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死ぬまで生きよう、どうせだもん。

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表題は映画のタイトル、ただし副題である。本題は『0.5ミリ』といい、何のことかわけが分からないが、どうやら意味は、「静電気が起こるくらい近い、人と人との距離感が0.5ミリ」ということらしい。安藤桃子が作家デビューとなった同名小説を、彼女自身の脚本・監督で映画化、主演には実妹の安藤サクラを起用した。姉妹の父は奥田瑛二、母は安藤和津である。

2014年度作品だが自分は観ていないし、レビューを書くわけではない。この映画を知った理由は、「死ぬまで生きよう」を検索したことだった。映画は介護ヘルパーとわけあり爺ちゃんの物語である。超高齢化社会、老人介護、孤独、詐欺、認知症、戦争、ドメスティック・バイオレンス、家族のあり方等、あらゆる人間が抱える問題を提議、と紹介されている。

映画も知らない、安藤姉妹も知らなかったが、今は顔くらいは知っている。日本映画はあまり観ないが、昨年観た『海街diary』は、原作が吉田秋生、監督が是枝裕和であったこと、YouTubeで観た予告編が面白そうだったこと、さらにもう一つの理由は、兄弟(姉妹)モノであったこと。一人っ子の自分にとって、兄弟は永遠の謎である。知りたいけれども実体験は無理。

ところで、『死ぬまで生きよう、どうせだもん。』なる副題だが、「どうせだもん」は何を言おうとしているのか考えて見た。考えなくてもアバウトで分かるが、折角だから追求したくなった。その前に、自分がブログを始める時に、「死ぬまで生きよう」の表題を選んだのはアレコレ考えず咄嗟に決めた。「死ぬまで生きよう」は、願望でも目的でもない自然な形である。

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「100まで生きよう」とか、「死ぬまでに○○したい」とかなら願望だが、「死ぬまで生きる」は、あまりに当たり前の出来事だ。そのことを、「しよう」と掛け声にした。誰でも死ぬまで生きるが、折角「生」を受けたのだから、頑張って生きようという思いもこもっている。年間3万人を越える自殺者に触発された部分もあり、生き切ることはある意味大変でもある。

人は誰も死ぬが、死んで後悔することはないだろう。死んだことで後悔するのは悲しいが、後悔がない分助かっている。もし、死後に後悔があるなら、すべての自殺者に後悔はあるのではないかと考える。それほどに自殺は恣意的(場当たり的)、突発的になされることに思えてならない。いろいろな自殺に遭遇し、否定したり、肯定的だったり、揺れたことがある。

最終的に否定なのか、肯定なのか、決められない理由は、自分が彼ら(彼女ら)と同じ立場に立てないこともある。「ああ、死んでしまいたい…、死ねば楽になれる」などと戯言をいう者は多いが、死は実践できないものだ。自殺は恣意的といったが、多くの苦悩と迷いはあったはずで、最終的に実行する段階において突発的ではと推察する。つまり、考え込むと人は死ねない。

考えた末に留まった人もいるはずだ。自分も一度だけ自殺を強く考えた事がある。台所から包丁を机の上に置き、死ぬ理由がなにかといろいろ考えた。その時の最大の理由が、母親へのツラ当てであった。自分が死ねば母も悔いいるだろう、それくらいしか彼女は分らないし、自分が死ぬ事が唯一母への復讐になる、そう考えたが。考えるうちにバカげていると思うようになる。

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自死という多大な損害を受けてまで、訴えることがバカげているし、どこに包丁を突き刺すにしても、痛いし、そんな中で意識が薄れて死んで行く。二度と元には戻らない。バカげている、自分のためにではなく、人のために死ぬなど大損害だ。アレコレ考えた末にそういう結論になった。もちろん、母を殺すことも考えたが、殺人は自殺以上に現実的な選択ではなかった。

理由は、獄舎につながれた「生」に、生きるという実在感を抱けなかったからではなかったか。50年以上も前のことだから克明な記憶はなく、端的にいうなら監獄に入るのが嫌だったのだろうし、人を殺す背信的行為に対するモラル感もあったはずだ。自死という損害的悔い、殺人という背信的悔い、実行しなかったのが何よりで、すればその後の人生はなかった。

損得勘定という思考の中、死ぬのは勇気がいることだ。だから人は突発的に決断する。殺人も同様、考えて行為できるものではない。親殺しに対し、計画的な殺人を準備し、行為に及んだ子ども達は少なくない。が、彼らには抜け落ちた思考が存在するはずだ。「窮鼠猫を噛む」というが、殺人は最悪の手段であり、噛まない選択をもっともっと考えてみるべきである。

人間は我慢をすれば報われる。そう信じていいはずで、どのように報われるという欲はあるけれど、最悪の結果を回避する点においても報われるだろう。巷言われる、「死ぬ気なら何でもやれる!」と、それが取り返しのつかない自殺を回避でき、同じように殺人という取り返しのつかぬ行為も、「我慢」によって抑止される。「我慢ならなかった」と言うのは口実だ。

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「ならぬ我慢こそ、するが我慢」である。人間界に限らず、一切の自然界の法則は、エネルギーは常に減衰し、エントロピーは常に増加の傾向にある。そうした中にあって安定とは、エネルギーの少ない状態をいう。エネルギーが少なければ物が動く事はない。どれほどエネルギーのある物でも、周囲を強固に押さえられるなら動きはできない。それを不自由というが…

安定には寄与する。自制も自らへの安定をはかどらせる。一切のものは安定しようとし、それが自然の傾向である。若さというエネルギーが、安定を目論むのは至難であろう。それでも安定を望むなら、だから死を浮かべる。死ねばエントロピーもエネルギーもゼロである。増加と減少の矛盾も解決される死は、完全な安定といえよう。動くこともない、自由度もゼロである。

日本の歴史を見るに、最も安定した時代である徳川時代、その安定した社会が一体歴史に何を残したか?制度や人間関係に衝突をきたさず、傾向あれば即座に取り締まるという安定の強制が人間的であったとは到底いえない。それらの不満が幕末に爆発し、新しい自由な時代を作った。つまり、徳川封建時代というのは、人間であることを止めた人間によって社会が動いていた。

たとえ黒い物を白と言われても逆らわない主従関係が、どうして人間的であろう。弱き人間が100人集い、強き人間一人と綱引きをする。当然ながら100人が勝つ。ところが、1対1では負ける。自分が人間であることの証明は、そうした二重性に引き裂かれていることでもある。いつもいつも数を整えて強者に対抗できない。そうした二重性という悲痛こそ、生きる証である。

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そうした中にしか人間らしい喜びはない。自分の生を呪い、境遇に不満を言ったところで、悲痛が変わることはない。ならば、悲痛を受け入れ、その中にあるささやかな喜びに浸ることだ。そうすれば人生の意味も沸いてこよう。安定と幸福を求めてみても、行き着いたものは不満であろう。ならば、日々の充足こそが生きる意味ではないか。生かされるなら生きるべし。

どんな英知も富裕も持っては死ねない。英知や富裕なくとも生きる喜びはある。他人は他人、比較もせず羨望も持たず、人生の意味に背を向けずに生きる人であれ。そうして死ぬまで生きる。つまらん人に出会うこともあるなら、つまらん人でない自分は幸せである。最近、つまらん老人を見て、その思いに強く至った。自分も老人なのか?世間的にはその類にある。

が、老人がみな老いぼれとは限らない。高齢者を老いぼれにさせるのは、年齢と言う見解が老いぼれている社会のせいであろう。人間の成長発達の本質についての見解が古いということ。多くの高齢者が、年齢に待ち構えられるが如く、老齢をやすやすと甘受し、それに身を委ねてしまう。避けがたい肉体の侵食が、同時に精神や心まで侵すだろうと信じる人もいよう。

まあ、自分は信じない部類だ。自分の関心事は、人生の延長よりも、幼体のもつ原動力の延長、若さの延長、人間の質の延長であり、運命の認識である。年をとるという身体上のプロセスの阻止ではなく、健全な行動ならびに健全な心理の可能性である。ゲイ・ルース博士はその著、『あなたの第二の人生』の中で老人について以下のように指摘をする。

  老人は、威厳をもち、慎重でなければならない。
  老いぼれ犬は、新しい芸を覚えない。
  老人は、心が狭く、自分の流儀に凝り固まり、のろまで、もうろくしている。
  老人は醜い。
  老人に未来はない。彼らに教える必要などあるのか。
  老人は、自分の体を使ったり、触れたがらない。
  老人は、じっと座って、静かにしているのを好む。

イメージ 6辛辣な言葉もあるが、これを見る限り自分は老人に遠い。我々を減退させるのは、年数そのものではない。各年齢段階で、いかに本当の自分を「諦め」ながら生きたかによる。年を取ることについての最新研究は、老齢に関連した心身の障害は大幅に改善、もしくは取り除かれる約束を建設的にしている。ウォーキングをやって分かったことは、精神のみならぬ自身の体力的若さである。

今後、維持するというより、維持できるかどうか分らないが、とにかく動けるときに動いてみようと。動けなくなったら、動きようにも動けない。動くというのは、老化の前に蓄えられ、分かりやすくも可能な行為である。野良仕事が高齢者の体にいいと言うのは聞いたことがある。田畑を所有しないからと、羨ましがっても埒はあかない。だから歩くし、歩けばいい…


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