Quantcast
Channel: 死ぬまで生きよう!
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1448

Uの想い出

$
0
0
Uが実親や友人の連帯保証人になり、借金地獄で多くの負債を残して逝ったと記したが、決してUをあげつらうものでもなく、Uの名誉を汚すものではない。確かに安易に(安易かどうか分からぬが)友人の保証人になって労苦する者も多い。Uの心情に思いを寄せながら、Uの想い出を綴ったのであって、良くも悪くもそれがUの周辺であり、Uが起こした真実である。

Uの妻も知らぬ人ではないし、知りすぎるくらいに知る女性。などと書けば、思わせぶりな記述となるが、そういう関係ではない。U(自分も)が高2の時にさかのぼる。「好きな女がいるんだ」とU。「誰だ?いってみろ」と自分。それが現在のUの妻で、いかなる顔かを別校舎に確かめに行き、そしてUに言った。「分かった!なんとかするからまかせろ」。早速、行動に出る。

イメージ 1

どこで彼女を呼びとめ、どのように言ったかの記憶はないが、旧姓KのUの妻は、自分の申し出を了承、二人は目出度く付き合うことになった。KはUを知っていたようだった。イケメンで180cm近い長身、野球部の4番バッター。そんなUをクラス内で慕う女性もいた。後日Kに聞いたことだが、ある日Kは、Uと同じクラスの女性HとYに体育館裏に呼び出されたという。

「同じクラスで付き合うのはいいけど、一級下でUと付き合うなんて生意気すぎよ!」と言われたという。これには自分もビックリ。HもYも知っているが、下級生を呼び出して、そんなイチャモンつける女とは想像もできない。Kは「怖かった」と言っていたが、「下級生のくせに生意気!」などと、訳の分らぬ言いがかりが女の世界にはあるのかと、バカらしくて笑ってしまった。
   

自分もKと同じクラスのMに好意を持っていたが、自分は直接Mに交際を申し出、Mの了解を得る。以後、4人で会うなどした。ところが、Mの事が母に知れ、母は、Mの姉の勤め先の衣料品店に出向き、妹(M)に交際を止めるよう命令したという。なんとも卑劣な行為であり、こんなことまでする母親がこの世に存在するという怖ろしさ。これはもう怒りを超えた嘆きである。

その事実に愕然とし、いいようのない悲しみに襲われた自分はその夜、UにKを呼び出させ、Kに頼んでMの家に詫びに行ってもらう。何とか思い直すよう働きかけてもらったが、母を怖がったMの気持ちは堅く、「もう付き合わない」とKにいったという。Mとはそれで終った。母の愚行に対する恨みの大きさは今でこそ消滅したが、当時の憎悪は殺したいほどだった。

イメージ 2

計り知れない苦悩であったが、くよくよしたところで始まらない。自分は、Mに失恋した直後、さっさとナンバー2のOという女に鞍替えした。その変わり身の速さにはUも驚いたようだったが、Kがどう思ったかは気にもならなかった。Uとは同じクラスなので毎日顔を合わすが、以後Kに会うことも話すこともなく、Uたちその後の状況も自分には関係のないことだった。

高校卒業後にUは大阪、自分は東京と離れたが、手紙のやり取りはしていたようだ。Uは自分の節操のなさを責め、松田道雄の『 私のアンソロジー〈1〉恋愛 』を「これを読め」と、送ってきたのを覚えている。本に何が書いてあったか、読んだ感想の記憶はないが、Uは男は一途であれという自己主張を持っていた。その理由は彼の父からもたらされたようだ。

地元でタクシー会社を経営するUの父は地元の大実業家であり、羽振りもよかった。有り体にいえば、Uはお金持ちのぼんぼんという境遇になる。社長がいて、母親は社長夫人であり、Uは会社社長の息子ということになる。父には本妻以外にも公然たる妾がおり、妾の子までいた。Uとは腹違いの兄弟になる。「英雄色を好む」ではないが、そんな昔気質の人だった。

狭い町内では公然と噂になったし、KがUと付き合うことを知ったKの周辺が、「あんなお父さんの子どもと付き合うのは止めなさい」、などと言ってきたと、後にKから聞いた。実際Uがどういう生活をしていたかまでは分らないが、弁当のおかずに毎日牛肉があったことで、自分とは異なる世界の人間という実感はあった。高校卒業後のUとKの動向は知らない。

イメージ 3

当時自分は、高校時代の友人何人かと手紙のやり取りがあった。東洋工業(現マツダ)に就職したS、才媛だが家庭の事情で地元の農協に勤めたHらと手紙を交じえていた。仲のよかったSはともかく、ほとんど話したことのないHと交流する経緯は覚えていない。また、他のクラスのHとも手紙をやり取りした。Hは高1のときの級友で、2、3年は別クラスで話をしたこともなかった。

なのに高校卒業したと同時に手紙が舞い込む。高校卒業という堰が切って落とされ、自分に思いを寄せていた女性がアクションを起こしたと推測する。同じクラスで会話もない女、2年間廊下ですれ違うだけの女のこうした主体的行動の理由はあったと見るべきだ。後者のHはしきりに会って話したいといい、それがあの時代の女性の、間接的な告白(求愛)であったかも知れない。

あの頃は女心など考えることも、考えようとすることもなく、20歳前の男の子にとっては、自が思いのままに、ひたすら意のままに生きていた。人の心の奥にある何かを探ることもなく、気づくこともない。若いというのは今に思えば考えナシのぱーぷりん、それが無鉄砲な行動の源泉となる。「若さ」の良さというのは、無思考ゆえに無茶苦茶がやれる。特に自分はそうだった。

どこの誰より"何も考えず生きていた"と実感できるほど、理性の欠片もない感性only人間であったろう。今はしこたま物事を考え、冷静な判断を模索するが、本質は感覚派、非理性派である。他人のことなどまるで考えない無軌道な行動で、迷惑をかけたことはいくらでもある。なぜもっと人の気持ちになれなかったか?おそらく我が侭に育ったからであろう。

イメージ 4

今は何より相手の気持ちが見えてくる。相手の気持ちを汲み取りながら行動する。相手に批判をする場合も、相手の気持ちが読め、分かるからである。批判も同調も無視もどれも相手の心を読みとった末の選択である。それぞれに対応した選択で接している。一貫した対応というより、柔軟に臨機応変に対応する。敵も味方も作らず、時々に敵にも味方にも変化する。

そもそも「敵」、「味方」という概念はなく、親しい人間であれ、そうでない場合であれ、理性判断重視に是々非々な対応を心掛けている。「理性的なものは現実的であり、現実的なものは理性的である」としたヘーゲルの言葉が正鵠を射ているように感じている。確かに、理性とは冷静な視点であり現実的な視点だ。人間は直観的視点と客観的視点を使い分けられる。

これに対し、感情は熱い視点であるから、理想的な形を作りだすために人間は、客観と直観をミクロとマクロに使いわけるが、純粋な視点としての心や感情も持っている。また、夢や理想や創造性といった視点から、多次元的に物事を思考できるようになる。これが人間的な成長と思っている。いつまでも狭い視野で物事を判断する人間は、所詮はキャパが低いままである。

ヘーゲルの言葉は彼の著書『法哲学』の序論であって、現実的なものはすべて合理的、合理的なものはすべて現実的と置き換えられる。現存するすべてのものを合理的なものとして神聖化し、専制政治の支配する当時のプロイセン政府の反動的な政策を、哲学の名において評価したに過ぎない。これに政府は喜んだが、半面、自由主義者たちは大いに憤慨したようだ。

イメージ 5何事も理性的にもたらされたものが正しいと言うのではなく、例えば女性が言うところの「生理的に無理」という言い方は、本能的な嫌悪感を示しているし、思考で結論される以前の問題だ。本能的であるということは、説明不可能である。それでも説明を試みるなら、「この男性の遺伝子は私が残す価値はない」ことかと。話す内容・言葉以上に女は男を直感的判断をするもの。
内容がUのことからそれたが、彼が自分のためにわざわざ送ってくれた松田道雄の著書に見る彼の真意は、「恋愛は一途であれ」ということだ。人にはそれぞれにいい部分がある。さまざまな洋服、さまざまな料理、さまざまな音楽、さまざまな国、都市、川、山といった自然に、さまざまな四季。毎日同じ服を着、同じ物を食い、同じ音楽を聴けといわれると、生きる楽しみは半減する。

結婚は形式であるから、愛がなくともやっていける。虚しいか、つまらないかは別にしても、結婚を続けたい人、続ける人はいる。自分たちが続けているということを自賛して、離婚者を貶す偽善者もいよう。人はいろいろだ。自分がよければそれでよく、他人のことを貶したところで、愛が強まるわけでもあるまいに。添え遂げる人は立派、別れた人もよくぞ別れた、立派である。

恋も相手によってまるで違う感情を呼び起こされる。一途な恋は一般的には正しくも美しいものだが、別の視点でみればつまらぬこと。人間は移り気で愚かであるのを知る創造者が、「汝は汝と共に生きよ」、「汝のみを愛せよ」と命令するのは、そういうことである。神が命令しなければ人間は一途な愛を遂げないし、神が命じても現実的に人間は一人を愛せない。

あなたの境遇があると同じように、それぞれ他人の境遇がある。あなたが良くて他人が良くないと思うのは構わないが、それで自分の良さが増すのか?自分は良いが人は悪いと思うのも、人は良いが自分は悪いと思うのも、できることなら思わずに生きるのがいい。自分の人生だから、いいと思えることを探し、それを見つけて楽しく生きればいい。人には人の人生がある。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1448

Trending Articles