渡辺竜王の、「言ってない」発言を1日にネットの記事で知り、それについて所感を述べた。同日渡辺が自身のブログに、「一連のこと」、2日に、「最後に」との表題で三浦問題を述べているのを昨日知った。渡辺竜王のブログなど興味もないので伺うことはなかったが、本件については珍しくも長い文章を書いていた。一読後の感想は、「ダメだこりゃ」である。
今は懐かしいかりや長介のセリフである。何がどうダメというのは、自己正当化に満ち満ちており、腹立たしく感じたのは、自分は連盟の危機を未然に防いだナイトを気取っているところ。彼の文面によれば、一連の行動意図をこう説明している。以下抜粋。「10月上旬の時点で放っておいても三浦九段に対する報道が出る可能性が高いことを知りました。
このまま竜王戦に入れば七番勝負が中断になる可能性もありますし、将棋連盟にとって最悪の展開は後に隠していたと言われることです。七番勝負が始まってから対応するのでは遅いので、この状況を常務会に報告。報道が出ることを知っていながら放置して最悪の状況を迎えるリスクを取るか、事前に三浦九段に話を聞くかのどちらかしかないわけで、後者を選ぶまでは止むを得なかった思います。」
つまり渡辺は、「10月上旬の時点で放っておいても三浦九段に対する報道が出る可能性が高いことを知った」という。「可能性」というが、報道は渡辺が意図すればされたことでは?こういう事は社会でもままある。そういう奴は自身の事前行動を正当化するための作り話まで言い出す始末。が、起こした行動が上手くいかなかった場合の腐った言い訳など誰も信じない。
渡辺が竜王戦の直前の急いた行動は、誰が見ても間違っている。なぜなら、今ほど将棋連盟の信用を失墜させた例は過去にない。あげくファンの信頼を落とし、組織の無能さをさらけ出した。行動しなければもっと大変な事態になっていたなどの文面は、世間知らずの稚拙な子供騙しとしか受け取れない。バカは人を甘く見るからバカであって、彼は話にならないガキである。
将棋は強くても、それ以外においては凡人である。「自分は何もしなければよかったのか、いや、そんなことはない。連盟を守るために動いたし、頑張った」を連盟が間に受けたのは情けないが、渡辺の画策を鵜呑みにした連盟は、結果的に墓穴を掘ってしまう。将棋好きの将棋ファンは連盟を応援するしかないが、渡辺や理事連中のバカは消えてくれといいたい心境だ。
渡辺一人に踊らされた連盟の理事の無能さもあるが、事もあろうに棋界最高位竜王保持者でもあり、そんな彼の発言や行動を無碍にできなかったことには同情する。「メディアが報道するという情報を掴んでいる。竜王戦が始まる前に手を打たなければ大変なことになる」などと、危機感を煽られたと推察するが、煽られたこと自体がそもそも無能である。
なぜにこれほど慌てなければならなかったのか、連盟に突き付けられた最大の後悔であろうが、それが渡辺の意図するものであったことを読めなかったのだろうか?竜王位はともかくとして、渡辺明という棋士、あるいは人間性をもっと読めなかったのだろうか?その辺りが情けない。将棋の指し手を読む集団が、人の腹を読めない凡人なのを天下に示した格好だ。
将棋という村社会に生き、雑多な社会の人間関係の機微に疎い人たちと思えば責める気も失せるが、なぜもっと早い時期に、電子機器に対する憂慮を抱かなかったのか?スマホカンニングが悪いことと知りつつ、それを防止するための対策(対局室への持ち込む禁止など)を打ち出さなかったのか?元を絶たなくとも、それでカンニングは防止できたハズである。
連盟の、「棋士性善説」が体たらくであったということだが、この点を大平武洋六段が twitter で呟いている。「ればたらは良くないとブログに書いたばかりですが、今となっては数年前にルールが出来かかった時に、感情論やアホな理屈で反対した人達を押し切れなかったかなと思ってしまいます」。感情論やアホな理屈が何であるかを部外者は知ることもない。
何年も前から、「モバイル機器のチッェク態勢をつくるべきだ」と提唱していた棋士がいた。また、2013年4月20日、医学博士との対談で、「まずは対局中の電子機器を取り扱うのは禁止にしたほうがいいですね」。と答えた棋士もいた。前者は渡辺竜王、後者は三浦九段である。その疑惑を告発することになったのが渡辺竜王、相手が三浦九段とはなんという皮肉。
前回も述べたが、今回の最大の問題は、「急いては事を仕損じる」であって、同様に今回の最善策は、竜王戦七番勝負を不正の問題もなく終えることだった。その点は悔やみきれない点だ。勝負事の格言に、「風邪は引いても後手引くな」というが、連盟の対応は何でいつもこう後手ばかりなのか?やはり将棋と経営(組織運営)は別のものということだ。
今期の竜王戦七番勝負において、対局前に金属探知機で対局者を調査するとの了解を得ていた。この決定は急遽チェック態勢を敷かれたものではなく、対局室にスマホ持ち込み禁止案は随分前に決まっていたという。竜王戦挑戦者決定戦、「三浦弘行 vs 丸山忠久」の第二局が行われたのは8月26日で、観戦記担当は元女流の藤田麻衣子。その藤田はこう証言した。
「それまで(三浦九段が、「ソフト指し」の不正を疑われていることは)全然知らなかったです。(第2局は大差で、盤上の変化を詳しく書く代わりに)七番勝負で金属探知機で通信機器をチェックする話を書いたりしました」。これは彼女の観戦記の一文だが、この文は土壇場になって載らないことになる。本来は10月14日の新聞紙面に掲載される予定だった。
その数日前に読売新聞社から藤田宛に不掲載の連絡があり、彼女は、「いったい何が起こったのか」と訝っていたという。そこへ12日になって、挑戦者が三浦から丸山へ変更される由の連盟発表があったという。金属探知機での調査は8月の時点で決まっており、その設置を要求したのが渡辺であることも分かっている。それを受けた連盟は探知機も購入していた。
当事者でもあり、事情を知る渡辺がなぜ、「疑念がある棋士と指すつもりはない。タイトルを剥奪されても構わない」(産経新聞 10月21日20時42分配信)という発言をした?まあ、推察はつく。もっとも渡辺は、この発言を事実でないとしたが、ならばどういう表現をしたのかについて、渡辺も島理事も語っていない。これについて渡辺はブログに以下のように記している。
「島さんが言ったとされる自分の発言については島さんとの間での言葉のあや、解釈の違い、さらに報道を介すことで自分の本意ではない形で世に出てしまいました。これについては島さんとも確認した上で、『渡辺君の本意でないなら直したほうがいい』と言ってもらったので昨日の月例報告会と取材でその旨を伝えました。
初動から三浦九段を呼ぶまでに時間的余裕がなかったですし、自分も島さんに行動意図を丁寧に説明しなかったこと、島さんは対局者、主催者との折衝、マスコミ対応で10月10日から寝る暇もなく動いていたことは発言を修正する上で棋士にも理解を求めました」。31日の月例報告会席上での訂正というが、棋士に理解を求めても、理解を得たかどうかは別。
渡辺ブログを読んで、「ダメだこりゃ」と言ったが、彼の言うように、三浦不正疑惑報道が出る可能性があり(なぜ、渡辺がそれを知っていたかは謎)、「報道が出ることを知っていながら放置して最悪の状況を迎えるリスクを取るか、事前に三浦九段に話を聞くかのどちらかしかないわけで、後者を選ぶまでは止むを得なかった思います」。こんな言い分は後付けの感想戦である。
今回彼が事前にやった行為は、彼が憂慮したことより、良い結果を得ていなければならなかった。行為したことをいかに正当化しようと、結果が悪かったなら、渡辺の行為は愚挙であったということになる。結果とは、行為の責任とは、そういうものであろう。しなかったことの悪より、したことの悪が問題となる。よって、行為者が責任を取ることが真っ当な人間である。
将棋でいえば、指さなかった手をどれだけ悪手呼ばわりしようと、指した手が最悪の一手なら、棋士はダメな手を指したとなる。結果がすべての世界だ。渡辺がいかなる言い訳をしようと、渡辺の愚挙を評価するファンはいない。自画自賛はみっともないし、「物言えば唇寒し秋の風」の渡辺ブログ。連盟のためなどと、気取った奴が尻に火がついて自己弁護とは笑止千万。
嘘が綻びるのは多くの場合、その人が追い込まれたときに現れる。ここに及んで渡辺は、「自分ではブレてないつもりでも…」などというが、誰が見ても保身に躍起なのは明らか。彼が週刊誌を利用して三浦追い落とす画策をした汚い一手は明らかで、そして今、三浦告訴を意識した発言は見るも無残である。それにしてもなぜ彼は文春にリークした?この点は腑に落ちなかった。
その理由がネットにあった。真偽はともかく、「渡辺の先輩が文春にいる」との情報は、すべてを理解させるものだった。自己の主張を裏付けるために告発週刊誌や後輩の三枚堂四段、千田五段までも三浦追撃に利用した渡辺である。その彼が、「自分は言ってない」では、島常務も事の核心をやっと理解したろう。策に溺れた策士の末路は、孤立無援と決まっている。
調査委員会の裁定はもはや決まっているも同然。無実をいう三浦九段のスマホ、パソコンに履歴がない場合、彼をグレーとし、竜王と連盟を守る三方玉虫色決着が予測されるが、それは正義でない。履歴ナシは明らかに無実の証拠であり、声高に「無罪」を言うべきである。小癪な渡辺は責任の分散を企てているがこれもダメ。竜王防衛なら、彼はその地位にあらずで剥奪がいい。