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Channel: 死ぬまで生きよう!
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非アイドルの受難

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東京・小金井アイドル刺傷事件の被害者をアイドルと報道することの是非が問題となっている。はたして、彼女は「アイドル」なのか?何をアイドルというのか?の論議がなされた結果、肩書きはアイドルから女子大生に修正された。事務所に所属しないフリーのシンガーソングライターとして活動する彼女を、守ってくれるものなどいなかったろう。

経歴を見ても彼女は現役のアイドルではない。せめて「元アイドル」と報道するのが適切な配慮であろう…。実際問題アイドルの定義は難しい。AKB48ブーム以降、全国各地にアイドルグループが誕生、街のいたるところでアイドルグループのライブ活動がなされ、若い女性たちが歌ったり踊ったりしている活動は、世間一般的にすべて「アイドル」と捉えられている。

だからこそ“事件の本質”を見誤らない真摯な報道をすべきであろう。アイドルという言葉を初めて耳にしたのは、シルヴィ・バルタンの『アイドルを探せ』だった。アイドルが何か分からず、フランス語も分からず、誰もアイドルの意味を教えてくれず、そんな時代だった。後に歌詞と邦題は何の関連もないのを知ったが、それにしても何でこんなタイトルをつけたのか?

『アイドルを探せ』の原題『 La Plus Belle Pour Aller Dancer 』は、「ダンスに行く中で一番きれいな人」と訳される。それがなぜ『アイドルを探せ』になった?楽曲発売の前年(1963年)シルヴィ主演の映画『 Cherchez L'idole 』のタイトル直訳が、『アイドルを探せ』の邦題となり、主題曲の日本発売にあたり、映画の邦題がそのまま販促のため流用されたという。

「ダンスパーティのために自分で作ったドレスで誰よりも美しくなって、意中の男性と恋に落ちたい」という乙女心を歌う原曲の歌詞の内容と、全く関係のない日本語タイトルがついてしまった理由はこういうことだ。妙といえば妙だが、歌詞の意味など分からずとも音楽がよければいい。『上を向いて歩こう』も、アメリカでは『SUKIYAKI』というタイトルだった。

『アイドルを探せ』は日本で大ヒットしたし、自分もフランス人女性の楽曲やジャケット写真のあまりの美しさに度肝を抜かれた。情報の希薄なこともあり、外国人が珍しい時代でもあった。シルヴィは、ペギー・マーチやコニー・フランシスなどのヤンキー娘とは違う上品な顔立ち、囁くような言語と歌唱にカルチャーショックを受けた。フランスといえばフランス人形。

親戚に何体かフランス人形があった。後年知ったことだが、フランス人形というのは、フランスに関係なく西洋風人形の総称をいったようだ。男の子は人形になどまるで興味はなかったが、シルヴィ・バルタンのあのジャケット写真は、いかなるフランス人形より美しかった。その美しさもあってか、来日した際に、「レナウンわんさか娘」のCMソングを歌った。

シルヴィの日本語の上手さに驚いた。今の時代に美人はわんさかいるが、彼女の妖精のような美しさは奇跡というしかない。シルヴィと同時代、サン・レモ音楽祭優勝のジリオラ・チンクエッティも可愛かったが、シャンソン、カンツォーネよりロック、シルヴィやジリオラという美人より、ビートルズ、ビーチボーイズに魅かれた。それが音楽の魔力である。

美女の話はこれくらいにし、こんにちの地下アイドルを含むアイドル量産の時代に警鐘を鳴らす事件であろう。本人や警察、イベント主催者、マネージメント会社に責任もあるが、予測のつかない事件というのは、予測がつかないから起こったとしても、起こった時点では遅きに失す。危機管理の問題であるその危機管理を誰が行うか、ということになる。

危機管理は重要だが、ファンはアーチストに近づきたくとも襲う確率は極めて少なく、アーチストもファンをさほど警戒しないが無警戒というのではない。1980年12月8日、元ビートルズのジョン・レノンが自宅アパート前で襲われた。その日の、スタジオ作業を終えたレノンとヨーコの乗ったリムジンがアパートの前に到着したのは22時50分頃だった。

2人が車から降りた時、その場に待ち構えていたマーク・チャップマンが暗闇から、「レノン?」と呼び止めると同時に拳銃を5発を発射、うち4発がレノンの胸、背中、腕に命中した。彼は「撃たれた! (I'm shot!) 」と2度叫び、アパートの入り口に数歩進んで倒れた。直ちに警備員は警察に電話をし、数分後、セントラル・パーク警察署から警官が到着した。

警官の到着時にレノンはまだ意識があり、病院に搬送されたが大量出血もあって23時過ぎに死亡した。犯人のマーク・チャップマンは、ジョンの狂信的ファンと報じられ、世界的にその報道が定着した。ケネディ暗殺と同様、さまざまな憶測も語られたが、チャップマン自身は、仮釈放申請の際に、殺人の動機はレノンを殺すことで有名になりたかった、と語っている。

ファンはアーチストに、アーチストはファンという共生関係にあるが、名を上げるために信奉する相手を利用するのは、自尊感情や、自己愛的有能感などの理由によるが、自尊感情は、他者に対する自己肯定感の強さだけでなく、強い自己否定感からも芽生える。つまり、自己否定感が強いと、他者の能力を軽視することで仮想的有能感を抱く。

あまりに自己愛的で自己認識が甘いために、自分の方が他者より上と感じる。こういう場合の自尊感情は本物とはいえないが、強い自己否定感が他者を抹殺する動機にもなる。人を殺すなんて、バカもいいとこ。「なんでそんなバカなことするんだ?」となるが、人間は、たくさんの理不尽なことを乗り越えて、子どもから大人に成長しなければならない宿命を背負っている。

理不尽なこととは何か?生まれついた環境や、生まれ持った容姿もあろうし、勉強の出来、不出来や、部活動の能力差や、ありとあらゆる多くのものが理不尽といえばそうである。傷つきやすい青春時代というが、確かに思い出してもそうであるし、今でこそひとくくりにして「バカ」であったといえる。多くの人間がそういう時代を、それぞれなりに乗り越えてきたのだ。

我々は犯罪者を見下す。「捕まる事が分かりきって、なぜ犯罪を?」と考えるが、実はそうばかりではない。捕まりたくないなら逃げるが、例えば犯罪の目的が殺人なら、実行した時点で目的は完了している。チャップマンは、母親や自分に怯える生活の中で、自分は寝室の壁の中に住む小人たちを支配する王であるという空想に浸るようになる。

ジョンの熱狂的ファンであったが、ジョン・レノンの伝記を読み、その金満生活に怒り狂う。ある日、レノン殺害計画を小人たちに話した。チャップマンは当時ハワイ州ホノルルに住んでいたが、10月23日に勤務していた夜警を辞め、27日に銃を買い、30日にジョンの住むニューヨークに向けてホノルルを発った。これら、緻密な計画の元に殺害は実行された。

小金井のアイドル刺傷の犯人岩埼友宏容疑者(27)は、報道にあるような刺し傷(左胸3回 、右胸2回、 左目4回、 右目1回、 首7回、 口3回)が事実なら、半端ない憎悪であるのが分かる。目を刺すという余りに残虐さは、余人には想像できない憎しみが伝わって来る。今後意識が回復しても失明や障害は残り、いっそこのまま死んだ方がいいのかも…

好意を抱く女性から「無視」されたは、人間関係におけるネガティブな体験であり、こういう時に激高する人間は、過去において過大な自尊感情があり、自信とか、得意とか、満足とかの状況が多いとされる。犯人とされる岩崎容疑者は、中学・高校と柔道強豪校で、180cm、90kgの身長・体重の彼は、中学校時代に柔道の県大会優勝メンバーだった。

JR武蔵小金井駅付近で2、3時間待ち伏せし、Twitterには、「まだかな」と書かれていた。岩崎容疑者は駅で発見した冨田真由さんの後をつけ、そのまま犯行に及んだとみられている。また、彼は送検時に、「彼女、死にましたか?」と聞くなど、未だ憎悪抜け切らぬ様子である。人間が何を行為し、何を発言しても「異常」という言葉で収められる。

犯罪を捜査し、犯罪者を捕まえるだけでなく、異常性格人間に当たりをつけ、犯罪を防止するのも警察の仕事である。「桶川ストーカー殺人事件」を契機にストーカー規制法は議員立法された。岩崎容疑者は、過去にも犯罪予告をするなど、ストーカー行為要注意人物であったが、起こらぬことを事前に想定し、マークするのは人権問題にも絡んでくる。

警察や医師、議員などの権威的職業従事者に共通するのは、なかなかミスを認めない。権威者の指示に従うことが必ずしも悪いことではない。権威者は我々より知識も素養も持っており、正当な権利を持っての指示であろう。が、時として権威者も間違うし、そのような時でも権威者の指示に盲目的に従ってしまう危険性が権威性には備わっている。

権威者のミスを権威者も含めて誰も正さないなどあってはならない。東京都知事は総理大臣にも匹敵する権力者であるという。首相には閣議という意見の場があるが、知事にはそれもなく、したがって総理以上の権力者とも言える。舛添一人に手をこまねいているようでは、誰もが金魚のウンチに過ぎない。都民、都議会は、「ハゲ山の一夜」に向け、断固行動すべき。


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