三浦九段の不正疑惑問題は将棋界を超えた社会問題になっている。さまざまに報道されているとおり、確たる証拠もない疑惑段階で、棋界最高棋戦「竜王戦」の挑戦者でありながら、出場を奪われたばかりか、年度内の対局の出場停止処分を受けた。挑戦権剥奪という連盟の裁定はなぜ決まったのか?「竜王戦」開幕を数日後に控えてのあわただしい動きは腑に落ちなかった。
挑戦者でもある「竜王戦」は電子機器持ち込みを厳しく制限して三浦九段には対局してもらい、終了後に彼に覆いかぶさる疑惑解明を本腰を入れてやればよいのに、なぜこうまでも拙速な処分を行わなければならなかったのかは、大きな疑問であったが、そのことが連盟の発表でハッキリと分かった。なんと、対局拒否も辞さない構えで訴えたのが渡辺竜王だったのである。
連盟のこの発表は目を疑ったが、この事実を隠しておけなくなった連盟の意図が見えるようだった。組織としてはあまり公にしたくないことも種々あろうが、これだけ問題が大きくなり、連盟会長や理事の責任が棋士や将棋ファンや一般人にもに問われる事態になった以上、問題の核心である渡辺竜王の態度を発表すべきとの判断に至ったのだろう。
苦しい胸の内であろうが、晒さずしては連盟の拙速さだけが問題になる。が、渡辺竜王の主張を鵜呑みにした連盟の責任は大きいが、竜王戦直前にタイトル保持者が子どものようにゴネてしまっては竜王戦の開幕も危ぶまれる。挑戦者変更などは主催する読売新聞社などと協議の上で決定されたと思うが、渡辺竜王個人の我がままを鵜呑みにしたのはやはりオカシイ。
わがままとあえて言ったのは、スマホ使用が竜王の強い思い込みの可能性が高くなったからだ。渡辺竜王は連盟にこういった。「疑念がある棋士と指すつもりはない。タイトルを剥奪されても構わない」。棋士だから高飛車な発言というのか、これは挑戦者が三浦九段であるかぎり、対局はしないと恫喝している。それが、「タイトル剥奪でもいい」という文言の意味である。
「挑戦者を変えて欲しい」などの直接的な文言ではないが、彼とは指さないということは、対局拒否ということになる。連盟はこの申し出に苦慮したろう。主催紙や理事を交えて検討した結果、三浦九段から聴取をすることにした。三浦九段は否定し、「疑義がかかったままでは対局できない」といったと報じられたが、この言葉は二つの意味に受け取れる。
一つは、「疑義がかかったままでは対局できない」という対局拒否。もう一つは、「疑義がかかったままでは対局できないので、疑義を解いてもらいたい」という意味にも受け取れる。後に三浦九段は、「栄誉ある竜王戦の挑戦者として対局拒否なんかするわずがない」といったことからして、「疑義を解いて欲しい、そのためには全面協力したい」との意味であろう。
ところが、渡辺竜王の意向を知る連盟としては、三浦九段の疑義を晴らすことは日数的に無理がある。しかも、「疑念のある棋士とは指さない」という渡辺竜王の言葉は、過去にあった疑念を問題にしているわけだから、三浦九段の、「やってません」、「ぬれぎぬだ」という言葉は、彼には何の意味もない。となると、連盟は挑戦者を代えるしか打つ手がない。
これは渡辺竜王の意向を尊重するために、最初から、「結論ありき」の裁定であった。挑戦者が丸山九段に差し替えられた時、渡辺竜王は以下のしらじらしいコメントをしている。「残念です。(将棋ソフト問題で)疑わしい要素がいくつか出ている状況で、やむを得ない措置ではないかと思う」。と、これが、「三浦挑戦者なら対局拒否も辞さない」とした竜王の言葉である。
連盟も、主催の読売新聞社も、竜王戦を円滑に進めたい、そのために三浦九段を疑惑のままで処分したのである。我々も含めた将棋ファン、あるいは連盟の棋士たちも、このまま一件落着するのだろうか?三浦九段の心中や如何にであった。三浦九段は弁護士と相談して対応をしたいとの言葉を残しているなか、連盟は本件への二度目の会見を行う。
1.三浦九段は対局中の離席頻度が高かったことに加え、その時間も長かった。通常5分程度のところ20分、30分と離席していた。
2.過去に三浦九段と対戦した5人前後の棋士から、調査依頼があった。
3.連盟は本件に関する調査を終了し、三浦九段に改めて事情を聞く予定はない。
上記は会見内容の主旨で、処分に至った理由を述べたものだが、いずれも状況証拠のみで、三浦九段をクロと認定するものではない。疑惑段階で処分したのか、それとも発表しない確たる証拠をもってのことかについて、どうやら疑惑段階で処分したのがこれで分かる。それにしても軽率であり拙速であり、連盟は頭脳集団であるが社会的バカが露呈してしまった。
その日の、「報道ステーション」では、将棋ファンに馴染み深い村瀬信也記者(朝日新聞文化くらし報道部)が以下のコメントをする。「終盤戦で、1手毎に離席をしていたことが不自然と思われたようだ。三浦九段の手がソフトと似ていたという指摘が一部の棋士からあった」。「ソフトと似ている」とは、ソフトの指し手との、「一致率」に言及したもので、以下も新たな報道である。
1.三浦九段の聴取は、渡辺竜王が同席して行われた11日の常務会の場で、聴取時間は約2時間。
2.島朗理事は復帰した後の三浦九段について、「疑念を抱かれない対局姿勢で望んでくれると思う」。
3.三浦九段と親交のある棋士は、「将棋界の大きな汚点、一人の棋士の人生が変わるような話を、なぜこんなに早く決めたのか。今回のやり方は賛同できない」。
4.三浦九段の担当弁護士は、「状況証拠しかない中で一方的に決められた処分で、撤回を求めたい」。
棋界の長老田丸昇九段も自身のブログで、「三浦九段の名誉と棋士生命に関わる重大なことを、常務会がわずか1日で決定したことについては、少し疑問に思います。結果的に将棋界と棋士のイメージが悪くなりました。今後は真相の究明が大事だと思います」と記している。棋士の連盟批判というよりも、連盟の愚行を指摘した、ただしたというべきだ。
野月七段も、「棋士の名誉に関わる一件。証拠があるのか、どんな証拠なのか?
例えば一致率100%だけを根拠にしてるのか、それが本当に100%%なのか、何局も続いているのか、どこからの一致率を見て判断するのか」と疑義を呈す。大平六段は、「クロなら引退、シロなら大変。しかも、新規定が執行される前の出来事ですから味が悪い」。と書いている。
例えば一致率100%だけを根拠にしてるのか、それが本当に100%%なのか、何局も続いているのか、どこからの一致率を見て判断するのか」と疑義を呈す。大平六段は、「クロなら引退、シロなら大変。しかも、新規定が執行される前の出来事ですから味が悪い」。と書いている。
連盟の情報が適切とはいいがたいなか、さまざまな憶測が流れ、ついには羽生三冠までもが妻のツイッターで、「疑わしきは罰せず」と、刑法の主旨となる発言をする。彼は自身のツイッターを開設しておらず、過去、妻のツイッターを使って何かを言ったこともなく、異例の発言と世間は驚いた。週刊誌が、「羽生はクロに近いグレーと言っている」発言を誤解と言っている。
渡辺竜王は週刊文春に、「竜王戦が始まってから疑惑が公になれば、シリーズは中断される可能性が高いと考えました。それだけでなく、タイトル戦を開催する各新聞社が“不正”を理由にスポンサー料の引き下げや、タイトル戦の中止を決めたら連盟自体の存続さえも危うくなると思ったのです。そんななかで最悪のシナリオは、『疑惑を知りながら隠していたという事が発覚する事だ』と判断しました」と語った。
彼の独善論は、一方的で幼稚である。三浦の挑戦者変更が、連盟にとっての最善であったという偏見に満ちている。この辺で彼が挑戦者変更をほくそ笑んでる感じがしたが、「渡辺竜王からの猛烈なる対応要請が連盟にあった」という発表で、すべては彼の起こしたことだと認識できた。これについて三浦九段の態度は、「何もやましいことはない」と毅然としている。
自分の所有するパソコン、スマホ一切合切キチンと調べて欲しいと自らが要請した。これらの行為から伺えるのは、足がつくような事、すぐにばれるような調査をあえてするだろうか?クロであるなら…。やってないのは彼のみが知ることで、実際に無実なら何をされても痛くも痒くもない。三浦九段の態度はそのように感じられる。したがって、もしシロであったなら…
渡辺竜王の勝手な思い込みから、三浦九段の挑戦権を剥奪し、年度内の出場禁止処分を科した連盟はどのように責任を取るのだろうか?その前に、まずもって渡辺竜王は竜王を防衛しようが、失おうが茶番である。彼があのようなダダをこねた言い方で、己の我を通そうとしたこと自体が幼稚であり、社会人としてクズである。渡辺竜王が三浦に疑念を抱くのは勝手だ。
連盟に訴えるのも勝手だ。が、渡辺が傲慢なのは竜王保持者という立場をいいことに、「疑念のある三浦とは指せない、それが適わぬならタイトル返上する」と、これは恫喝である。なぜ連盟はこんな我が侭棋士を制止できなかったのか?米長前会長なら、断固許さないだろう。「無理を通せば道理引っ込む」という慣用句そのままだ。まあ、済んだことは仕方がない。
問題は三浦に嫌疑事実がないと立証されたときだ。渡辺はどの面下げて世間や三浦九段や連盟に詫びるのか?竜王位を防衛したなら当然にしてタイトル返上である。もちろん、対局料・賞金も含めてで、それくらいのペナルティは率先して課すべきだ。さらに渡辺は地べたに這いつくばって三浦に詫びることだな。連盟の理事は総辞職し、新たな役員を選定すべきだろう。
自己過信で人の名誉を傷つけるなど許されないけどな。とにかく今期のインチキ竜王戦は直ちに休止すべきだ。もはや興味も湧かない。幼稚な竜王とアホな理事が結託して巻き起こした一連のバカげた顛末を笑わずにいられない。あまりに連盟の判断は情けなう。羽生も言ったように、「灰色である以上処分は不可能」 と、なぜ谷川はこの一手を指さなかったのだろう…