成宮寛貴という名を目にし、彼を庇う芸能人の言葉を見出し以外は気にも留めず、SMAPほどの有名人ともいえない彼の存在を自分は知らなかった。基本的に芸能界に関心はなく、無知を自認する。芸能界の話題満載の週刊誌は何十年も買ったことがない。そんな成宮がいきなり芸能界を引退するという。何があったのかとの好奇心もあって、関連記事を読んだ。
コカイン使用疑惑があったと、写真週刊誌「FRIDAY」で報じられたようだ。「根も葉もないこと、法的なあらゆる処置を取る。訴える。」と、事務所は発表した矢先だった。そこまではよくあることで、不倫にしろ、隠し子にしろ、大麻にしろ、収賄などの汚職にしろ、週刊誌報道をすぐに認めて謝罪する人もいるにはいるが、多くは進路が断たれるまで否定をする。
「文春」砲に代表されるスクープ週刊誌は、第一弾が出た時は、三弾くらいまで証拠を握られているもので、火が付いた時点で観念すべきであろうが、そこは生身の人間である。嘘に嘘が重なってほころんで行くばかりだが、「人の不幸は蜜の味」とばかりに、肥やしにしたり、眺めたりの時代である。清原しかり、ASKAしかり、ベッキーしかり、高樹沙耶しかり。
「根も葉もないこと」という声明を信じるファンだが、嘘がほころべば根も葉もないのに茎があったとなる。最近の週刊誌の情報収集力は凄いの一語。数日前はテレビ朝日・朝の情報ニュース番組の局アナ不倫が報じられ、即刻番組を降ろされた。不倫を報道する側が不倫実行中なら、報道そのものが妙なことになるから、こういうアナに処分は必要である。
まさか、「社会は不倫はダメというけど、私もしてますし、本人同士が望むなら、別にいいんじゃないですかね~」とコメントするわけにもいかない。「不倫はダメです」で、実はしていたでは示しがつかない。ある大泥棒は、「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」といった。折角のチャンスだから、「…世に不倫の種は尽きまじ」と名言すればカッコよかったが…。
社内恋愛にお咎めの理由はないが、まともな恋愛より、不倫の方がスリルがあるのだろうか?ところで成宮の事務所は、「FRIDAY」の第一弾報道時見解は威勢がよかったが、二弾目であっさり芸能界引退という彼の決断は、どういう心境であろうか?いろいろな推測はできるが、彼は所属事務所をとおして、報道各社に以下の自筆コメントを発表した。
一読した印象を言えば、ナイーブな男のようだ。「心から信頼していた友人に裏切られ」とある。「複数の人達が仕掛けた罠に落ちてしまった」とある。彼の年齢は34歳であり、友人による裏切りは頻度にもよるが、ショックを隠せていない。経験を持つ自分は理解する。「セクシャリティな部分」というのが分からず、調べたところ、「ゲイ」疑惑であるらしい。
これについては、彼の所有するバッグやファッションなどから、周知の事実であったらしいが、それによって彼の好感度が下落することもなかったようだ。「今後これ以上自分のプライバシーが人の悪意によって世間に暴露されるのが耐えられない」と彼が感じたならそう見るしかないが、ゲイ疑惑に関しては隠せないものとカミングアウトする愛好者多し。
「今すぐこの芸能界から消えてなくなりたい」という彼は、速攻でその選択をしたようだ。自分は知らなかったが、映画の出演本数30本、テレビドラマの仕事も多い人気者なら、しっかり蓄えもあろう。自分に不似合いな世界、嫌だと感じる世界なら、金銭に関係なく辞めるのは正しい選択である。自筆で書かれた文を見ても、人間としての純粋さが感じられる。
コカインの使用は分からないが、芸能人ゆえに嵌められた可能性はあるかも知れない。仕事上のストレスと好奇心から、「ちょっと試してみないか?」と口車に乗せられ、現場写真を撮らせることなど簡単だ。自分が芸能人ゆえにこんな目にあった、こんな汚ない世界などうんざりと、純粋な人間は思うかも知れない。彼の唐突な引退劇はそんな風に思う。
入ったら抜け出せない虚業社会と言われる芸能界から足を洗い、他業種に向かう人間は、おそらく労苦経験が沁みついているからか?一度味わったら抜け出せない芸能界と言われる所以は、楽をして稼げる職業の筆頭であろう。どっぷりつかると、ツブシの利かない職業であるのも間違いない。Wikipediaにある成宮の人物評をみるに、彼は高校に行ってない。
母子家庭で育ち、中学生(14歳)の時に母親が他界した後、高校には進学せず、引越しのアルバイトなどで自ら生計を立てて、弟には毎日弁当を作って学校へ持たせるなどして面倒を見た。そんな苦労人の彼が、芸能界の甘い汁を吸った今も苦労を厭わない気持ちがあるなら、嫌な芸能界に留まることもない。だから固執しないで転職できるのかも知れない。
少なくとも芸能界にしがらむ人間より、人間としての実在感がある。彼が友人たちを人間と見なかったように、芸能界のドロドロ感を抱いていたのではないか?これほどに短兵急な決断を見る限り、偽りと裏切りと虚飾の芸能界に、よほど嫌気が指したのかもしれない。1912年にノーベル生理学・医学賞を受賞したアレクシス・カレルがこのように言っている。
「文明の進歩とともに、人類はだんだん不幸になって行く。なぜなら、それは近代文明というものが、ただ好奇心のおもむくままに、無軌道に発達していて、人間のことを考えていないからである」。素粒子レベルのミクロの世界を研究したり、果てしなく広がる宇宙をくまなく探査し、突き止めようとする人間にとって、もっとも未知なるものは人間である。
文明の進化は喜ぶべきだが、人間について一層の考察と、幸せについて配慮がなされなければならない。芸能界に生きる人間は、芸能界を去って行こうとする人間に新たなエールを贈るべきである。売れっ子である成宮を事務所は引き留めたようだが、本人の意志が固かったという。コカインの真偽よりも、芸能界への絶望感と人間不信は人生勉強と思えばいい。
信頼していた友人に裏切られるのは苦しいが、裏切る側にはそれなりの利益や思惑があるし、金で友人を売る奴など珍しいことではない。AKBの指原莉乃がHKTに移籍することになったのも、元彼が週刊誌に彼女のことを売ったことによるスキャンダルだった。指原はそのことで逆に人気者になったが、そうした女の強さにくらべると成宮はいかにもナイーブ。
友人に裏切られたことによる疎外感も分からなくはない。人間疎外などという言葉は、我々が人間の生活向上のために作りあげた所産が、反対に我々の生活を脅かすさまを指していう言葉で、この現象は誰にも起こっているし、今の若者はそのことを敏感に感じとっているようだ。自分たちが人間扱いされているか、物と同様に扱われたりしていないかなど。
これはある種の被害者意識であり、コンプレックスであろう。成宮の突如の芸能界引退宣言は、否定したコカイン所持をくらますものという指摘もある。そういう見方は否定はできないが、受け渡しの現場をあれほど上手くカメラに収めること自体が出来過ぎという見方もできる。よほど用意周到に嵌めた手口ではないか?あまりの状況的出来過ぎ感からそう思う。嵌めなければ撮れない画像である。
彼の純粋さ、脇の甘さ、人の良さを利用して、ひと稼ぎを企む者、あるいは彼を陥れようとの狙いを持った者の仕業という気がするのだ。それくらいに手際が良すぎるし、まるでFBIのおとり捜査による生々しい現場写真である。芸能人・有名人を利用し、ネタにした商売の可能性もある。有名人であるがゆえに気をつけなければならないことは山ほどある。
嵌められたら簡単に芸能界を追われてしまう怖さがある。断定はできないが高畑の美人局疑惑もそれに該当する。慶大生広研も事件にならない可能性もあるが、高畑も刑事事件にできなかったとするなら、強姦(?)された女性はあまりに不幸である。ところが、高畑の場合は、事件にならないから不幸というより、ちゃっかり大金をせしめているではないか?
強姦が事実なら女性は不幸であるハズだが、18歳の慶大生ならともかく、事件にならなかった不幸などと、大金をせしめた40ババァが言う事かと…。強姦というのは、事件になって相手を法的処罰をさせたとしても、精神的に失ったものは癒えるものではないし、だから被害届も出さず、泣き寝入りする女性は多いという。訴えて相手を罰することで何が癒される?
男なら簡単にかかってしまいがちな美人局も卑劣な犯罪で、一瞬にして職を失うことになる。有名人は色仕掛けにはくれぐれも注意が必要だ。昔も今も人は安楽な生活を求める風潮がある。宝くじのCMを見て強く感じるが、あれには違法性がない。かつては清く明るく生きることが求められ、その後に名をあげる、好きなことをする、金持ちになるといった事が続いた。
それがこんにちは逆転しているようだ。清く明るくなどは、今の時代には死語に等しいが、今も昔も変わらないことは、苦しみを味わって人は成長すること。誰もが過ぎ去った過去を後に振り返り、「あの苦しみを通らないで良かったか?」と問われるなら、多くの人が、「いや、通ってよかった」というだろう。自分では気づかぬとも、苦しみが自分を成長させている。
人間の純粋な心が弄ばれ、裏切られ、嵌められたのなら、そんな世界は飛び出せばいい。芸能界だけが世界ではない。「何だってやれる」、「何だってやれたのだから…」という、過去の労苦は勲章である。「全ての原因を作ったのは自分」という冒頭の書き出しに強い決意が見える。他人から注視されずとも、社会でひっそり生きる選択はむしろ一般的だ。
シロと思えばクロ、クロと思えばシロ、シロと思えばシロ、クロと思えばクロ。他人の事など分からないが、クロであっても引退しない腹グロ政治家もいる。シロであるが、イメージダウンの責任を取って、事務所を止めたかも知れない。クロであるがシラを切り通せず、重圧に耐えきれないとの判断かも知れない。が、利用され、週刊誌に売られたのは事実。