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少女自殺。「楽しいままで終わりたい」 ②

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「楽しいままで終わりたい」と遺書に記して自殺した少女について、様々な解釈がなされているが、答えの判別しない問題に種々の考えがあっていい。「人生を全く楽しそうに過ごしていない親の姿を見て、これ以上生きる意味ないと思ったから自殺したのでは…」という解釈にはちょいとビックリした。楽しそうに過ごしていない親の生活に影響されるとも思えない。

ま、他人様の考えはいいとして、「死」は楽しいことではないと思うが、少女にとって死はどれほどの問題だったのか?辛く、苦しいから死ぬ人にとって、辛い、苦しいからの逃避であろう。が、「死」そのものが辛く、苦しいことではないというのも分からない。言葉を変えれば、「死ぬ=つまらない」のはずだが、辛い、苦しいが、「つまらない」を上回るのか。

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これも、「耐性」の問題だろう。死ぬほど辛い、死ぬほど苦しいことがこの世にあるのだ。少年少女にはいじめによる自殺が多いが、死ぬほど辛いいじめというのが、またよくわからないが、自分に分からないだけで、自殺者にはあるということ。「ある」の理由は、自らがいじめを回避する方法(代案)が見つからない。いじめは辛いが、死ぬというのも大変なハズ。

それほど大変な死を簡単(かどうかは分からないが)に実行してしまう人にとっては、死ぬことは大変な問題ではないのだろう。そう思わなければ自殺の理解は難しい。「命を大切にしましょう」と、これも小学校レベルの標語である。そんなこと言われなくとも、標語にするまでもない当たり前の事だが、当たり前を超える行為は、特異と言わざるを得ない。

やはり自殺は特異な事象である。自殺者にとって、「命の大切」どの程度当たり前なのかよく分からない。自殺者がどの程度、「命の大切さ」を感じていたのか聞いてみたい。「死は怖いです。何度も悩み考えました。それでも生きて行くのは辛い」という遺書を読んだことがある。死が怖いのは当然だろ。が、「当然」というのは、正確な答えになっていない。

ならば、人は死の何が怖いのか?いろいろな死があり、怖さの意味は違ってくる。末期がん患者や心筋梗塞などの痛みによる苦痛という怖さもある。「何の痛みもなく、ポックリ逝けたらいいな」という声は少なくない。次に、現世の一切と離別するという怖さもある。肉親や親しい人、あるいは愛しいペットとの離別は嫌だろうし、それが「怖い」の情動となる。

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死を見送る側の悲しさ、切なさを想像すれば、死にゆく者とて同じこと。長年連れ添った伴侶との別れや、わが子をおいて死にゆく悲しみ。逝くものも置かれるものも等しく悲しい。さらには、「喪失」に対する恐れがある。苦労して身につけた知識や技能、努力で掴んだ地位、名誉、さらには財産に対する執着心から生まれる、「喪失」の恐怖も大変なものだ。

「金は生きてるうちに使え!あの世に持っていけないもの」などと言うが、大ピアニストのホロヴィッツ、大指揮者のカラヤンが亡くなった時、とても勿体ないなと感じた。それを別の言い方で、「惜しい人を亡くした」などと表現するが、この言い方は社交辞令的にも用いられる。社会に貢献するなにものを持たない人間であれ、遺族には惜しい人には違いない。

「死後への不安」という怖れもある。哲学者丸山圭一郎は以下述べる。「いわば〈非 ― 知〉に相対したときの戦慄である。死が全く人間の予測や思考の枠を超えた存在であり、死後の世界は不安と謎に満ちたブラックホール。死んだらどこへ行くのか、死んだら自分はどうなるのかという問いは、現世の人間関係とか財産の喪失とはまったく次元の異なる恐怖をよび起こす」。

「死ぬのは怖い」と言いながら、それでも死ぬ少女たちにとって、死は無残である。が、「楽しいままで終わりたい」と記した少女の死とはなんであろう。額面通り受けとるなら、彼女の死は一体にそういう種別に当たるのか?「苦痛でもない」かといって、幸せな死とも思えない。何となく、「惰性の死」のようでもあり、それほどに分からない死の種因である。

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生きたくても生きられない人を思うと、これほど罪深い死はないのでは?そう思わざるをえないが、我々が少女の思いを理解できないだけなのかと。様々な死の恐怖を述べたが、噛み砕いていえば、「命を失う恐怖」というのが分かり易い。哲学的な答えにはなってはいないが、それで充分理解に及ぶ。死刑囚における彼ら死の苦しみを考えたことがある。

腰が抜けて、歩くことができず、独房から絞首台まで監守に両脇を支えられ、引きづられていく受刑者に思いを馳せる。絞首台の上でロープを首にかけられる時だけではな彼らの死の苦しみは、死刑の宣告を受けたその時からはじまっている。その時から彼らの心の中には、すさまじい嵐が荒れ狂いはじめ、一日足りとも死の恐怖から解放されることはない。

罪に対する罰の精神的苦痛は大きい。刑事訴訟法475条2項には、「死刑判決確定後6ヵ月以内に、法務大臣が執行を命令しなければならない」とあるが、実際には死刑確定から執行までそれ以上の時間を要すのが通例で、判例で6ヵ月以内の執行は法的拘束力のない訓示規定とされ、これは一種の努力目標であって、1960年以降に確定後6ヵ月以内に執行された例はない。

死ぬこと以上に、死に怯える苦痛は計り知れない。2005年、北海道滝川市の滝川市立江部乙小学校に通っていた小学6年生の女児がいじめを苦に自殺した事件があった。女児は1学期の席替えの際、多数の児童に性的魅力がないと中傷されるなどのいじめを受けていた。同年9月9日にいじめを苦に、遺書を残した上で首吊り自殺を図り、幸い一命は取り留めた。

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が、少女は回復することなく、2006年1月6日に死亡した。滝川市教育委員会は2005年11月に聞き取り調査を行い、いじめは無かったと結論した。2006年9月、遺族が新聞社に遺書を公開し、2006年10月上旬にマスコミで報じられた。滝川市教委は2006年10月5日に遺族に謝罪したが、女児の遺書について、「遺書ではなく、『手紙』である」と、マスコミに回答した。

これに対し市教委に抗議が殺到、9日後に滝川市教育長が辞職。さらに滝川市は同年10月16日付で市教委幹部職員2人を更迭した上、停職2ヶ月の懲戒処分を科す。同教育委員会は同年12月5日に調査報告をまとめ、同月9日調査報告書の市民説明会を開いた。道教委は翌年2月28日、校長を減給(10分の1)1カ月の懲戒処分、教頭と当時の担任教諭を訓告処分とした。

自殺した女児の両親は滝川市と北海道に対し7900万円の損害賠償訴訟を札幌地方裁判所に訴え、2010年2月に裁判所から和解案を受け入れ和解が成立した。以下は少女の遺書である。「私が死んだら読んでください」の文字が痛々しい。少女は死ぬと決めて遺書を残し、遺書の表にこのメッセージを書いた。強く生きるとは何か、について話を交わしてみたかった。

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少女は、「何度か自殺も考えました。でもこわくてできませんでした。でも今私はけっしんしました」の言葉が涙を誘う。死にゆくものにとっても、やはり死はこわいもののようで。何度も考えた上での決心となった。我々大人が少女のこうした現状を知れば、少しでも少女にとっていい方法を処置してあげられると思うが、そのためには話し合わなければならない。

話し合って、少女の苦しみに同化しなければならない。学校の問題ゆえに教師が適任だが、学校の勉強ばかりの教師には荷の重い。大学の教育学部においては、品行方正であることを求められることが多く、社会経験や人間関係における感受性は養われない。いじめ問題に適切に対処もできない教師は、知らぬ素振りや見てみぬ振りがマニュアルとなっている。

教師にそういう能力はないと、親が見切って一生懸命になるのが最善だろう。いじめを受けていることを親に隠す子は多い。なぜか?あえて言わない。答えを親が真剣に模索すべきで、他人の受け売りでは頭に入っても身にならない。大事と思う親は必死で考えるべきだ。「楽しいままで終わりたい」の言葉を置いて死んだ少女については、あれこれ言わない。

済んだことを言っても元にもどらないし、だから言うのを好まない。「楽しいままで終わりたいと思うけど、どう思う?」と、聞かれるなら別だ。「楽しいままで終わりたい自殺」がいかにバカげているかを納得するまで話したい。同様に、この理由での自殺に同意する人間がいたら、それはすべきでない。人生には喜怒哀楽が必要で、それなくして人の生はない。

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楽しいことはいいことだ。否定はしない。哀しいこと、苦しいことも必要だ。理由は、知恵をつけるためにである。怒ることも必要だ。なぜなら、善悪・正義感を身につけるためにである。最後に喜ぶことは、ひとえに他人との共感を生む。他人の事を我が事のように喜ぶの大事である。競技選手に日の丸が立つ喜びは、同胞意識、ナショナリズムである。

我々は一人で生きていない。周囲と共に生き、また周囲に生かされている。共に喜び、共に泣く、そうした社会の一員である。また、生きることは克服でもある。楽しいことに克服の必要はなく、辛い事、苦しい事で、身につける。それが身につかない人間は、生きて行くのが難しい。「楽しいままで終わりたい」は、耐性を拒否する言葉に思えてならない。


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