Quantcast
Channel: 死ぬまで生きよう!
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1448

学習塾の存在意義と目的 ①

$
0
0

イメージ 1

目の前を歩く小学生高学年らしき男の子が道路わきのビルに入る。そこは進学塾で、しばしば目にする光景だ。「そんな所に行って面白いことでもあるのか?」などと思ったりもする。面白いかどうかはともかく、勉強はやらざるを得ないものだから、苦にもならない子もいれば、苦痛な子どももいる。親とて皆が行くのに行かせないのは取り残された心境になる。

他人は関係ない、我が子に高い理想を抱いて積極的に通わせる親もいる。なぜにこれほど学習塾が隆盛したのか?最大の理由は受験制度であろう。日本の義務教育制度は、中学までは自然に上がられるから、受験の第一関門は高校受験となる。高いレベルを求める親にとっては小学受験もあり、中学受験もあるご時世だ。そういえば「お受験」という言葉が流行った。

「お受験」は有名大学系の付属幼稚園から始まる。全く関心の無い世界であり、よって一般的な高校受験について考えてみる。まずは、「なぜ高校受験はあるのか?」試験を受けることを受験というが、試験は定員を選抜するために行う。全入といわれる高校進学だからいっそ無試験にと思うが、高校にも序例があり、生徒がハイレベル校に集中するなら試験は必要だ。

ハイレベル高校は高学力生徒に合ったところ、低いレベル高校は学力の低い生徒にとっての受け皿的な意味もある。どちらも高校、どちらを出ても高卒である。ハイレベル高は、普通に勉強して学力がついた生徒が行くところだったが、いつごろからか、お金をつぎ込んで子どもに高い学力をつけさせたいという親が出て来、それを契機に世は競争社会に突入した。

イメージ 2

子どもたちの競争激化社会は、親の思惑によって作られた。親が煽れば子どもはなびかざるを得ない。そうした親の要望から生まれた学習塾は、こんにち社会にあっては良くも悪くも公教育あっての存在である。今後、公教育はどうなり、学習塾はどうなるのか?2013年1月15日、安倍内閣は最重要課題の一つ、教育改革を推進するため教育再生実行会議を設置した。

 同月召集された第183 回通常国会において安倍総理は、「6・3・3・4制」の見直しによる"平成の学制大改革"を始め、教育再生に向けた具体的な課題について今後検討を進める」と述べ、学制改革への意欲を示した。昭和22年、教育基本法及び学校教育法の制定により、小学校6年、中学校3年の義務教育に、高等学校3年、大学4年のいわゆる6・3・3・4制が導入された。

これにより教育の機会均等、学制の単純化、普通教育の普及、義務教育の年限延長が実現したのだが、その後、経済の安定成長下において、1971年の中教審答申、「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」、いわゆる46答申(昭和46年)が、4年間の議論を経てまとめられた。学制改革論議の経緯というのは、概観するだけでも大変だから省略する。

6・3・3・4制に見られる現在の日本の学制は「単線型」と呼ばれるもので、初等教育から高等教育までが一本化されている状態を指す。その目的・利点は上記したように、教育の機会均等である。学校教育法が制定された1947年以来、実に70年もの長きに渡り続いてきた制度で、アメリカや韓国も「単線型」を採っている。これと対極にあるのが「複線型」。

イメージ 3

学校の種類、その修業年数とも、あらゆる選択肢を設けようという制度であり、「小学校に6年、中学校で3年。そして高校へ」という既成概念は壊れ、中学でも高校でもない、新しい「学校」が出現の可能性もある。国民がそれぞれ学びたい教育機関で、学びたい事を学びたいように学べるといった自由さが特徴で、教育再生本部は「複線型」への移行を提言した。

単線型・複線型それぞれに利点があるが、この発表を行った教育再生本部・本部長の下村博文議員は、当時民主党政権下もあって、「政権を奪還できたら、すぐ着手すべき内容」だと述べていた。「複線型」に拘る自民党だが、「単線型」の教育制度が制度疲労を起こしているのであれば、「複線型」も含め、新しい方向性を打ち出していくことは必要である。

「複線型」教育制度は、リカレント教育や生涯学習といった概念で説明される、人生における学び直しや何度でもチャレンジを可能とする。OECD(経済協力開発機構)が提唱した生涯教育構想のひとつリカレント教育とは、リカレント(循環)を意味し、従来の教育が学校から社会へという方向で動いていたのに対し、一度社会に出た者の学校への再入学を保障する。

これによって、学校教育と社会教育を循環的にシステム化することを課題とするが、社会とセットであるということなら果たしてこんにちの日本社会や、これからの日本社会において準備されているのかどうか。受験学力習得に躍起になる学生、保護者、学習塾・予備校による、受かれば忘れるためのバカげた詰め込み式受験学力は、本来の学力とはほど遠い。

イメージ 4

「単線型」の主目的は「教育の機会均等」で、戦前は「複線型」であった。当時の日本は、家庭の経済的な事情やさまざまな要因によって、教育機会は必ずしも国民に均等に与えられていたわけでなかった。それが国内すべての公立小・中学校はどこの学校でも同様の内容を扱えるようになった。その点において「単線型教育制度」は一定の役割を果たしたといえる。

「複線型」国家の代表はドイツである。10歳からギムナジウム、実科学校、基幹学校に分かれ、成績上位者がギムナジウム、成績中位者が実科学校、成績低位者が基幹学校に進学する。ヨーロッパ諸国はドイツほど明確ではないが、幾分、社会階級というものがあり、上層階級は上層階級用の学校に、中層階級は中層階級用の学校に通うという伝統の名残がある。

成績によって生徒を分別して教育を行った方が、非効率性が少ないと予想されるが、実際は、そうした複線型教育システムを国家全体という単位でみると、必ずしも成功していない。確かにエリート養成には適していることは恐らく間違いないが、社会全体で考えた場合、上位層、中位層、下位層などと、早い段階から分断して教育を行うと、デメリットが目立つ。

ドイツは下位層だけを集めてそれに適した教育を行っているが、低学力の問題が深刻である。ドイツは移民の多さという特殊性もあり、移民を含めた低学力層をまとめ集めて効率的教育を行ったとしても、学力向上は容易でなく、早期から階層を分断する教育システムは、下位層の活力を奪い、少年犯罪や麻薬、貧困の温床を生みだす可能性が高い。

イメージ 5

そうした観点に立つと、日本の単線型の教育システムは、支持される点もある。あまりに同質的というデメリットは残るが、同質的ゆえに社会的安定がもたらされ、高いレベルのインフラが維持されているというメリットもある。また、地域住民が協力し合い、子育てをし、学校を支えるという仕組みが、高い水準で、ほぼ全国くまなく維持されている国は希有と言える。

したがって、複線型への移行を議論するなら、現状の単線型によるメリットを十分に評価することが大前提だ。それぞれに利点、それぞれに問題点アリの二者択一をどう決定するか、最終的には数の論理か?「議論はし尽くした」、「出尽くした」が立法府の常套句である。いつまでも話し合うだけでは何も決まらないが、「ゆとり教育」のようにダメなら改めればいい。

しかし、「ゆとり教育」世代は、本田、錦織、松山、浅田、羽生といった、国際レベルのアスリートも生んでいる。それぞれ長短はあるが、自分的には「複線型」が望ましいと考える。「単線型」の最大の問題点は、一斉に行われる入学試験で、それは資格のある人が随時入学する仕組みではない。さらには一斉に卒業してくること。これを企業が一斉に採用する。

多くの学部で入学試験は難しいが、卒業試験は簡単なこと。しかしそれは、入り口での選別であって、製品(卒業生)の品質が保障されてはいないのである。企業側も、卒業生に専門知識や技能を期待せず、大学名=ブランドで採用する。その証拠に、文化系では学部卒も大学院卒も処遇に大きな差がない。その理由は、資格を得る学部と認識されていないからだ。

イメージ 6

一括採用(入学)同時昇進という、企業と同じ丸抱えシステムなので、大学間の移動がないことも挙げられる。未就学児を持つ専業主婦の95%が再就職を希望している(リクルート社の調査結果)という。また、育児・介護支援制度を利用している部下を持つことについて、約7割の管理職が抵抗感はないと答えていると伝えている(日本能率協会の調査結果)。

高度な実務能力を有す専業主婦より、新卒無能社員の方が正規雇用で給料も多いのはオカシイだろ。これが日本型社会に蔓延する国民の横並び意識である。顕著な例は、同世代の大多数が大学に行くなら、自発的・主体的選択に基づかない進学者が増える。大学で自発的に勉強するような人間でないのに大学に行く。だからバカチョン大学になる。

「みんなが(大学に)行くから、自分も行く」という人々の意識が変わっていかないかぎり、個人の多様な能力・適性、意欲・関心等に基づく主体的な進路選択は行われない。大事なことは、「いつどこで学んだか」であって、「どこの大学出た」ではなかろう。「何をどれだけ学んだか」を社会が適正に評価する時代に…、この指摘はいつから言われているんだ?


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1448

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>