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知らなかった「コメダ珈琲」

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「ゆめタウン」といえば広島が発祥の、「イズミ」が闇市からの仕上がり、昨今は地場を代表する大店舗スーパーに成長した。大型ショッピングモールとこじんまりの店舗がそれぞれの地域に密着し共存している。広島店と廿日市店は、巨大なショッピングモールを運営するが、五日市店は10分の一程度の小型店舗。その敷地内に、「千」というとんかつ屋さんがあった。

「千」は山形県平田牧場のブランド三元豚や、幻の品種と言われる金華豚を取り扱っていた。が、高料金設定もあってか、客足も途絶え店を閉めてしまった。広島の中華の名店とされた陳建一の、「四川飯店」が閉店したときも信じられなかったが、こちらも高値設定ということで客足が途絶えた。こういう名店が店仕舞するのは、いかに不景気であるかを示している。

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閉店の知らせが玄関ドアに張り出された「千」は改修工事が始まり、次はどんな店かの期待もあったが、そうそうにあがったのは、「コメダ珈琲」という看板だった。珈琲を飲まない自分は興味もなかったが、「へ~、ここにコメダ珈琲できるんだ?」と友人がいうので、「それって有名なんか?」と聞くと、「超有名だよ!」という。行くこともないと思いながら、有名な店なら流行るかなと…

カメダのあられは知っているが、自分はコメダ珈琲を知らなかった。広島市内には5店あり、うち、「ゆめタウン」に2店舗となっている。発祥地は名古屋で、愛知県内には250店もある。そんなに必要なのか?と思うが、フランチャイズ方式で店舗数を拡大し、全国に700店以上のチェーンを展開している。それくらいに日本国民に愛されているということでもある。

喫茶店には昔から行かない自分だが、喫茶店好きなタイプもいて、特に女性はランチ後には毎日のようにおしゃべりを楽しむ場であったりする。それほどに有名なコメダ珈琲をデータからを社会学調査を行ってみる。平成26年度と少し古いが、全国の喫茶店事業所数(69,977店)のうち、人口1000人当たりの事業所数で愛知県は、高知県、岐阜県に次ぐ第3位の8,428店。

また、喫茶店従業者数は全国で東京をしのぐ第1位。年間の喫茶店消費金額においては、平成25年~27年の家計調査(2人以上の世帯)によると、全国平均は5,770円。さらに県庁所在地、および政令指定都市別に見たとき、名古屋市は14,301円と全国平均から2倍以上の金額となっており、これは突出した数字である。そもそもなぜ名古屋には喫茶店が多く、消費も多いのか?

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「喫茶店王国」と称させる名古屋といわれるが、その理由については諸説あり、明確なことは分かっていない。コーヒー代だけでトーストやゆで卵がついてくるモーニングサービスや、ピーナッツなどのおつまみに代表される喫茶店が多い激戦区であるからこそ独自のサービスが生まれ、名古屋、あるいは愛知県特有の文化として認知されたのは間違いない。

それがビジネスマンの商談から、年配者や主婦の息抜きのひと時、家族の団らんまで顧客の幅広い利用法に支えられ、広大な駐車場がいっぱいになり、さらには渋滞まで起こる圧倒的な集客力など、他県人が驚く要素に事欠かさない。名古屋の喫茶店はなぜこんなにサービス満点なのか?名古屋人はなぜこんなに喫茶店が好きなのか?他県人には不思議で仕方がない。

数年前にあるテレビ番組で紹介されて驚いたのが、名古屋人の定番と言える、「小倉トースト」なる奇怪な食べ物は、あの浅田真央も好きだと言っていたし、本当か嘘か、テレビ番組では、「名古屋人のキッチンストッカーに小倉缶は欠かさない」という。もちろん、喫茶店のモーニングサービスに小倉トーストがないわけがない。名古屋には約4000件の喫茶店がある。

「コメダ珈琲」という名からして、名古屋人はさぞやコーヒーが好きな人種と思いきや、コーヒーの年間消費量を見ると愛知県は47都道府県中36位(平成21年・総務庁調べ)となっており、このデータに関する限り、コーヒー好きの名古屋人ではなく、あくまで喫茶店が好きといえる。「コメダ珈琲」が愛される理由をもっとも周知し、把握するのがコメダ自身である。

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「お値打ち好きであか抜けないのが落ち着く」と、これが名古屋人気質にマッチしたコメダ珈琲のコンセプトである。これほどに有名なコメダ珈琲であるゆえに、各地域の初出店場所で社会的ブームといえる現象が起きており、2016年8月10日に開業した「東札幌5条店」(北海道札幌市白石区)では60人以上の行列ができ、「ゆめタウン五日市」でも行列はあった。

なぜ日本人は行列好きなのか?を心理学的にいうと、人が並んでいるのだから並ばなければ損をした気になるという、世知辛い動機である。並ぶ、待つ、のが嫌いな自分には考えられないが、店舗数1位と2位のスターバックスやドトールとは違って、旧態依然の、「昭和型喫茶店」のコメダ珈琲が、なぜに店舗数を増やせるのか?社会学・経済学的考察は興味を惹いた。

「コメダ珈琲店がもっとも大事にしていることは、『コーヒーを大切にする心』です。また コメダ名物、大人気の、「シロノワール」、コメダと言えば、「シロノワール」と言うぐらい、全国的にも認知されつつある、「シロノワール」は、ひときわサクサクふんわり焼いたデニッシュパンの上に、たっぷりのソフトクリームの熱々冷々の加減はコメダの奥義とされている。

さほどコーヒー消費量の多くない名古屋人にコメダが、「もっとも大事にするのは『コーヒーを大切にする心』」というのも、「?」であるが、コメダの人気を探る以下のレポートを読むと納得できる。「愛知県半田市の『コメダ珈琲店 半田やなべ店』は来年で開業20年を迎える。人口12万人弱の半田市は知多半島の中心地であるながら、店は繁華街から離れた場所にある。

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それでも1日に約600人も来店。平日の昼前も10人ほどの人が座席が空くのを待っていた。新規店でもないのになぜこれほど人気?「当店はお客さんの居心地を重視してきました。コメダらしさでこだわることは、『スピード』、『仕込み』、『段取り』です。お客さんが来店されたら、大きな声で、『いらっしゃいませ』と言い、冷たい水と温かいおしぼりを出す。

ご注文を受けたら、温かいメニューは温かいうちに、冷たいメニューも冷たいうちにすぐ出してお客さんを待たせない。そうした接客を地道に続けてきました」と、同店を経営する有限会社ウチヤマ代表取締役・内山清氏。全国各地の、「コメダ珈琲」には読み放題の新聞や雑誌も置かれている。主要な新聞・雑誌を揃えつつ、店の立地によってその構成は変わる。

特に地域事情が出るのはスポーツ新聞で、『半田やなべ店』では、同じ中日スポーツを何と9部も置いているという。普通は一店舗に同一紙を複数置くなど余程の繁盛店だが、同一紙9紙はスゴ過ぎる。これもサービス的に当然と言えば当然であろう。内山氏は言う。「中高年の常連客も多く、モーニングを食べながら新聞や雑誌を読むのを楽しみにしている方も多い。

中日ドラゴンズの地元ですから、中日スポーツが取り合いになるほどです。お客さんの希望をかなえるうちに9部を揃えるようになりました」。愛知県内で、「コメダ珈琲 日進米野木店」、「日進竹の山店」を経営するのが株式会社カプリ。2店舗ともに最寄り駅から徒歩20分以上かかるロードサイド沿いにあるが、こちらの店舗も連日多くのお客さんが訪れている。

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代表取締役の樋口宗彦氏は、「コメダ珈琲」起業前にホテルのバーやレストランで勤務した。「ホテルのバーやレストランは1人当たりの単価は数千円でしたが、景気が悪くなると顧客は一気に減りましたが、それより単価の低いコメダは景気に左右されない。お客さんから、『ステーキ店にはたまにしかいかないけど、コーヒーやパンは毎日食べる』と言われる手堅い商売です」。

コメダがここまで店舗数を伸ばせたのは、「本部主導でノウハウを授かるブランド力としての強さ」と、誰もが思うコメダの店舗展開論理だが、実は地域事情を知る各FC店オーナーの創意工夫による運営によるものが大きいといわれている。FC店率がわずか2%の「スターバックス」は例外にして、「ドトール」の同83%と比較してもコメダのFC店率の高さは突出している。

コメダ臼井興胤社長は言う。「本部主導で施策を実現できる直営店がブランドの強さ!』と思う人もいますが、実際は逆です。中央集権的な本部主導でやる店と、700店の現場が創意工夫で行う店と、どちらが来店客のためになるでしょうか。FC店の集合体がコメダブランドなのです」。「なるほど…」。本部のノウハウに任せっきりで胡坐をかいてはダメなのだと…。

外食業界では、「繁盛店をつくるのは奇手も妙手もない。店の魅力を打ち出し、新規客を常連客にし続けること」といわれることだが、コメダの強みは、地道な取り組みの徹底にある。それが飲食店で思い思いに過ごしたい消費者に受け入れられているのかも知れない。回転率を上げるは商法として邪道。「顧客が長居する店こそ繁栄店」こそが近代経営である。

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ブックオフが「立ち読み大歓迎」を打ち出した時に、多くの古書店が店を閉めた。なぜ立ち読み大歓迎だったのか?そういう顧客は潜在需要者であること。古書店になど素通りしても中に入らない顧客はに比べて、いかに潜在需要者を大事にするかが、近代経営である。広島に40店舗を有していた、「花いち古書センター」は全てビニールカバーをかぶせていた。

立ち読みをさせないためにである。顧客の自由意志を尊重し、大事にする経営手腕の差が、如実に表れた格好である。「花いち」はブックオフの、「損して得取れ」の理念を理解できないままに廃れていった。かび臭い、狭い通路、立ち読みに気が引ける、といった古書店のネガティブイメージを一新した、清潔で自由で明るいブックオフの近代的経営の勝利である。


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