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親の事は親に習え、子の事は子に習え ②

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『福翁自伝』は中2で読んだ。『幸之助自叙伝』は小6だった。おそらく夏休み感想文の課題図書だったろうか、賞をもらったのを覚えている。それもあってか、松下幸之助は自分にとって最大の尊敬する人となったのがいかにも子どもらしい。野口英世の伝記も同様、感動しない子どもはいないだろう。後に幸之助が二重価格問題で叩かれたとき、人間観に新たな視点を持つ。

偉人伝説や自叙伝などの児童図書の多くは、別の意図で書かれているが、それとは別の真正な人物像は存在する。「下半身に人格ナシ」というように、人の功績と人格は別と考えるのが大人の思考。人格がどうであれ、功績が翳ることもなければ、功績そのものが人格からもたらされることもない。子どもに事実を知らせるべきか否かは、性や同和問題でさんざん議論された。

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「偉人を貶める実話に意味はない」とする児童文学者の考えは一理ある。しかし、イソップ童話の日本版は脚色され過ぎだ。渡辺淳一の『遠き落日』という著書は、これまで秘されていた野口英世の人間的真実を描いている。渡辺が医師免許を持つ作家であるのは周知であり、彼の、『解剖学的女性論』は、異性を知るうえで大いに参考になった自身の座右(?)の書である。

特に第9章「嘘つきの女性」は男が是が非とも知るべき女性の特性である。「女性の嘘の特性は何か、そしてこれに対して男性はいかに処すべきか、相手の嘘の実態が解れば、その対策はおのずから出来ようというものである。」と前書きにある。己の精神の分裂をきたすほどに、嘘で混乱した幼少期は母親が原因であった。彼女を信頼しなくなった要因はそれに尽きる。

異性・同性に限らず嘘をつく人間を絶対に信頼しないし、ただの一度の嘘であってもそれで相手を見切った。とはいえ、「自分は嘘をつかない」というのではないが、「わたしは嘘をつかない」といって嘘をつく人間はさらに信頼をなくした。「僕が嘘をつくような人間に見えますか?」が、セールスマン最大の殺し文句であるように、嘘をつくための、「嘘はつかない」は、非道である。

ある人間を嘘つきとした場合、彼のいう、「本当」は嘘であり、彼のいう(つまり嘘つきのいう)嘘は本当である。というパラドクスを後年知った。なぜ嘘をつくのか?なぜ嘘を信じるのか?幼少の頃、「嘘はいけない」と教わると当時に、「人を信じないのはよくない」という道徳を会得させられる。「嘘はいけない」という教育は、必然的に人は、「嘘をつかない」と思い込む。

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日本の初等教育のいい加減さ、形式主義の弊害は常々感じるが、「嘘をついてはいけません」という教育より、「人は嘘をつくので注意しましょう」という本質を教えない日本人の甘さ、ひとの善さである。教育に理想は大事だが、理想ばかりでは危機管理意識がなおざりになる。「なおざり」の教育をするから、「おざなり」になるのではないかとの危惧。

子どもに的確な価値判断が難しいのはその通りだが、だからと言って大人が子どもを見くびるのは問題だ。日本人が子どもを大人扱いしないのは悪しき通俗で、そうしたものは日本家屋の、「子ども部屋に顕著」と、ある外国人の指摘があった。かつて同志社大で教鞭をとったドイツ人のクラウス・シュペネマンは、来日して日本人の子育てにショックを受けたという。

カルチャーショックを受けたシュペネマンは、日本にこのまま残ることは、自身の子どもたちの成長においてマイナスになるのではとの思いに至ったという。当時(昭和54年)、15歳、12歳、11歳の育ちざかりの父であったシュペネマンは、客観的教育を奨励した。これはドイツの諺にある、「子どもたちは神から与えられた謎である」という格言に負うところも大きい。

「子どもは私たちを父とし、母として生まれてきたに違いないが、それ以前に彼らは神から与えられた賜物であり、同時にまったく未知の存在である。(略) 彼らは両親である私たちさえも、関与できない面を持っている。そんな子どもたちを、私たちの所有物のような錯覚を持って、粘土細工のようにこね回すのは許されない。一人一人自分の人生を前にし歩みだす。」

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第一章「家庭でどう躾けるか」、第二章「学校でどう導くか」、第三章「社会でどう鍛えるか」。それぞれの項目についておよそ日本の教育書には書かれない主体性に満ちた教育論が示されている。言っておくが、彼らのいう主体性とは客観性のこと。客観性こそが主体性であって、離れた視点で子どもを眺め対処する。そういう教育を、「是」とする親には推奨図書だ。

人はなぜ騙されるか、人はなぜ嘘をつくか、これらは嘘で苦しんだ幼少時代からの設問であった。いうまでもない、子どもは純粋無垢であるが、子どが不浄になるのは成熟の常としても、歪にする親がいるのは確かである。シュペネマンの書から、親が子どもにとっていかに悪害であるかがわかる。よって親は子どもにとって、「悪害」であるとの認識に立つのが正しい。

「自分は子どもにとって最良の親」などと自己満足に浸る親は危険である。たまにそういう親もいるが、自分の浅はかさに気づかず、子どもを私物化とし、子どもを奴隷に見立てる親である。自分が小学生に上がる前だったか、低学年だったか、我が家に住み込んでいた職人が、「お母ちゃんは万三つだから」と教えてくれた。同時に、「万三つ」の意味もである。

「万三つ」とは、「万に三つしか本当のことはない」という嘘つきの言い換えである。同じ慣用句で、「せんみつ」もあり、こちらは、千に三つしか本当のことを言わないさまで、芸能人のせんだみつお(本名・中野光雄)はこれから取った。職人の言葉を聞いて心が解放された安堵感は、今でも忘れ難い。それほどに嘘の多い母親から苦しめられた幼少時代であった。

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それまでは、どうして嘘ばかりつくのかが、子どもには分からなかったが、職人の単純明快な答えが自分を納得させたのだろう。人に、「なぜ?」と苦しみ、疑問を抱くより、「そういうものだ」はこんにちの自分の生き方の哲学になっている。心理学は人の内を分析し、表す学問だが、どう分析しようと人は変わらない以上、正しい取り扱いは、「そういうもの」で納得すること。

少女時代の子どもと一緒にテレビのマジックを観ていたとき、人体が電器ノコで切断された。次女から、「どうしてあんなになるの?」と聞かれ、つい、「そういう人なんだよ」と言ってみた。次女は、「そっかー、そういう人ね」と、納得(?)したのが懐かしき思い出。分からないことは解明するに限るが、その場で解決しないことは、「そういうもの(人)」に限る。

分からない、納得できないままで頭がくしゃくしゃしている際に、「そういうもの」との言い方は一つの答えを導いている。「なんで、なんでアイツはああなんだ?」という他人に対し、「そういうやつだと思うのがいい」は、結構使った。「そういうやつ…?でも納得できない」という相手にも、「だから、納得できないほどの人なのさ」でいい。解決とは極めるよりも妥協である。

男は女が好きだ。女も男が好きなのだろうが、実感として分かるのはやはり、「男は女を必要とする」である。構造的にも精神的にもである。特に母性への憧れが強かった自分は、女の優しさ、温かさを求めた。嘘つきでヒステリー女などまっぴらご免である。ところが、花嫁の角隠しではないが、棘のある女に最初から気づく男などいるハズがない。

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いかなる男も数々の女に騙されるべく月謝を払って一人前になっていく。女を求める態度が素直で露骨である男は、女の側からみると滑稽であろうが、必死で女を求める時期の男は、女から見た己の見え透いた無様さなど気づくハズもない。母親の嘘には苦悩したが、恋人のつく嘘はまた別のものだった。嘘には許せる嘘と、許せない嘘がある。女の許せる嘘とは…

自衛上の嘘である。自身の失敗や、不利な状況に追い込まれた時、その責任や苦境から脱しようとしてつく、本能的自己防衛的な嘘であって、許すことはできるが誠実な人間であるかどうかはここで分かる。つまり、嘘で自分をごまかすか、自分の過失を認めて相手に詫びるかがハッキリ現れる。自分は、遅刻をしても言い訳を恥とする人間だから、当然にして後者の女を好む。


嘘のない誠実な相手でなければ、信頼関係は結べないからである。言い訳はその場しのぎであり、それが嘘の言い訳であるか、真実であるかは探りをいれたり、問いたださない限り分からない。がしかし、言い訳をしないですぐに謝罪するのは、詮索せずとも100%真実である。遅刻をして、「寝坊しました」が嘘ではないようにである。ある女にこういうことがあった。

たまに出入りする女にビデオ予約を頼んだ。女はそれを撮り忘れた。「ちゃんと撮れた?」と電話したとき、彼女は録画予約に気づいたようで、「ごめんなさい、忘れてました」と言った。責任感の強い自分にとって、人からの頼まれごとは手の平に書いて、夢にまででてくるものだが、そうではない人もいる。自分は腹を立てて罵倒した。それが感情というものだ。

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が、怒ったからといって、していないものはしていない。そう考えると自分の怒りはバカみたいである。それが理性と言うものだ。こういう場合、咄嗟に嘘をつける女がいる。頭がよく、それだけ自己保身に長けているから、すぐに知恵が回る。どちらが自分にとって大事な女か?その女とは20年来の友人である。「女はズルいですよ」などの言葉を真顔でいう女である。


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