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老人の維持費 ②

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衰えを知らないかのごとく伸び続ける日本人の平均寿命だが、それで老後が幸福になったといえるのか。人の残された時間は決して死の拷問であってはならず、自らの終(しまい)支度と、大切な人との別れの準備を怠ることなく最期のときを迎えるべきであろう。誰とて自分の一生を自らコントロールできないと、老齢になれば分ってくるし、他人を見ていても分る。
 
自分の最期を自分で始末したいのは山々だが、自分の思い通りに行かないこともあるならそこまで頑なに考える事もない。80歳の年齢を機に有料老人ホームに入った人が言う。「それぞれの部屋にはキッチンも風呂もあり、一見して普通のマンションと変わらないが、部屋にいくつもの非常ベルがあり、押すと看護師、介護士が駆けつけ、病棟に移すシステム。
 
ホームの中に告別式可能なホールもあり、自分はここで人の世話になりながら死ぬんだろうな。」自覚とゆとりがあれば、老人ホーム暮らしも終の棲家である。が、老人の習性とでもいうのか、人は老齢になるとだんだん社会性がなくなり、甘えも出てくるし、変な自尊心がむき出しになってくるものだ。家族に看取られるのが当然というような、権利意識も湧いてくる。
 
これに日本家庭の伝統が重なると、介護疲れから悲劇ということにもなり兼ねない。85歳にして意気軒昂の老母に手を焼く妻を見ていると、嘆かわしくも気の毒になる。先日妻に、「もう誰も対処できない母親の元に木刀持って、花瓶の一つでも壊しながら、いい加減におとなしくしないとぶっ殺すぞ!と脅すしかないな」と言ってみた。自分が出て行かなければラチはあかない。
 
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妻が承諾するはずもないが、「下の世話はできませんので、そのつもりでいてください」と妻が母に申し出た言葉がカンに触ったのかもしれない。嫁に下の世話をしてもらいたいわけでもないのだろうが、自己中心的で傲慢な人間は見棄てられ感が何より許せない。それが底意地の悪さを増幅させた。話し合うことが不可能な人間と前向きで冷静な会話は至難である。
 
親の資産を充てにする息子と親の軋轢が起こるケースは多い。例えば1千万、2千万なりの現金と持ち家が財産という場合、有料老人ホーム入居一時金のために持ち家を売却する事も出てくれば息子への遺産がなくなるわけで、そこで息子は「自分が面倒を見るから家を売るな」となる。が、実際に面倒を見るのは息子の嫁だし、嫁はやってられないだろう。
 
こういう親子の軋轢をなくすためには、親の遺産を充てにする息子に毅然とし、自分の老後は自分で判断する姿勢が正しい。親の子どもに対する縁切り宣言は双方のためでもあり、「今度は仲のよい他人として生きて行こう」と伝え、さっさと老人ホーム暮らしを選択する。親から絶縁宣言をされることで、日本的な親子の根深い共依存も解消されるなら幸いだ。
 
親というのはどこも似たり寄ったりで、「わしらが死ねばこの家も財産もお前のものだ」などと口にして暗に恭順を促している。金の魔力に物をいわせて親孝行をしろと腹で言っている。利口な親はそういう事は言わないものだが、思慮ない親は口に出す。禄を与えてキンタマを握り締める日本的な主従関係は、封建時代の藩主と藩士の名残りであろう。
 
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入居に関して巨額の金銭を要としない老人ホームもあるが、それでも誰でも入れるという代物でない。「サ高住」(サービス付き高齢者向け住宅や、特別養護老人ホームといった比較的負担の少ない施設が、社会福祉政策の一環として整備され、今後は拡充していくだろう。映画『おくりびと』では、遺体の清拭から納棺までの一切が納棺しによって職業的に行われている。
 
介護もプロの手になるべきというのが、この国の新しい国家形態であるべきだ。老齢者であっても家族を大事にすべきという事に何ら異存はないが、心労的負担を含めた介護の一切を家族に押し付ける社会制度は早晩改めていく必要がある。誰かがそれを言わないと悲劇は繰り返されるし、であるなら老齢者である本人が自覚を持つのが望ましいのだが…
 
「老人ホームなど行きたくない」、家族と一緒に居たいのは山々だろうが、介護はプロの仕事という新しい時代の到来である。数十年前なら、親を養老院に入れるなどとんでもない親不孝者だの、恩知らずだのと言われたが、昨今においても周囲の声や親の傲慢に慄く子も少なくない。とっくに仏になってしかりの年寄りを介護する大変さを知らずかそういう言い方をする。
 
50代、60代老人の介護に比べて80代90代の介護の大変さは比較にならない。世間は長年介護の末に看取った息子夫婦を立派だと褒めそやすが、何十年もの介護で失ったものは返ることはなく、介護従事者心身ボロボロ状態であろう。どうしてそれを立派と言われなければならぬのかと。必要だからやってまでで、しないでいれたらどんなに楽かを考えてみよ。
 
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子への義務を自己犠牲だと思い込む親はいる。なのに子に自己犠牲を強いて介護を要求するのは傲慢というものだ。2~3年の介護を通してなら得るものもあろうが、10年ともなれば周囲の支えがあっても得るものなどない。介護疲れが原因で起こる悲劇に対し、司法が情状を酌量するのが関の山。会社の中枢にいた人間さえも、親の介護で辞めていくケースもある。
 
老人ホーム入居を望まない親の心境はいろいろだが、自分が想像するに孤独という恐怖心であろう。男親の潔さに比べてダダをこねるのは母親に多いのか?自分の父は入院する際に「見舞いに来ないでいい」と自分に釘を刺した。それでも一度行った時に、「もうこなくていい」と念を押した。自分如きに気を使うなと言う男のやさしさを踏襲する自分である。
 
「旅に出ても土産はいらん」、「父の日、誕生日など無用」など一切を父にしなかったし、そんな事は忘れて遊んでいればいい、そういう男の気概としての父を踏襲している。バレンタインデーに娘からチョコを貰って喜ぶ父親をユニークと思えど卑下はしない。卑下は願望の裏返しである。親が嬉しいならそれでイイこと。自分がどうしたいであって、他人は関係ない。
 
老人ホームに入居する親を子が孫を連れて訪れる。和気藹々かどうかはともかく、これも現代の家族の在り方。自分なら「来なくていい」というし、中で将棋相手を見つけて楽しくやるし、自分が楽しければ家族に依存も負担もかけないで済むが、老人ホームにおける和気藹々が真実なら、親子は一度他人になった方がいい。子に下の世話を受けないことで、親の自尊心も保たれる。
 
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今や介護はビジネスである。介護保険だけで10兆円の巨大市場で、これはコンビニの市場規模に匹敵するかの勢いである。さらには団塊世代が75歳以上となる2025年には、21兆円に拡大すると試算されている。これを逃す手はない、恩恵に預かろうと、異業種からの参入が後を絶たない。世界のトヨタやソニーまでが関連事業を通じ、介護事業に乗り出している。
 
反面、問題も決してないではない。老人ホームでのサービス低下は目にあまり、「夜勤職員の酒盛り」発覚、「オムツ交換もままならぬ介護職員によってグルグル巻きにされた」といった事も。介護の劣化要因は「サ高住」の乱立にある。安否確認(緊急対応)と生活相談サービス付きのバリアフリー集合住宅「サ高住」は、入居時に高額な一時金がない事で人気上昇中。
 
2011年に制度化されたばかりだが、国が建設費を民間事業者に助成する事もあって、わずか3年弱でその数は全国で約15万戸(2014年6月現在)にまで急増した。反面事業者の中には、「介護は儲かる」と安易な考えで、法令も介護知識もないまま新規参入し、それが「サ高住」の問題噴出となっている。「サ高住」運営会社が倒産し、入居者を守る法律は今のところない。
 
事業者の最大目的が金儲けなら、利用者側に問題は発生する。とある県の「サ高住」では、敷金6万円のみで入居でき、月額使用料は食費込みで9万円と格安である。経済誌が特集した「サ高住」都道府県ランキングで、「月額料金の安さ」、「住まいの広さ」でベスト5に入った。ここに入居した85歳の女性は、それまで自宅の介護サービスを利用していた。
 
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認知症の進行で一人暮らしが困難になり家族が利便性がよいからとここに入居した。介護サービスは「サ高住」側の強い勧めで、併設の訪問介護事業所の利用を家族も承諾したが、入居後しばらくして家族が面会に出向くと、1時間の訪問介護サービスが提供されるはずなのに、ヘルパーが20分で引揚げ、他にも着替えや洗顔がされておらず、家族は不信を抱く。
 
集合住宅である「サ高住」は自宅と同じ扱いのため介護事業者の選択は自由にできりので、ケアマネジャーと相談しながらサービスの種類や回数など、ケアプラン(介護サービス計画書)に基づいて個別にサービスを決めるのが基本。家族は「サ高住」に併設された介護サービス業者を断り、外部に訪問介護事業所に変更した。ところが、この判断が思わぬ事態となる。
 
「サ高住」担当者から、「母の落ち着きがなくなり、警察に何度も電話をかけようとするので困っている。何とかして欲しい」と電話が頻繁に来るようになり、家族は「サ高住側にも介護職員がいるのだから、そちらで対応すべき」と伝えた。すると「サ高住」から「退去するか、ケアマネジャーを系列事業所職員に変えるか選択するように」と通告してきた。
 
家族は新たな老人ホームを探す負担などを考慮、結局「サ高住」に留まり、併設の訪問介護を利用せざるを得なくなったという。「サ高住」の狙いは、併設の事業所を利用してもらわないと、介護保険からの介護報酬が得られない。表向きには「介護事業所を自由に選べる」と言いながら、併設サービス利用を誘導する。これら入居者の"囲い込み"は常態化しているのが実情。
 
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この「サ高住」の関係者は取材に応じ、「必要ないサービスの押し売りをしたと述べている。つまり、在宅介護ではサービスの利用料金限度額(上限)が決められているが、会社側は限度ギリギリまで使わせるのが旨みであるから、職員であるケアマネジャーは経営者の言いなりにケアプランを作成していたという。例えば自分で排泄可能な入居者にまで夜中に起こしてトイレ介助を入れる。
 
これはもう悪質な介護報酬狙いであるが、悪質と言えないほどに常態化しているという。介護事業所を併設する「サ高住」側にすれば、サービスを多く利用させるとそれだけ介護報酬が増える。要介護①ですむ入居者なら介護報酬は月額約16万7千円だが、要介護③になると約27万円に跳ね上がる。いずれも自己負担は1万6700円、2万7000円と1割負担となっている。
 
ケアマネジャーは利用者の心身状態や意向に応じて必要な支援(サービス)を見極めるのが仕事だが、雇われの身であっては「サ高住」の意向に従わざるを得ない。外部の介護事業所が入り込めないところでは、中で何が行われているかは察しがつく。ただし、介護事業所が併設されていると、緊急時でも職員が駆け付けやすくなるなどの融通が利くメリットはある。
 
が、外部からの目が届きにくいために不正請求の温床になり易い。自治体の指導や監査から不正請求の事例は多数報告されている。群馬県内の「サ高住」では、併設の介護ヘルパーが同時刻に復数人にサービスを提供していたり、出勤していないヘルパーによる架空性急が判明、取り消し処分を受けている。さらには人員態勢の不備から重度者ばかりを集めている事業所もある。
 
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ある利用者は敷金も不要、月額食事込みで9万円のうたい文句に入居を決めたが、軟禁状態でにされ、「とんでもないところに来てしまった」と後悔しているという。「部屋からデイサービスのある一階に移動するだけの毎日で、外出も禁止、携帯電話や金銭の持ちこみも禁止、風邪をひけば『寝ていれば治るから』とそっけないだけで、何もしてもらえなかった」と嘆く。
 
家族は家族で「なかなか面会に行けないので生活雑貨や飲み物などを送っていたのに本人に渡されていないものもあった」と、これは悪質だが、本人宛の荷物は職員に中を調べられた上で渡されるというのは驚きを超えて、何でそこまでと理解を超える。携帯電話持ちこみ禁止の理由は、「警察に無用な電話をされたり、通販での買い物トラブルを避けるため」というが…
 
「サ高住」側が面倒な対応を避け、入居者を管理しやすいように運営している実情のようだ。刑務所や感化院とまではいわないが、幽閉状態といって過言はない。学者や専門家は、「入居者の通信や移動の自由を制限するのは、人権侵害や心理的虐待にあたる恐れがあり、やってはならないこと」と指摘する。外出禁止のみならず、退去申し出に契約解消できないところもある。
 
このような実体は報告されてはいても、入居希望者や同伴家族が見学に訪れても、こうした行為が一般人には「サ高住」の登録違反に当たるかどうかも分らないし、あまりの事業所を退去して別の老人ホームに入居した高齢者も、「一度くらいの見学だけで中のことなど分らない」というが、それはそのとおりだろう。こういう実態を知れば知るほど入居はしたくないと感じる。
 
イメージ 10有吉佐和子の『恍惚の人』がもたらした認知症への誤解は歴然とある。が、認知症は決して「人の終り」ではない。小説には「人格欠損」という言葉が使われ、そこにはボケたら何も分らなくなって最後は人でなくなるイメージがある。そこまで認知症を責める気はないが、認知症特有の「物盗られ妄想」に手を焼く妻。「あんたが盗った」と言われて自分なら蹴りが入る。やっていないことをやったといわれるほど侮辱はないが、妻は「認知症」ではないと言う。しっかりしているだけに聞き流すことができないと苦悩を訴える。「おとなしくさせるには木刀持って、周囲の物を叩き壊してビビらせるしかないんじゃないか?」と、非理性的な母にはそれくらいしか解決策を思いつかないが、鬼と同居する妻の我慢も見上げたものだ。
 
幸せな老後を実現するためには「正しい終活」のためには身の回りに蓄えてきたものを「取捨選択」すること。例えば可愛がっていたペットの引き取り手を探しておくとかも。肉親・家族といさかいを起こすことなく、「老いては子に従う」心掛けも大事。さらには老人を食いものにする悪辣な「サ高住」に気をつける。そのために国も悪用されないルール作りを進めることだ。
 
「サ高住」事業者のけたたましい商魂は、医療面においても「囲い込み」が横行している。「サ高住」に入居すると訪問診察の利用を促され、それまでの主治医を変更させられる。訪問診察だけでなく、訪問歯科、訪問薬局などの利用もセットで勧められる事例もある。昨年2月、国会で「在宅医に患者を紹介する見返りに手数料を取る」のが問題にされた。
 
「患者紹介ビジネス」とは、まず患者を探す代理店を募集し、代理店の最も有力な営業先は一度に多数の患者を確保できる「サ高住」や「有料老人ホーム」である。集めた患者は紹介会社が提供する医療機関につながれ、訪問診療が開始される。医療機関は診療報酬から紹介会社に手数料15000円を支払い、うち8000円が代理店に支払われるという仕組み。
 
「紹介料は毎月定期的に入るので、安定収入が確保できます。代理店になるには加盟金がいりますが、上手くいけば月数百万の収入が見込めます。」と、紹介会社の営業担当は言う。国は医療費抑制のために在宅医療を誘導したが、その制度が悪用されている。「サ高住」の囲い込み介護サービスと似た構図だが、老人はどこまで食いものにされるのか。
 
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