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Channel: 死ぬまで生きよう!
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名作『滝の白糸』に寄す ①

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13日にWOWOWで舞台中継『滝の白糸』があった。同作品は泉鏡花の『義血侠血』を原作とする新派劇で、映画やオペラ、テレビドラマなどに脚色されている。映画では1915年に第一作がつくられ、計6作品が製作された。今回の放送は2013年に舞台中継された唐十郎書下ろしの『唐版 滝の白糸』で、蜷川幸雄演出、大空ゆうひ、窪田正孝、平幹二朗らの出演で話題となった作品。

1975年に蜷川幸雄の演出にて初演された『唐版 滝の白糸』は、大掛かりな舞台装置を必要とすることもあって、大映・東京撮影所で行なわれた。1989年には日生劇場、2000年のシアターコクーンを経て、今回が4度目の上演となる。蜷川が死ぬ前に何としても再演したかった作品と述べていたという。その蜷川は2016年5月他界し、唐作品は初出演だった平も同年10月に他界した。

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2012年に宝塚歌劇団を退団後、女優として初舞台に立つ元宙組トップスター・大空ゆうひの主演に加えて若手の注目俳優窪田正孝も話題となる。唐版ということもあって、従来の『滝の白糸』とは内容がガラリと変わっているが、さすが唐十郎といえるほどに面白かった。『滝の白糸』といえば新派、新派といえば水谷八重子といわれ、劇団新派のサイトには以下の紹介がある。

『滝の白糸』は新派劇作家の花房柳外が脚色したもので、明治28年川上一座が駒形浅草座にて初演、翌年の暮れに喜多村緑郎の白糸役が賞賛を博した。昭和になり花柳章太郎、そして初代水谷八重子へと引き継がれ新派の当り狂言となった。劇中の水芸の華やかさ、卯辰橋の見染めの場、そして大詰の法廷の場面に観客は心を打たれる。八重子の初演は昭和15年3月東宝劇場だった。

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ストーリーを簡単にいえばこういうことだ。水芸を出し物とする寄席芸人一座の座長滝の白糸は、偶然にも経済的な苦境から東京で法学を勉強することを諦めかけていた青年村越欣弥とめぐり逢う。白糸は欣弥に惹かれ、彼のために学費を出すパトロンとなるも、教養も身分も違う欣弥と結婚を夢見てはいなかった。そんなことは欣弥の出世の妨げでしかないことを白糸は知っていた。

夏場に人気の水芸も冬場は見向きもされず、白糸は欣弥の学費の工面に苦労する。商売敵の南京出刃打の寅吉一座に刃物で脅され、欣弥に送る最後の金を奪われた白糸は、高利貸しに助けを求めるも、はずみで老夫婦を刺殺して金を奪う。現場に寅吉所有の出刃が残されていたことで寅吉は犯人と疑われた。見せ場は、晴れて検事代理として着任した欣弥と白糸が法廷での対峙場面。

寅吉は逮捕されるが、事件のことを一切知らないといい、金をとられたこともないと言い張る白糸が怪しいと供述し、自分の嫌疑を晴らそうとする。証人として出廷した白糸は金沢の法廷で欣弥と対面するのだった。白糸は法廷で3年前に浅野川の河原、卯辰橋の下で生涯を誓った或る男(実は欣弥のこと)に学費を送り続けているなどを話すが、男の名を断固秘す白糸のいじらしさ。

裁判長の尋問に白糸は、将来を約束もし、男も他人じゃないといい、手を取り合うも、「それは、あんまりお月様が綺麗だった上での浮かれた酔狂でした。だからあの時の言葉きりと思っております」という。それなら「なぜに三百円を超える送金を続けたのかと裁判長に問われた白糸は、「ですから幾度も申し上げております。すべては私の酔狂でございます」とにべもない。

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村越に真実の大切さを説かれた白糸は、凶行を自白した後に法廷内で舌を噛み切って自決し、後日村越も銃で彼女の後を追った。愛する男を一人前の検事にするための最後の仕送金を得るために殺人を犯した白糸は、愛した男によって至福の裁きを受け、死刑判決を受ける。彼女は愛する男に金も命も差し出すが、悔いなき僅かばかりの人生と、後を追った村越もその心は白糸と一つであった。

被告の援助金で法を学んだ検事が、その被告を裁くという不条理は、なんという運命の悪戯であろうか。男女の清くも美しき関係が観客の涙を誘わずにいられない。『滝の白糸』の人気の秘密はそうした古びた純愛である。『唐版 滝の白糸』には別次元の面白さがあった。映画では若尾文子が白糸役の1956年版が人気で、無罪となった白糸は村越と一緒になる設定も好評の要因であろう。

水芸芸人と法律家をめざす苦学生の切ない恋の終焉か、それとも観客に至福感を与えるハッピーエンドか、泉鏡花もさすがにビックリの後者の脚色である。原作の小説『義血侠血』は短編であるために映画化するに当たり、創作部分の挿入は止むを得ないが、これほどのどんでん返しも可能となる。映画があまりに悲惨に終わってしまっては観る側の感情は昇華されないこともある。

どちらの結末も甲乙つけがたい魅力に溢れるが、いずれにせよ白糸と村越の二人は人間として芯の通っているところが魅力的である。自分を守るためなら嘘もつくし、何でもべらべらと喋る女にあって、「お月様があまりに綺麗だったので、つい浮かされての酔狂だったんです」という白糸はたばかった物言いをするが、「酔狂」なる言葉に真に男を愛する女の情念としての美をみる思い。

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