「ハニカミ王子」と「ハンカチ王子」。この二人の王子がマスコミの話題をさらったのはつい数年前のこと。昨今の斎藤・石川に対する声は、「なんで石川遼みたいな下手糞がもてはやされるの?」、「斎藤が一軍にあがれるのか?」など、"スポーツなんだから上手い奴がもてはやされないと駄目なんじゃないの?"の声、石川なんてマスコミから駆除すべきという声。
ハンカチ王子は正に半価値になり、ハニカミ王子も「駆除しろー!」の蜂の巣「ハニカム王子」的現況だ。実力がないのにもちあげられたのはビーチバレーの浅尾美和もそうだが、容姿に群がる日本人の特異性。確かにプロスポーツは客商売でもあるから、容姿も大事なのは不動裕理を見れば分る。アレだけ女子ゴルフ界を圧巻しても人気はなかった。
ゴルフのことは良く分らないが、石川と松山とは体格的にもメンタルの強さにしても明らかにモノが違うようで、その差が実力の差となっているようだ。石川が特別イケメンというわけではないが、愛称の通り、はにかんだ時の顔がおばさんに受け、視聴率がとれるからメディアも持てはやしたようだ。テレビ局の最大のお客様は選手ではなく、実はスポンサー。
そのスポンサーのご機嫌を取るためにも視聴率を上げるのが命題だし、スポーツ番組の視聴者といえども、ゴルフをやったり、野球をやったりばかりの人ではなく、一切やらないが観るのは好きというスポーツファンが圧倒的に多い。ただし、おばさんに人気で視聴率が支えられたとしても、長期的に見たらそのスポーツの人気自体は下降して行く。
それより何より、マスコミにもち上げられた若いアスリートはなぜか伸び悩んで消えていくのが多い。それが精神鍛錬の未熟な若さということか。最近ではサッカーの柿谷がいい例だ。CM、バラエティー、ファッション誌などに引っ張りダコ状態になり、以来絶不調になってしまったが、マスコミはそれでもなおプッシュを止めないのは、視聴率「命」だからだろう。
調子に乗る、乗らないは自己顕示欲などの性格にもよるんだろうし、錦織などを見ていると、マイケル・チャン・コーチなどが、キッチリと手綱を引き締めている部分もあるのではないか。サッカーや野球は個人との契約コーチはいない。ゴルフは個人コーチがいるが、石川はデビュー時から正式なコーチを持たず、現在も父親の手の平の上で踊らされているのでは?
「新聞記者OBが書くニュース物語」というブログがある。経済記者として財務省、経産省、日銀などを担当、ワシントン特派員経験もある中村仁という元全国紙記者が、2013年の退職を契機にブログ活動を始めた。経済、政治、社会問題などについて、メディア論を交えて発言しているが、その中村氏の2014年7月25日に「石川遼神話の終わり」という記事がある。
氏は石川のタレント人気にあやかるスポーツ報道の悪習を提言する。以下抜粋。「経済紙ながら日経はゴルフ報道に力を入れています。日経の読者である経済人、ビジネスマンにゴルフを趣味にしている人が多いからでしょう。全英オープンを前に1面を使って特集(7月14日)を組みました。一般記事で「怪物、松山、再び挑む」、「石川、猛練習で手ごたえ」と2選手にエールを送っています。
羽川豊というベテランプロの談話も載せ、「優勝争いを」と、読者の期待を膨らませる解説です。読売は17日に「石川、全英から飛躍へ。アンダーパー不可能ではない」との応援記事を載せました。結果はどうだったでしょうか。まず石川はなんと4オーバーで予選落ちでした。1アンダー39位の松山はプロに転向したばかりで、人気より実力でのしていくでしょう。」
とある。中村氏の期待(予測)通り、また多くのプロゴルファーの予想通り、松山は錦織同様、世界に通用する日本人アスリートとしての地位を着実にものにしている。特に松山はゴルファーに必要な体格に恵まれている点も大きいが、体格だけで世界は勝てない。中村氏は言う。「問題なのは、いまだに石川神話、石川人気から卒業できないスポーツ・メディアです。
現在22歳の石川選デビューは確かに衝撃的でした。高校生の時に史上最年少で優勝、史上最年少で賞金王(2009年)、高校生でプロに転向し、中年女性を熱狂させた甘いマスク、スマートな物腰で人気を独占し、ほぼ一人でテレビ中継の視聴率を何パーセントか引き上げました。天才的な素質、人気をかきたてる風貌を兼ね備え、「石川神話」が創造されたのです。
最大手の広告会社がぴったり張り付き、賞金金額よりも、提携企業からのスポンサー料、広告料のほうが何十倍も多く、年収を10億円単位で数え始め、「金のなる木」になるにつれ、おかしくなりました。親族もふところに飛び込んでくる多額のマネーに我を見失ったとみられます。多額の報酬の後には多額の税金が追っかけてきます。
その支払いのために、さらにスポンサー料、広告料が必要になり、本業がおろそかになっていったのでしょう。国内のトーナメントに出ずっぱりになり、毎週4日間の競技、その前日のプロアマ競技(主に提携企業の関係者とプロとのプレー)す。その間にコマーシャルの撮影がびっしり入ります。落ち着いて猛練習をすべき青年期の日々をそうした稼業のために費やしたのです。」
石川は高校在学中にプロデビューしたが、それは史上最年少優勝、史上最年少賞金王という華々しい記録づくめのものだった。尾崎将司にもレクチャーを受けるなどし、あのタイガー・ウッズも石川のデビュー前には、「先急ぎをせず、高校を終え、大学に進学した方が良い」とアドバイスを送っていた。が、父親の意向だろう、石川は貰いの多い"慌てる○○"となる。
中村氏は顔見知りの石川の父親について言う。「将来のことを考えると大学に進んで、人間的な幅を広げ、体力をつけるようにしたほうがよいと、父親に勧めました。そうすると、父親は手帳を広げ、『3,4年先まで予定がびっしり詰まっており、大学にいく時間がありません』というのです。そこで、「通信教育でも大学をでられますよ」と申し上げました。
父親は天才少年の将来性より、目先の稼業を優先する道を選んでしまったのでしょう。(中略) 金の卵を抱いて、何かを錯覚するようになったのではないでしょうか。『この子は学問でいうと、ノーベル賞クラスの実力を秘めている。次元が違うのです」というようなことをいいました。そこまでいいますかねえ。神話が崩れ始めるといろいろな批判がでてきます。
『この年で、もう記念館を作っている。何を錯覚しているのだろう』も、そのひとつ。5年ほど前、越後湯沢に「石川遼記念館」を開設し、優勝杯などを並べ、石川グッズのショッピングサイトも作りました。ホームページには、"26年5月、閉館しました"とのお知らせが載っていました。何があったのか知りません」。そんな中村氏は、石川再生の可能生は親離れと言う。
全英オープンに優勝したローリー・マキロイについて、テレビ解説者が興味深いエピソードを紹介していた。「マキロイは長い不調に陥った時、難民キャンプのボランティア活動に参加した。そこで、彼らに比べ、自分はなんて幸せなんだ、と悟った。その経験から、もう一度、自分を見つめなおし、ゴルフに新しい気持ちで取り組んだ」のだそうだが、いい話である。
中村氏のゴルフの腕前は知らないが、彼の人生経験を基にしたアドバイスと理解できる。自分も石川が21歳にして自伝を出版したのには驚いた。そのタイトルが、『石川遼自伝 僕の歩いてきた道』である。歩いて来た道と言ったところでまだ21歳である。これから歩いて行く年齢ではないのか?が、21歳にして、「きた道」と過去形にするわけだから、偉業を成したのだろう。確かにトーナメント最年少優勝、最年少賞金王は偉業には違いないが、それらの偉業は引退したからと言っても消えるものではないし、色褪せるものでもない。こういうところに彼の父親のはしゃぎ過ぎの面と、金銭欲の一面が伺える。人がどのように金儲けをしようが、息子自慢をしようが、文句をいう筋合いではないが、石川遼は実質そういう親の被害者ではないのだろうか?
他人のことなどどうでもいい、と言えばそうである。この親にしてこの子あり、親子は運命共同体であるから、遼が自分にとっていい父親というなら、それでいい。自伝は読んではいないが、レビューには時期早々の自伝に驚きの声は当然にしてある。成人を迎えたばかり人間が、はや自伝とは前代未聞である。この手のものは、苔が生える年齢で書くものであろう。
ゴルフジャーナリストの宮崎紘一は、「ゴルフ界の至宝・石川遼をダメにする『チームRYO』の許されざる蛮行」との記事で問題点を指摘した。『チームRYO』とは、コーチであり統括マネージャーである父親の勝美(56)をリーダーとするの面々で、「電通」のI、「ヨネックス」のU、キャディのK、トレーナーのN、大手マネジメント会社のKらで構成されているという。
金の卵石川に関わる広告代理店、用具提供メーカー、ゴルフシャフトメーカーが参入し、父親を除くと、いずれも30代から40代前半の若いスタッフ。そして金の卵を息子に持つ父親の不埒で傲慢な振る舞いが指摘されているが、石川遼が運命共同体と認識するなら余計なお世話ともいえる。自分に何が必要で、何を捨てるかは、20歳を超えた年齢なら行為していいはず。
人はチヤホヤされると腑抜けになりやすい。腑抜けとまで言わなくとも、逆境心などは育ちにくいだろう。「褒め殺し」という言葉もある。チヤホヤの石川には松山、斉藤には田中というアンチヤホヤがいた。田中の活躍は言うに及ばず。方やメジャー、方や2軍。アメリカでのゴルフも松山より一足早く参戦している石川だが、「後塵を拝する」印象はぬぐえない。
甲子園を沸かした斎藤佑樹と田中将大だが、年月を経て二人の差はあまりに歴然で、それが収入の差に現れている。そんな斎藤の存在をメジャーはどう見ているのか。「すべての球種が平均を下回り、まったく調査対象外。アメリカにもアマチュア時代に輝かしい実績を残したドラフト1巡目選手が伸び悩んだり、期待通りの成果を上げられない例は数多くある。
ただ、これだけメジャー(一軍)とマイナー(二軍)を往復しながら結果を残せない特定選手にチャンスが集中しては、競争の公平性が保てないのでは?それ相応の投資をした選手なら分かるが、彼の獲得資金は(契約金の)アベレージである1億円。そこまで彼に固執する理由が分からない」(ナ・リーグ球団関係者)と首をひねっていた。人気で取らない辛辣なメジャー。
最も甲子園人気など、あちらでは「?」である。斎藤佑樹人気の凋落の原因を、一流でもないのにスーパースターへと祭り上げられてしまったことが不幸の始まり、と断じるスポーツ関係者は多いが、「彼は作り上げられたスター」と分析するスポーツ関係者もいる。彼の大学での成績は決して悪くない。高校卒業後、早大に進学し、1年生からエースである。
数々の輝かしい記録を打ちたてながら4年生時の2010年秋には明治神宮野球大会でチームを大学日本一へと導くなど結果を残している。それだけに高校3年生時に成し得た全国制覇を「まぐれだ」と評してしまうのはさすがに乱暴過ぎだ。日本ハムの関係者も斎藤をこう擁護する。「確かに斎藤は高校の時点で能力以上の過大評価を得てしまったというところがある。
そうした声がプロ野球関係者の間で今も多々出ているのは事実だが、そこまでボロカスに言われるのもどうか。斎藤は頭のいい男。だからこそ高校日本一で“急造スター”となってしまったことも当時から自覚して危機感を覚え、多くのオファーがあったにも関わらずプロ入りの道を拒んで大学へ進学した。自分はそこまで持ち上げられるような選手ではない。
このままプロに進んではそれこそ1勝もできずに潰れてしまう。そう思い込み、彼はプロに入る前に大学野球で鍛錬を重ねて技術と人間性を磨こうと心がけたのです」。ただし、大学時代で斎藤にとって1つ誤算だったことは、佑ちゃんフィーバーが少しも沈静化しなかったことだ。「斎藤は“大学に進学すれば周りが騒がなくなるだろう”と考えていた。
ところが相反するようにフィーバーはより加速化してしまった。野球に集中したかった彼は、実はこれに大きく戸惑っていた」と前出の日本ハム関係者は代弁した。スターであるがゆえに周りからの要求は常に高く、がんばり続けてもそのステージに追いつかない。そういう悩みを斎藤は抱え込み、プロに入ってからもその葛藤は続いていたが、徐々に「免疫」もついた。
結果が出せないと叩かれるプロの世界で、それを繰り返すうちに開き直りの精神が芽生えていった。「大学時代までの斎藤は虚像のスーパースター。本人もすごく窮屈な人生を歩んでいたが、プロに入ってからは違う。現在までプロで結果は残せていないが、いろいろ苦しんだことで、背負わざるを得なかった過去の栄光を、いい意味で振り払うことができてきている。
「来年は先発ローテーションに入り、2けた勝利をマークしたい。気を引き締めてやらなければいけない」と来季への抱負を述べていた斎藤だが、これまで同様大言壮語に終わればプロ5年目でラストイヤーを迎えてしまう可能性もある。嫌われ者になったことで、やっと長年苦しめられてきたスターの呪縛から解き放たれ、肩の荷が下りたのは確かかもしれない。
石川と松山、斎藤と田中の対比は、身体的・精神的能力の差と言えるが、家庭環境の影響もあろう。親がマスコミに姿を見せない斎藤・田中はともかく、石川も松山も父親からゴルフを教わった。腕前の方は「日本アマチュア選手権」に出場するまでになった松山の父の方が遥かに秀でている。が、子離れをしないでいまだ金魚の糞状態なのが石川の父である。
傍からみると、息子の才能を遠方よりひたすら眺める松山父、金の成る木の息子に執着し続ける石川父。こういう環境の差がメンタルスポーツであるゴルフに影響していると、専門家は指摘もする。「金の卵であった…」と、石川の現状を過去形にするのは、上の中村仁だけではないようだ。