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事件から学ぶ  「三浦九段不正疑惑」 ②

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日本将棋連盟が調査を委嘱した第三者委員会の調査報告会見を受けて、三浦九段、西村九段(三浦の師匠)、横張弁護士(三浦の代理人)による会見が行われた。冒頭横張弁護士は、第三者委員会を連盟寄りと批判したのは当然である。「疑惑が解消されないという非常事態における措置として規律権限の範囲内」という第三者委員会の主張は第三者が見てもオカシイ。

今回の会見で様々なことが分かった。それによって見えてきた筋書きはこうであろう。連盟は何としても竜王戦を開催したかった。というのも島理事が迂闊(?)に発言したように、渡辺竜王の、「疑惑のある棋士とは指せない」と対局拒否の姿勢を見せたことであろう。しかしなぜ、「竜王戦は金属探知機でスマホ持ち込みできないから大丈夫」と説得できなかったのか?

おそらくそれでは渡辺が納得しなかったのだろう。つまり、今期竜王戦がスマホ持ち込みが禁止となっても、渡辺が納得できない理由とは何かを考えた。以下は推論である。「三浦さんが挑戦者になれたのは不正をしたからであって、つまり不正で挑戦者になったことがそもそも問題では?そういう人とは指せません」というようなことを言ったのではないか?

親しい島理事辺りにそういった心境を告白し、それを受けた島が、「なるほど、もっともだ」と賛同、他の理事にその旨を進言する。ようするに今期竜王戦は、最初から三浦挑戦者を外すことが既定路線であったということだ。横張弁護士もいうように、金属探知機でスマホ持ち込み禁止と決定しているのに、なぜ三浦挑戦者を外す理由があったのか?は、当然すぎる疑問である。

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これを上記のように考えると納得できる。島理事と渡辺竜王が近い関係にあった事が問題の根幹である。島は渡辺が三浦と戦いたくないことをおそらく悟っていた。こうした人間関係の機微が三浦外しの裏工作に及んだ。今回の会見で、丸山九段との挑戦者決定戦3番勝負の際、連盟理事が三浦を極秘に監視していたことも明らかとなった。陰湿だが三浦外しを狙ったものだ。

幸いにして三浦に不正の事実は見つけられなかったが、数名の棋士間で囁かれていた三浦の不正疑惑の尻尾をつかまえ、棋界追放が目的だったのではないか?「幸いにして…」といったが、不正が見つからなかった連盟にしてみれば残念な結果である。ここまでされた三浦の心中は察するに余りあり、後に企ての事実を知った精神的打撃は相当であろう。

理事までもが加わり、寄って集ってのあきらかに精神的なイジメである。三浦外しを願い、主導したのは言うまでもない渡辺である。三浦との対戦成績が直近で三連敗ということもあってか、自負心とプライドが傷ついたことで、三浦不正の思い込みが一層膨らんで行った。「あいつが不正をしなかったら負ける相手ではない」と、そんな誇大妄想も渡辺に増幅された。

渡辺の三浦憎しは、自尊心が傷ついた事への返報感情である。渡辺と親しい理事がいたことで共同で三浦外しを画策、他の理事も追従したのではなかろうか。山本七平の、『空気の研究』によれば、渡辺や島の自信に満ちた三浦不正疑惑論に、他の理事たちの自らの意思決定が、空気に拘束された。唯一片上理事が自身のブログに、「疑問あり」と以下書き込んでいる。

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①当事者以外の棋士が軽々しく発言してはいけない

②一部の関係者がおかしな発言をしている。内部の情報や他人のことを勝手に発言するのは間違っている

③今は棋士は将棋を頑張るべき。それ以外の関係者も自分の役割を全うするべき

全体を見渡す理事職というのは斯くあるべし。渡辺の尻馬に乗った島理事は、一部の人間の利害に翻弄されたことからもバカ丸出しの理事失格だ。まあ、彼も三浦の尻尾を掴んで点数稼ぎを目論んだのだろう。日本人に於いて神妙なる決議などというものはない。皆が、「空気」を悟った瞬間にすべてが決まる。こんな仲良しこよしの理事ゴッコを片上はシビアに見ていた。

監視されていたという挑戦者決定戦だが、対局者の丸山九段は、「不審な点は感じなかった」と理性的な回答をした。片上は東大卒、丸山は早大卒の学士棋士。この際学歴は関係なかろうが、彼らが、「バカ」でないのは理性が物語っている。「バカ」は感情に奔る特質がある。渡辺しかり、島しかり、橋本しかり…。仕方がない。バカはどこの世界にもいる、それが世間である。

社会心理学用語に、「リスキーシフト(risky shift)」という現象がある。直訳すれば、「危ない変更」という意味で、これは集団による討議の際に性急な合意形成を図ろうとすることで、よりリスキーな結論へ傾斜し、移行してしまうことをいう。こういう場合、個人でじっくりと落ち着いて考えて出した結論と、集団で討議した結論とが大きく異なったりする。

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普段は穏健な考え方をし、比較的節度を守って行動することのできる人が、大勢の集団の中においては、その成員が極端な言動を行っても、それを特に気に掛けもせずに同調したり、一緒になって主張したりするようになる。集団極性化現象ともいわれ、羽生もそうだったのだろう。皆が同じであることがキモチ悪いと感じる自分は、速攻全員一致は興奮の産物としか思えない。

映画『12人の怒れる男』で、明らかに死刑に該当する殺人犯の評決の席で、第一回評決が11対1と一人の反対者が出るが、このような場合ではあちらでも肩身の狭い思いをする。「反対者は挙手して、反対理由を述べてもらいたい」と詰られ、反対した男はこう言った。「被告は殺人者かもしれん。その可能性が高い。もし、自分が反対しなければ即刻電気椅子送りだ。


折角集まったことだし、彼は少年だ。少しの時間くらい彼に割いてやってもいいのではないか?」。明確な根拠で反対したわけではない。陪審員として日当分の仕事はしようとの問いかけである。連盟の合議には羽生や佐藤(康)もいたという。その場でしゃんしゃんと処分決定されたようだが、後に羽生はツイッターで、「灰色とは言ったが、疑わしきは罰せずが妥当」と述べた。

羽生がそのことを合議の場で言わなかったのは残念である。処分が決まって後に、「自分は同意していない」と言ったに過ぎない。上記したような強く言えない空気感があったのだろう。連盟で一番将棋が強いのだから、正しいと思ったことは主張して欲しかった。人間的に優れていると世間で認知されていても、正しく物事を見、発信する勇気とはまた別であろう。

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渡辺竜王においても言える。彼は将棋の能力は優れているが、今回、自分が嫌う人間もしくは色眼鏡で見る人間を貶めるために疑惑を捏造したり、大袈裟に吹聴したり、知人の文春記者に書かせたりした。仕方がない、能力があってもバカはバカだ。個人的なことに振り回されないために、7名もの重職がいながら失態を演じた連盟は、多くのファンの信頼を裏切った。

谷川九段を尊敬していたが、いじめ生徒に加担した教師の如き無能さに失望した。米長前会長は好きではなかったが、今回彼が会長にあったなら、このようなバカげた事は起こってなかったろう。渡辺の思いあがりや我ままは、おそらく一蹴したハズだ。羽生も合議の場で冷静に討議した結論であれば、後に個人発表する見解と食い違うということはなかった。

将棋は強いが人間的な弱さは否めない。「疑わしきは罰せず」を信奉するなら、合議の場で主張すべきで、それでこそ棋界の第一人者たる羽生三冠である。米長はアクの強い人だったが、それが人間的な強さでもあった。すべてに万能な人間などいないが、谷川会長は挨拶の人だ。挨拶に堪能だけの飾り的な会長であったことが、今回リーダーシップを発揮できなかった。

三浦九段の会見は、これだけの目にあいながらも遠慮がちな連盟批判をするところに彼の弱い立場がある。三浦の会見を受けて後に連盟も会見を行ったが、第三者委員会からお墨付きを得たとばかり、連盟の対応の妥当性を強調し、理事の辞任もなく、減給という処分にとどめた。「三浦九段につらい思いをさせた。申し訳なく思っている」と、型通りの謝意は述べている。

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後は渡辺竜王がどのような発言をし、責任をとるのかをファンのみならず世間は注視している。何も言わない、責任を取らないのも彼らしい。自分的にはそれが渡辺というバカと思っている。今さら何を言ったところで、今回の彼の愚行は消えることはない。彼に人格的向上心があるのなら、そのために取る唯一の行動は、竜王位辞退と賞金の返還、三浦宛の直筆謝罪文である。

自己変革を試みるなら行動で示すこと。彼個人の問題ゆえにして欲しいとは思わない。するとも思わない。が、すれば変わるきっかけになるが、彼のような将棋バカに「人間性」の3文字はない。その辺も含めて世間は動向を見ているはずだ。4000万に欲を出すのではなく、今回は三浦挑戦者であったなら、彼が竜王位となったであろうと、三浦をリスペクトできる度量はない。

苦手な挑戦者を何とか蹴落とそうと目論んだ行為を反省し、人にあるまじき愚行と自らを断罪するなら、渡辺はいかばかりの成長もあろう。勝負師である以上、「自分が一番強い」という自負もいいが、TOTAL的人間としての成長は至難である。将棋は強いが渡辺に人間性を望むは土台無理という声は多いが、尊敬される棋士でなくともいい稼げればいい、それも彼らしい生き方である。

辛辣な表現で将棋連盟批判や核となる人物批判をしたが、ハッキリいってこれはイジメである。寄って集ってのイジメは断固許すべきでない。三浦の師匠である西村九段は、「前代未聞の不祥事」としたが、西村九段ならずとも同じ思いだ。なぜ、このようなことが起こったか?何度もいうが、「バカな棋士とバカな理事がいたから…」というのが、端的で分かり易い。

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