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町内会(自治会)というお荷物

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18歳で田舎を後にした自分は「青年団」活動の経験がない。子どもの頃に眺めていた「青年団」のお兄さんたちは逞しく見えた。特に秋祭り、夏祭りなどで法被姿に神輿を担ぐさまはエネルギッシュで迫力に満ちていた。が、憧れとか青年団に入りたいという気持ちは起こらなかった。その理由は、都会への憧れが大きく、心はそちらに奪われていたからだ。

実際問題、都会は自由だった。借家に住んでも隣近所は見知らぬ人ばかりで、干渉という圧力がまるでなかった。親からの極度の干渉、そして喧騒もあってか、依存心より自立心が旺盛な自分は、干渉という無言の圧力を嫌う性格となり、孤独を忌避することはなかった。友達といる時も独りでいる時も、それぞれに楽しみはあり、いずれにも適応できた。

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都会人は自立心の強さにくらべ、田舎では持ちつ持たれつの共存共栄が生活の基盤となる。だからか、いつも顔見知りの誰かと寄りあって、どこかで飲んだり話したりしている。集まることが好きというのか、集まって話し合っていれば悪口を言われないで済む。だから、寄り合いに顔を出さない人は悪口の餌食となる。集り、妬み、依存、嫉妬、虚栄の世界…

母親は毎日誰かの悪口を言って暮らしていた。自分の友人などの悪口は聞くのも嫌だから何度も苦言を呈したが、自省して止めることはなかった。田舎が都会と違い、隣近所のつながりとか地域の連帯を重視するようでも、それは表向きであり、腹の中は他人の悪口三昧であるのが子ども心に不可解であった。嫌な相手と出会っても笑顔で頭を下げる田舎の虚飾。

そうまでして維持すべくものがあるのだろう。「隣保」、「青年団」、「老人会」、「婦人会」、「子供会」、「消防団」に地元の中学卒や高校卒の第何期ごとに「○○会」という名称がある。地元に根差している人にとっては何でもないことのようでも、何十年も地元を離れた人間にとっては、煩わしい寄り合いである。大したことをしている訳ではない。

会費を払って溜まれば飲むというのがメインの様でもある。Uターンで田舎に帰ったとき、「何で人を干渉するんだ?」と、地元onlyの同級生に聞いてみた。「自分もされてるからだろうな?」と言ったのが印象的だった。別の奴は、「悪口を言うのは、自分も言われてるからだ」と、同じことを言った。同士討ちのようなものなら、互いに無視し合う方が罪がない。

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他人を褒めるのは口だけで、他人を貶すことで自我を安定させる。まさに人の不幸は蜜の味だ。その意味で田舎暮らしには気疲れがあるのだろう。精神衛生上に於いては都会暮らしが勝ろうというもの。裁判沙汰にまで発展した以下のような村八分の実例もある。「自治区の区民として認めないことになったので、カネは受け取らない。八草から出て行ってくれ!」

愛知県豊田市八草町に住む陶芸家荒川友雪さんは昨年1月、2010年度分の自治区費(年間1万円)を納めようと役員宅を訪れ、耳を疑う言葉を投げつけられた。立ちつくす荒川さんに役員は、「市の広報も回覧板も回さない。区の行事の連絡も入れない」と言い放ち、荒川さんに背を向けた。八草町生まれの荒川さんは、名古屋に住んだ7年を除き、地元で暮らし続けている。

コミュニティの一員ではないと宣告された荒川さんは再度、区費を持って役員宅を訪ね、自治区総会への出席などを伝えたが、役員は顔色を変え、「区民として認めていないから、会場の中には一歩も入れない」と、敵意剥き出しにした。堪忍袋の緒が切れてしまった。八草自治区と地域の共有地を管理する八草合有土地管理組合を相手に、民事訴訟を起こす。

裁判は名古屋地裁岡崎支部で行われ、口頭弁論における双方の言い分は真っ向から対立した。そもそも自治区(自治会ないしは町内会)は、「一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体」(地方自治法)で、区域に住む全ての人が構成員となる。「加わりたくない」住民を強制加入はできないが、「入りたい」という住民を拒むことはできない。

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ましてや、会費の受け取りを拒否して地縁の輪の外へ放逐することなど、許されるはずもない。ではなぜ、八草自治区で露骨な村八分騒動が巻き起こったのか。そこには特異な事情があった。荒川さんは孤高の陶芸家として知られ、その作陶は独特で、精製された粘土ではなく、自らが崖や田んぼの底から掘り出した良質な天然土を使い、薪で焼き上げる。

薪も購入するのではなく、雑木や枯れ木や廃材などを集めて活用するやり方で、作陶に使う土と薪を、自宅周辺に広がる里山から調達していた。辺りの山林は、八草地域住民の共有財産となってはいるが、荒川家は江戸時代から続く八草の旧家で、共有地を利用することに問題はない。里山に築いた陶芸窯は、「天河窯」といい、田原総一朗氏が名付けた。

そこでテント生活を送るなどし、自宅を長期留守にすることも頻繁だった。周囲からは完全に変わり者扱いされたが、自らを、「入会地によって育まれた陶芸家」と自負していた。それだけに共有地の環境保全に細心の注意を払っていた。不法投棄されたゴミの撤去などに1人で汗を流していた。荒川さんほど日常的に里山に足を踏み入れる住民はいなかった。

八草の共有地は地域内に分散しているが、総計で60万坪(約200㌶)と、八草地区全体の面積約486㌶の約4割強にあたる広大な土地に現在はわずか285世帯、652人が住む。愛知環状鉄道とリニモ(愛知高速交通束部丘陵線)の乗り継ぎ駅や、愛知工業大学があり、2005年の愛知万博の跡地にできた、「愛・地球博記念公園」にも近いが、それ以外は山と田畑が広がる田舎町だ。

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1913年に自治区(旧八草村)が国から払い下げを受け、当時の地区居住住民75人が共同で登記名義人となった。共有地の管理は当初八草自治区が行ない、1989年に土地を管理する八草合有地管理組合がつくられた。荒川さんの実父も登記名義人を承継し、2002年に亡くなった後は実兄が引き継いだ。その後八草共有地の土がガラスの原料となる珪砂を多く含むことが判明する。

四つの鉱山会社が土地を借りて採掘を始め、毎年5000万円が管理組合に毎年流れ込む宝の山となった。2005年には近隣にて「愛知万博」が開催された。地域の開発が進み、公共施設用地として購入を希望する話が相次ぎ、億単位のカネが管理組合に入るようになり、一時は20億円を超す額に膨らんでいた。組合員から、「そろそろ分けてほしい」という声も出始めた。

協議の結果、組合員に分配と決まった。「合有地の名義は、分配当時57人だが、時代とともに増え、もともと名義人であった本家からの分家を含めると、組合員は114人になる。本家だけでなく、分家も名義人と同じ権利がほしい。名義が分かれていると土地を扱いにくい。それで、カネの分配は今後の研究として、とりあえず、名義を組合でまとめることにした。

組合の指定した人に名義をまとめるため、名義を返上してもらい、返上した名義人には1千万円を渡し始めたが、名義人ではないある組合員の男性は、「名義人にだけカネを払う根拠はない。八草のものなら、八草の人みんなに払わないといけないのにおかしいでしょ。」と憤る。荒川さんが管理組合役員を訪ねたところ、「自治区民でない」と、門前払いを食う。


組合員が死亡した場合、1名のみ地位を承継できることになっていたが、実際は八草町居住の相続人に限って、組合員とする慣例となっていた。いわゆる分家として認められたもので、八草自治区の区民であることが条件だった。荒川さんは区費を差し出して自治区への加入を申し込んだが、「自治区民として認めることはできない」と、突っぱねられてしまった。

あまりの言われ方に納得のいかない荒川さんは、名古屋法務局に駆け込み、人権侵害を訴えたのだ。すると自治区役員から、「自治区民として認める」との連絡が入る。ひと騒動の末に荒川さんは09年4月に八草自治区民になることができた。結果的に荒川さんは分配金を手にできなかったが、自治区の会合に参加することで地域の実態を知ることになる。

その頃八草自治区にはトヨタ自動車が研究所を造るために10万坪の土地を100億円で買う、さらには同社がテストコースを作る案などの話がでたが、住民からは疑問の声が上がり、異議を唱える声が多く、自治区臨時総会は紛糾した。事業への同意は退けられると見られたが、役員は賛否を拍手で問うとし、まばらな音の中、「賛成多数で同意」となる。

総会で積極的に発言した荒川さんもこれには驚愕した。土取り事業はその後に盗掘窃盗事件に発展、業者が逮捕された。その直後に開かれた総会で荒川さんは事件の検証などを求めたが黙殺される。荒川さんは、共有地内の鉱山の穴に産業廃棄物が埋められているのではと調査を求める。このような荒川さんの積極的な発言を苦々しく思う役員もいて、厄介者になっていく。

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こうしたこともあって、2011年1月、荒川さんは八草自治区から放逐されることになった。自治区側は、水道使用量や電気使用量が少ないことを根拠に、「居住実態がない」ことを理由としている。荒川さんのホームページ、「天河窯」には、「実態にそぐわない入会権解釈を行う豊田市八草町自治区を相手に、裁判所へその是非を糾する為に提訴致しました。

民法263条と294条を巡って、利権に固執する豊田市八草の村人や、それに便乗して利益を図る関係者との弁論が行われます。入会権に関心のある方は傍聴に是非お越しください」とあり、これまでの裁判の流れや、今後の裁判日程の日取りなどが記されているが、どっちもどっち、醜い人間に変わらない。そんな利権の絡んだ、「村八分裁判」はどうなるのか?


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