いわゆる三浦九段不正疑惑問題で、日本将棋連盟が調査を委嘱した第三者委員会(委員長・但木敬一弁護士)は26日、 調査報告書を同連盟に提出、東京・弁護士会館で記者会見して調査結果を説明した。それによると、三浦九段が対局中に将棋ソフトを使用したとする疑惑の根拠として指摘された点は、いずれも証拠価値が乏しく、不正行為に及んだ証拠はないと判断した。
一方、連盟の出場停止処分の妥当性については、「疑惑が解消されないという非常事態における措置として、規律権限の範囲内にあり、当時の判断としてはやむを得なかった」とした。委員会は、「将棋連盟は、三浦九段を正当に遇し、その実力をいかんなく発揮できるよう、諸環境を整え、一刻も早く将棋界を正常化されるよう要望する」などと提言している。
連盟に金銭で雇われた第三者委員会というのは、善意の第三者というにはほど遠い内容であるのは、予想された結果である。三浦九段がカンニング不正をしたのか否かについての調査は、彼が所持するスマホが唯一の物的証拠であり、証拠を調べれば簡単に分かること。そのことよりも無実の人間を処分したことにどういう判断を示すのか興味津々であった。
三浦九段は竜王戦の挑戦者として勝ち上がってきたわけで、その労力、功績を何のいわれもないまま、渡辺竜王の一方的な思い込みで奪われてしまった。これについて渡辺竜王を批判する者もいるが、彼が何を言おうが処分を科したのは連盟の理事どもで、結果的に嘘を鵜呑みにした連盟に100%責任がある。渡辺竜王の発言に耳を傾けるのはいいが、処分までは行き過ぎだった。
渡辺の告発を受けた連盟理事が浮足立ったのは事実で、三浦九段本人を呼んで事情聴取し、「不正をやっているのか?」と問い質したという。果たして不正をやっている人間がそれを問われて、「不正をやっています」というはずがない。となると、何のために呼んだか?三浦九段は、「やっていない」と否定したが、連盟は疑惑のまま処分を科したのはどういう仔細か。
「やりました」と言うと思ったのか?本人に聴取し、否定した以上、「不正はなかった」と信じるべきではなかったか?渡辺がこのことに納得しないのは、渡辺の問題で、彼自身が調査して証拠を示せばいいこと。それもないままに、疑惑というだけで三浦九段を処分するのは公平とはいえず、タイトル保持者としての渡辺竜王の疑念を信用した連盟のバカさに呆れてしまう。
「疑わしきは罰せず」に逆らい、「疑わしきを罰した」連盟を、第三者委員会が「やむを得ず」と擁護したのは雇い主ということもある。どちらの言い分にも確たる証拠がない段階で、一方だけを信じた連盟の落ち度を第三者委員会は苦しい弁明をした。「疑惑が解消されないという非常事態における措置として、規律権限の範囲内にあり、当時の判断としてはやむを得なかった。」
「非常事態の措置」とは何か?いうまでもない、竜王戦の開催が数日後に迫っていることである。三浦九段がスマホカンニングをしているというなら、カンニングをできないように策を固めて竜王戦を開幕すればよいものを、土壇場になって挑戦者を変更したことを、「非常事態の措置」としたが、その際渡辺竜王が、「疑惑のある棋士とは指せない」と言った事も非常事態なのか?
思い込みの我ままだろう。第三者委員会とは、舛添問題を見ても、依頼主をどう擁護するかが最大のポイントで、三浦九段の疑惑にはクロシロをつけたものの、バカな人間とバカな組織が起こした顛末の収拾は困難と感じたハズだ。「連盟の行為は許されない」とした場合、連盟はどう収集すべきかがまったく見えない。第三者委員会は崩壊寸前の連盟を救ったとも受け取れる。
今回の理事の対応から能無し集団であるのがハッキリした。切羽詰まった時にどう対応するかがバカと利口の分かれ目だが、こんなことは何ら難しい部類に入らない。もし自分が理事なら、「疑惑のある棋士とは指せない」などの言い分は、我が侭と一蹴する。「竜王戦ではスマホ持ち込み禁止にするから問題ない。それが気にいらないなら、対局拒否は御自由に」と相手にしない。
竜王タイトル保持者といえど、言ってることはおこちゃまである。なぜ過去に遡って不正疑惑がある者と指せないというのか?こんな言いがかりに動揺するなどお話にならない。「スマホ持ち込み禁止にする」という対処で毅然とすべきであった。組織がブレてはダメで、何の組織であろう。渡辺竜王の言い分のみに加担した連盟理事の腰砕けが最大の問題というしかない。
「疑惑のある棋士と指さない」と天下に公言する度胸があるなら、要求を受け入れてもいいが、姑息にも渡辺は連盟にチクり、それをバカ理事が鵜呑みにした。渡辺竜王が三浦九段の不正疑惑に信念を貫き、対局拒否も辞さずという態度ならそうすべきだった。「渡辺竜王は三浦九段に不正疑惑を抱き、今期竜王戦の対局を拒否されました」と表明すればよかった。
「そんな事をおおっぴろげにいわれては困る」という渡辺なら、疑惑の根拠への信念がなかった事になるが、渡辺が自信をもって疑惑と断じるなら、対局拒否でいいんじゃないのか。「三浦九段は不正をしている」と、堂々言えよ。今期の『竜王戦』は中止ならそれでいい。連盟はそのことにおいて、三浦九段を徹底的に調査する使命を負ったことになる。
そのための第三者委員会であるべきだった。いずれにしても調査結果は、「三浦九段は不正を行った事実はなかった」となり、渡辺竜王の独りよがりの末の対局拒否で、竜王位失冠となったわけだ。これでよかったし、この結果のどこに問題がある?不正を行っていない三浦九段には実害もなく、対局拒否なら不戦敗として三浦竜王が誕生していたハズだ。
連盟の毅然とした対応にも問題はなく、我がまま渡辺竜王の独りよがりの勝手な思い込みの結果、墓穴をほったということ。組織というのは何においても毅然とすべきであり、あれこれと我がままをいう人間にいちいち反応すべきではない。それだけ、将棋連盟が組織の体を為していなかったということに他ならない。第三者委員会は言葉濁して連盟を庇った。
「疑惑が解消されないという非常事態における措置として、規律権限の範囲内にあり、当時の判断としてはやむを得なかった」という言葉で乗り切ろうとしている。「やむを得なかった」といったが、連盟に「責任はない」と言っていない。様々な責任は、あちこちに生じている。自分の進言した対応であれば、責任は渡辺のみに発生しただけだ。さてと…
第三者委員会が報告書に明文化していない責任を、連盟の理事や渡辺竜王が、自覚し、取ろうとするのか?委員会から指摘がないからと、知らんふりで通すのか?そこらあたりを注視して眺めるしかない。とにかく今回の事態の責任というのは、間違いなく発生しているわけだから、こそこそすることなく、男らしく主体的に責任を名乗り出てもらいたい。
実質的な責任を有する者が率先し、主体的に謝罪なり何らかのアクションを起こさぬかぎり、いわれなき罪をきせられた三浦九段側には、名誉棄損と損害賠償の訴訟を起こさぬ限り、どうにもできない。訴訟は疑惑を突き付けた渡辺竜王ではなく、処分を科した将棋連盟が対象となる。連盟を敵に回す訴訟を起こせば、棋士としての道は断たれるからそれはない。
予断と偏見に満ちた村社会内での見苦しき騒動であった。名誉を棄損された怒りもあろうが、三浦九段はこれまで培ってきた将棋を今後も指したい気持ちが強い。今回の一件は、将棋は強いがバカな人間と、組織の、「イロハ」も分からない無知で無能な集団が起こした理不尽な仕打ちという以外のなにものでない。ならば、ぐっとこらえて今後も将棋に頑張って欲しい。
バカはどこにもいるし、突飛な被害を被ることもある。見ず知らずの通り魔に命を奪われる人もいるそんな世の中だ。それを考えれば、「命あっての物種」。三浦が自分の友人なら、そんな言葉をかけるかな。確かに、世の中何が起こるか分からないし、「一寸先は闇」の部分は多い。バカから受けたいわれなき抽象や被害は我慢をすることだ。福翁に以下の言葉がある。
なんど繰り返して読んでも、どの一つをとりだして読んでみても、そのたびに心を打つ言葉である。悲しみや苦しみ、不平や不満、そうしたものに押し潰されそうになるとき、この、「心訓」を思い出せばいい。幸い彼には棋士という職業がある。人間的な汚点がなかったことも明らかになった以上、肩身狭く生きる者よりマシである。さらに三浦九段には新たなファンもできたろう…
最後に、個人的には渡辺のような、「僕は三浦さんを処分してくれなんか言ってません」なる言葉を吐く人間は、極めつけの卑怯者である。彼が、「三浦さんを処分してください」などの言葉を言ったなど誰が思う?言葉ジリでなく、三浦に不正疑惑ありと、それに付随する言動をさんざん取ってきた。やった事を棚にあげ、言葉を否定することで行為の否定を企む厚顔無恥さに虫唾が走る。