Quantcast
Channel: 死ぬまで生きよう!
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1448

五賢人 加藤諦三 ①

$
0
0

イメージ 1

五賢人が四人で中断、残るは加藤諦三。堀秀彦、林田茂雄、坂口安吾、亀井勝一郎を知らない世代も昭和生まれの加藤諦三なら知るだろう。「明治は遠くなりにけり」といったのは俳人の中村草田男で、「降る雪や明治は遠くなりにけり」(昭和6年作)と詠んでいる。昭和時代に明治は遠いといったのだから、令和になれば、「昭和は遠くなりにけり」であろうか。

明治元年は1868年(1868イイヤロヤと暗記)だが、昭和元年は西暦何年?といわれても知っていれば1926年である。ついで平成元年が1989年、令和元年が2019年となる。始まったばかりの令和だから馴染は薄いが、いきなり、「平成は何年まで続いた?」と聞かれて困ろうか?正解は31年だが、こんなことすら忘れてしまうほどに平成とは無縁になってしまっている。

平成元年が昭和64年ですら忘れてしまう。昭和64年は7日の短命だった。子どものころ、大正15年が昭和元年である意味が理解できなかったのを覚えているが、平成元年と昭和64年が同じである意味を理解できない子に対し、親は親切に紙に書いて子どもに説明したほうがいい。肌で覚えた知識というのは忘れないもので、同じ知識でも関連づけて意味を知るのがよい。

加藤は自著で自身の青春期の苦悩や闇について書いているが、書かずに自身を認識することはできない。加藤は高校生時代の日記を『高校生日記』とし、ママのタイトルで刊行している。初出は1965年だから加藤が27歳で、儲かるから何でも本にしてしまおうではなかろう。加藤の初出版書籍は、昭和39年に刊行した『あやまちだらけの青春』(朝日新聞社)である。

イメージ 2

以降凄まじい出版を重ねている。1960年代に12冊、70年代に29冊、80年代に44冊、90年代には49冊とうなぎ上りに上昇。そんな加藤に噛みつき、文句をつけたジャーナリストが田原総一朗。あまりに世間受けの良い加藤が気に食わないのか、何が問題というのか、田原は1972年3月号の『現代の眼』(現代評論社刊)のコラム、「続・現代虚人列伝」で加藤批判をする。

「すりぬけ論理の虚弁教祖」と題した8ページに及ぶ批判は中身が薄い。田原は『朝まで生テレビ』で知名度を上げたが、1972年当時は東京12チャンネルのディレクターで、開局したばかりの同局はインディーズ的存在であったが田原の、「やらせ的演出によっておきる、スタッフ、出演者、関係者に生じる葛藤まで全て撮影する」という手法で話題を呼ぶ。

71年には桃井かおりを主演に起用したATG映画、『あらかじめ失われた恋人たちよ』の制作・監督を務めたが、共演者の石橋蓮司や緑魔子らには無能監督呼ばわりされていた。物怖じしない特質性格の田原は、規制の価値を壊すことに長け、そこを自身の生き場としていた。田原は加藤との対談を前に彼の著作『俺には俺の生き方がある』を一冊読んで向かったという。

三浪して東大に入った加藤は、浪人生という汚名を痛感した人物。「浪人生」とは職を失った武士の「浪人」と同じ記述で、浪人生というだけで人生の落伍者といわれた時代であった。加藤は東大受験を失敗した直後の日記に以下のように書き留めている。「世の人達が騒いでいる優秀な人とか秀才というのは、ただ彼等が運がいいか、悪いかではないだろうか。

イメージ 3

俺がもし人より優れたる人となるならば、それはなにも俺のためではなくて、運がいいからだ。もし今自分が、父母なくして一人で世の中に生きていかねばならない境地に追いつめられたら何が東大であろう。(略)ニーチェが病苦と共に、人生に打ち勝ったように、俺は浪人とともに人生に打ち勝ってみせる。(略) すべてに覚悟せよ。もう思い煩うのはやめろ!」(『高校生日記』)

田原が加藤との対談前に資料として読んだ加藤の著書『俺には俺の生き方がある』の前書きにはこう書かれている。「はじめにことわっておこう。僕は無名の青二才だからこそ、この本を書かねばならなかった。どうしても書かねばならなかった。幸か不幸か、僕は優秀じゃない。人生論を書いているようなエライ先生でもない。女性にもてる男でもない。

しかし、僕は強烈な自己というものをハッキリと感じるようになってから幸福になった。誰の人生でもない。僕自身の人生を生きるようになってから僕は気持ちが落ち着いた」。(以下略) 当時の加藤は二年前に大学を卒業し、大学院2年生在学中であった。しかし、のっけの記述も加藤的で加藤らしい言葉に溢れている。彼は『高校生日記』の後書きにもこう記している。

「受験に生き甲斐を感じる人間は、おおいに受験をやれ。人がエゴイストだ、点取り虫だ、などといったってかまわない。徹底的に受験に没頭することだ。人のいうことなんか気にしていたら青春は味わえぬ。受験がくだらぬと思う人間は、決して受験などやるな。クラブ活動でも何でも他のことをやることだ」。このように加藤の記述は、主体的自由意志に貫かれた論調が多い。




Viewing all articles
Browse latest Browse all 1448

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>