくするためだったかどうか分からないが、いじけたヘタレ男にならなかったことに感謝する。話を戻すが、「愛することが幸せか、愛されることが幸せか」については一概に言えることではないが、己の考えは述べられる。「愛されることが幸せ」と女がいうなら、男は「愛することが幸せ」でいい。

自分を愛してくれる女を見つけるよりも、愛するに相応しい女を見つける方が手っ取り早い。それからしても、男は能動的である。大地にじっと根を張り、花弁の蜜を求めてくる蝶を待つのが女だと思っていた。「花が女で、男が蝶か」という歌の詞を聴いたときは納得した。時代は変わり、女が大地の根を切って動き始めた昨今である。それに追従して男の動態や価値観も変わった。

人はその世代を生きるもの。世代を超えて生きながらえる寿命が授かるなら、新たな世代に順応すべきであろう。世代格差ということは当然ながら存在し、いつの時代も若者と老人の対立はあるのが当然だが、昨今は、男女の価値観の変貌から。男と女の対立がある。武士の子は武士、百姓の子は百姓の時代に、子どもの進路をめぐる対立はおそらくなかった。

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「職業選択の自由」が憲法に謳われている。とは申せ、「士農工商」という歴然と身分制度にあっても、百姓から武士になった者もいた。身分制度というのは差別があったと思われがちだが、身分によって役割が定められていたというのが実態であった。将軍家であっても妻の身分を問わなかったことからしても、べっぴんさんなら、即お持ち帰りしたようにである。

五代将軍綱吉の母親は京都の八百屋の娘であったし、八代将軍吉宗の母親は百姓出身の風呂番だった。新撰組の近藤勇は農家の三男だが、剣の腕を見込まれて剣術家の養子となり、新撰組での働きが評価されて幕臣に取り立てられた。勝海舟の曽祖父は庶民であったが、賄賂使って海舟の父を武士にした。伊藤博文も農民の出だが、武士となり、維新後に宰相となる。

もっとも有名なのは貧農の出の秀吉だが、「士農工商」の身分制度の前でもあり、信長という先見の明によって取り立てれれた。さて、愛が幸福の要件というが、愛は不幸にも作用する。これ以上の幸福はないという陶酔感を味わせてくれる反面、ときに人をずらずたに切り苛む。とは言えども、人に愛するという情動がなかったなら、人生は索漠たるものになる。

激しい恋に生きた歴史上の人物として、孝謙女帝を思い浮かべる。孝謙といえば道鏡である。道鏡は孝謙から寵愛を受けた怪僧で、道鏡が寵愛を受けた理由は、以下の川柳が示している。「道鏡は座ると膝が三つでき」。道鏡生誕の地、愛媛県弓削町土産の、「道鏡饅頭」を戴いたことがある。あまりのチン品ゆえにか、今は売られていない。弓削町の町名も消え、現在は上島町。

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激しい恋と性に生きた女としては西鶴の、『好色五人女』のおさんも特筆ものだ。小説であるが、実話がもとになっている。京都の大経師屋の女房おさんは、評判の美人で、勝ち気で働きものだったが、亭主が所用で江戸に発つことになり、案じたおさんの実家から手代の茂右衛門を手伝いによこすも、おさんは茂右衛門とあらぬ仲となる。こうなった以上、おさんは度胸を決めた。

「―― この上は、身をすて、命のかぎり愛欲に身を浸し、茂右衛門と共に死ぬまで…」。茂右衛門もおさんの決心を聞き、覚悟を定めて道ならぬ恋に溺れた。二人の噂が立ちはじめ、いられなくなった二人は琵琶湖に身投げに行く。ところが死ぬ寸前に茂右衛門は、「死ぬのは惜しい。書き置きを残して死んだと見せかけどこかに逃げよう」さて、おさんはどう答えたか?

「わたしもそのつもりだったの。ちゃんと五百両もってきた」。なんとも振るった態度であり、言葉であろう。二人は丹波の山奥に隠れるが、遂にみつかり、道筋を引き廻されたあげくに粟田口刑場で斬首されるのだった。それにしても、不義・密通は死刑と知りながら、大金を持ち出すおさんのしたたかさ、女の逞しさである。「もうダメだ、死ぬしかない」は敗北である。

おさんの逆境の強さこそ、人間の真の逞しさである。こういう心情は、ネガティブな人間には絶対に身につかない。物事を前向きに、ひたむきに考える人間にしか与えられない。そんな気概はどうすれば身につくのだろうか?小学校にして糞親に抗ったことで自分は得た気がする。おさんにはそういうものがない。これはもう女の本能的な生命力であろうか?

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女性は本質的に強く、思春期後の自殺の男女比を見ても歴然である。先日、アジア卓球選手権で中国勢を破って優勝した卓球の平野美宇がこんな風に言った。「これまで好感度を意識しすぎていたが、もうそれは止めようと思った。嫌われてもいいと思った」この意識が彼女を強くした。将棋の米長も弟子の林葉の堕落に、「女は人から見られるを意識したらダメ」といったように…

本質的に強いおんなが、「弱いネコ」を被っているということだ。本質的に弱い男が、理論武装をし、強く見せていると同じこと。確かに弱い女は男からみるとそそる。放っておけない気にさせられる。生態学的にいっても、メスがオスより華奢に作られているのも、オスのメスに対する保護意識を増長させるためである。だからか、背の高い女は猫背になるなど悩む。

動物生態学というのは、自然の摂理であるが、人間社会の生態学の変容はどうしたことだろうか。男に従属することが、逆に男を隷属させることになるという、弁証法はどこに行ってしまったのか?おそらく、戦争放棄の憲法が、男の子を逞しく、強く育てることを放棄させたのかも知れない。「僕は大きくなったら立派な兵隊さんになる」という時代は、それはそれで生きた。

今の親はどういう男の子を育てようとしているのか?少し前に疑問を投げかけたが、世のお母さんは適齢期の息子が妻の尻に敷かれる方が良し」とするのか?妻に聞いてみた。「とんでもない、そんな男子なんか…」であるが、世間は広い。お母さんの数も半端ではない。戦後の憲法は男女同権となった。なったけれど、憲法通りに動いていない事が多い。

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社会では男性優位の差別が蔓延り、家庭ではカアチャン優位が蔓延っている。どこが男女同権か?法律より、空気が支配するのが世の中である。憲法など、絵に描いた餅に過ぎない。社会を動かすものは何か?テレビで時代劇を観れば、働く農民が大多数で、それを武士である悪代官が仕切っている。「百姓は生かさず、殺さず」の、最低限の生活を強いられた。

我慢ならぬ時は、「一揆」を起こして抗った。ところが、あげく首謀者は磔られ、打ち首、獄門。維新から戦前にあっても、戦争を反対するだけで「国賊」、「非国民」と特高に捕らえられ収監された。「天皇制打倒」と言えば大逆罪で死刑。そうした歴史から、今の日本で、ささやかな幸せを心に描き、口に、言葉に出せるようになったのは、ほんの一世代前である。

我々が公然と幸せを求めることが可能となるまでに、日本中、世界中合わせて何億、何十億という先人の苦労の賜物だ。歴史は時に回り道をし、悲惨な出来事をかいくぐり、一歩一歩前進してきた。ところが、政治や経済を見渡すと様々な矛盾がある。丸刈りが憲法違反だと立ち上がる前に何年かかった。それ以外にも別の何かの力で国が動いている。それは何か?


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