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福岡・予備校生刺殺

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福岡市西区の路上で2月27日夜に刺され死亡した予備校生北川ひかるさん(19)の死因は出血性ショックによるもので、北川さんの首や顔、後頭部など計数十カ所に刺し傷や切り傷、手には凶器を防ごうとしてできた傷もあった。北川さんは何者かに背後から突然襲われたようで、事件直後に同じ予備校に通う少年(19)が手にけがを負い、「女性を刺した」と交番に出頭。

北川さんは事件当時、帰宅途中だったとみられ、現場に逃げ回った形跡はなく、後頭部や背中の傷などから、突然背後から襲われている。少年は交番に出頭した際、服に血がついた状態で、両手の指の付け根にけがをしていたが命に別条はない。「(北川さんに)ばかにされたと思い、腹が立った」などと話し、2人の間にトラブルがあったという内容の説明をしている。

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北川さんの傷は20カ所以上あり、現場には凶器とみられるナイフ2本と斧(いずれも全長20cm)があった。県警は2人スマホを押収し、やりとりの有無を調べる。2人が通う予備校幹部(52)は、「北川さんは非常に真面目で真摯に勉強に取り組んでいた。欠席などは少なく模範的な生徒でした」と話し、出頭した少年については、「真面目な印象と聞いている」とだけコメントした。

2月25~26日に国公立大の2次試験を受け、3月9日の合格発表を待っていた。事件現場近くに居住する男性によると、ベランダにいた妻が、女性に馬乗りになって襲う男を目撃したという。男性が外に出ると、若い女性が仰向けに倒れていた。「『大丈夫?』と声をかけたが反応はなかった。抵抗したのか、右手に短い髪の毛をつかんでいた」と生々しい状況を説明した。

少年は出頭時に、「北川さんに告白したが、あいまいにされた」などと説明したことで、福岡県警は少年の一方的な恋愛感情が事件の背景にあったとみて、任意で事情聴取を始めたが、2人が交際していたという情報はない。 少年は北川さんを含む予備校の数人とグループを作り、一緒に学んでいたようで、グループのメンバーから事情を聴いて実態解明を進める。

事件は8日で発生から10日目を迎えるが、両手に重傷を負った少年は現在も入院中である。熊本県天草市出身の北川さんは、地元では何十年に一人出るかの才媛といわれ、中学時代は生徒会長を務め、剣道部でも活躍した後、県内最難関の熊本高校に入学した。北川さんは高校から現役で九大に合格したが、あえて東大に挑戦するとして、福岡で単身浪人中だった。

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犯人の少年も北川さんと同じ東大の同じ学部を受験している。愛くるしさ漂う北川さんの容姿とは裏腹に、犯人の少年は少年法に守られ顔を見ることも阻まれている。同じ予備校内で同じ国公立大文系コースに所属する二人が会話をする姿を数人の予備校生らも目撃していたが、同居する北川さんの兄も「交際関係はなかった」と否定したが、何故このような事が起こるのか?

天草市といえば天草島である。面積683.78km²に総人口81,701人(2016年2月1日)で、数十年に一人とまで言われた才媛少女が、生活の多くを最高学府の東大受験に費やし、試験も終えて後は発表を待つばかりの身だった。そんな彼女が、何故同じ予備校学生に殺されなければならなかった?悲劇は少年側に視点をおいても言え、今まで何のために勉強を頑張ったのか?

テレビコメンテーターで経済学者の安田洋祐は、「いま浪人生は数が減っている。あえてそれを選んで、合格すれば4月からは東京生活だった。これが少年の一方的な思い込みだとしたら、やりきれないですね」。という以外に適切な言葉が見当たらない。片恋慕は辛いといえども、これまでの勉強の労苦も含めた人生の一片は、木の葉のように風が吹けば終りなのか?

あらゆるものは変わっている。悲しみの朝に、苦しみの夜に、絶えず時はめぐり、繰り返されている。荒んだ日々に、歪んだ日々に、休みなく時は過ぎている。人生は吹きすさぶ荒野のように、生きる道を誰もが忘れているのか?流れゆく時に、映りゆく社会に遅れてはならない(斉藤哲夫『悩み多き者よ』)。我々の青春の苦悩を癒してくれた2篇の歌を捧げたかった。

 


 『されど私の人生は』 詞曲:斉藤哲夫

 もう、どうでもいいのさ  つまらん事は考えないで
 そこからの道を 急ぐのさ それが最も肝心さ
 幻の道は いくつにも分かれ 振り返る時は 全て灰色に
 心の中は 荒れ果て尽きて 先を見ることさえ 苦しみ覚える
 変わる 変わる 目の前が
 変わって それで おしまいさ
 されど私の人生は
 されど私の人生は…

受験勉強に邁進、東大の前期試験も終ったこの時期に、いかなる理由があるにせよ人を殺せば、これまでに費やしたすべての努力及び、自身の未来の展望一切が崩壊するくらいの想像力や思考力はあったろう。それでもナイフ二本、斧まで用意して背後から人を襲うという恨みとはいかなるものか、まるで想像がつかない。出来心の過失致死ではなく、計画殺人である。

思春期の恋情とストレスの狭間にある心情は難解で、少年にとっては彼女の存在を超えた受験の労苦があったろう。異性に告白してフラれたくらいで、いちいち人を殺していたら、人口なんてあっという間に半減する。自らの将来を見据えた努力やさえもドブに捨ててしまうような、バカげた短絡的な殺人は、おそらく少年の思いつめる性格に起因すると考える。

光GENJIに『ガラスの十代』という曲があり、KinKi Kidsにも『硝子の少年』という曲があった。どちらも、傷つき、壊れやすい少年期を歌ったものだが、この時期は歌にあるように誰もが傷つき、壊れやすい。それを耐え忍び、別の何かの光明(あるいは諦観であれ)を見出すから生き続けられるが、それでも傷つくことに耐えられず、自らの命を投げ出す場合もある。

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荒井由美の『ひこうき雲』は、投身自殺をする少女からインスパイアされたというが、地面に落下する少女を、"空に憧れて、空をかけていくあの子の命はひこうき雲"という絶妙の感性で死を表現している。自殺というのは、自己愛偏重のナルシズム傾向を否定できないと自分は見ている。恋に憧れる少女は、恋の対象に恋するよりも、恋をする自身に酔っているように。

そういう微妙な少女心理を、「恋に恋する少女」という言い方をした。大失恋は自己愛的にみれば、命を投げ出しても相殺美化され、そのことで周囲は自身の苦しみの大きさを理解してくれるはず。斯くのナルシズム的美意識を少女が抱いたところで不思議はない。男と違ってどこか女性には、少しでも長く「女の子」でいたいという社会的、感情的背景があるといわれる。

少年が失恋を「バカにされた」と解釈するのは、過去における恋愛経験の有無も含む「バカにされる」体験の希薄さに思える。「バカにされた」未経験の免疫の無さが「バカにされた」を独善的拡大解釈する。「バカにされた」を怒るか、自己妄想とするか、そういう自己処理もできる。他人の言葉を自己の都合のみで考えるのは、子どもにありがちな精神の未熟さである。

「あんた、どの面さげて私に告してんの?」、「止めてよ、冗談は顔だけにしてくれる?」、「あなたなんかと付き合いなら死んだ方がマシ」、「お願いだから私の前から消えてくれない!」と、こんな類の言葉を女の暴言とみるか、思慮ないバカ女とみるかは男のキャパである。言葉は女の武器、壁になればいい。「一日中壁に向かって吠えてろ!」と言ってもいい。

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人に「バカにされた」と思うのは自己愛、自尊心の処理法を間違っている。バカになんかしていないのに、「お前はオレをバカにするのか?」と言う奴がいる。人を選べない以上、いろんな人間に遭遇するが、こういう被害者意識丸出しの言い方には、「お前はすぐに被害者になりたがる。傷つきやすいのはいいが、勝手に人を加害者にせんでくれるか」と釘を刺す。

「お前はオレをバカにしてるんか?」と言う発言など、過去に一度も発した事がないのは、惨めったらしく情けない言葉である。相手の言い方で、「コイツはオレをバカにしてるな」と、腹で感じることはあるが、それを口に出していうほどに防御を必要としない。「勝手に言ってろ!」と思えばいいこと。人が人をバカにしたからとて、そいつが偉くなるわけでもあるまい。

「お前はオレをバカにしてるんか?」は、完璧な防御言葉(反応)である。自分はそういう惨めったらしい防御言葉は使わないし、相手の発言に言葉で反論する。なでしこ佐々木監督が選手に、「お前はオレをバカにしてるんか?」といったらしいが、これはもう指導者としての体をなさない。斯くの醜態丸出しの被害者面が、リオを遠ざけたといって過言ではなかろう。

少年が北川さんを背後から切り裂いたのは、被害者としての返報感情である。彼女の何がしかの言動が少年の自尊心を地面に叩きつけ、そういう女に報復を決意したのだろう。それも殺人という短絡さで。何で殺人なのか、を考えてみるに、こういう弱ったれ男は、人を蹴ったり殴ったりの勇気がないからで、殴る蹴る顔が怖い、生かして恨まれることが怖い。

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一流大学に入る学力はあっても、人間的には三流以下である。賢い人間がこんなことで人を殺すか?人を学力だけで判断するのが如何に間違っているか。少年はアスペかも知れない。アスペルガー症候群(広汎性発達障害)は自閉症の一種で、他人とのコミュニケーションや周りの空気を読むことを苦手とする一方、高い集中力や優れた記憶力を持つ例も多いとされる。

東大生4人に一人がアスペといわれる時代、"勉強オタク"とアスペとの関連の科学的論拠はないが、現実的に東大では対人関係スキルを身につけるためのアスペ対策セミナーを、全学生に向けて開催しているという。「好き」を告白し、断られて人を殺すか?そんな人間、三流どころではないが、看過できない現実である。問題を抉り出し、実体を探る必要がある。

告白を無碍にされて逆恨みするような自己愛所有の脆弱人間。「自分は有能な人間でありたい」。そう願っていた。自分は彼女(人)に好かれる人間でありたい。そう願っていた。そう信じたかったし、信じようとした。しかし、現実に彼女に嫌われてしまえば、自身の内に隠匿していた感情と直面せざるを得なくなる。現実にそういう事態になったときに噴出するものがある。

それは、必死に隠しておいた「実際の自分は無能でダメ男」というひ弱な感情である。それが浮き彫りになれば以降、真の自分の感情に向き合うべく絶望感・恐怖。禁欲から解き放たれた恋愛感情から体得した自己喪失。「やはり自分は人に好かれない」、「やはり自分は無能な男」そうしたやりきれない孤独感が、これまで積算してきたすべてのものを崩壊することと等価となる。

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己に自信を持ちたいなら、他人に好意をもてばいい。が、競争社会の現実のなか、フラットな人間関係は恋愛をよりどころとする。ところが、恋愛オンチの人間は、捧げる愛情より求める愛情が強い偏愛志向となり、これも自信のない人間の特質である。自信とは、他人の一挙一動にフラつくものではない。恋と自信は別にした方がいいのだが…

「フラれた女を殺す男をどうやったら止められる?」。という設問があった。それは無理だが、「フル男に殺されない方法」はある。告白を断るときに、「ごめんなさい。好きな人がいます。好意はうれしいけど本当にごめんなさい」と、必要以上になだめ、丁重に謝る。恋は一人勝手にやれるが、恋愛は相手がいる。それを高校の道徳で教えるか?こういう当たり前の事が分らないなら…


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