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心に残る曲 『サルビアの花』 もとまろ

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『サルビアの花』を初めて聴いたときの高揚感は忘れない。『時代』も『屋根』も同様だったが、さだまさしは初めて『時代』を聴いて、「別の宇宙すらを見る思い」とまでいってみゆき才能に絶句したという。『サルビアの花』の詞の内容は、好きになった女性を諦めきれず、結婚式に乗り込んで花嫁を奪って逃げる。これは映画『卒業』から影響を受けたものと思われる。

『サルビアの花』という楽曲から初めてサルビアの花の存在を知った。いや、サルビアという花の名前だけを知った。実際にサルビアを見たのは何年も何十年も後だった。『サルビアの花』という楽曲があったからといって、サルビアを見たいという気持ちは起こらなかったし、花そのものへの関心はまるでなかった。男は一般的に「花オンチ」で「花より団子」である。

花になんか興味がある男の子は正直キモイ奴だと、勝手な男イメージを抱いていたが、周囲にそんな男はいなかった。♪パンジーパンジー三色すみれ、と歌われる『夢見るパンジー』は昭和37年のヒット曲だが、花オンチの自分がパンジーなんか知るわけもなかった。やはり物心つくまでパンジーを見たことも見る気もなかった。たまに女性で花オンチもいるようだ。

懐かしの映画『卒業』(1967年制作)の花嫁強奪シーンはカッコイイが、『サルビアの花』の詞では、♪泣きながらキミのあとを追いかけ、花ふぶき舞う道を転げながら彼女を追って走りつづけたとある。場面の状況を想像するに、なんとブサイクな醜態であろう。どうにもアメリカ映画のスマートさにはひけをとってしまう。日本人に『卒業』のような映画を作ることはできない。


作詞の相澤靖子は、作曲の早川義夫とは高校時代(神奈川・和光高校)の友人のようで、おそらく映画『卒業』に憧れていたのだろう。早川はジャックスというバンドで有名になるが相沢はこの曲以外の作詞を知らない。サルビアの花を窓から投げ入れたいとあるが、何でサルビアの花なのか?後に花を見て分かったことだが、真っ赤なサルビアの花は情熱の証ということなのか。

が、紫や青のサルビアもあるようだが、そんなことはどうでもいい。この男は彼女の部屋にサルビアを投げ入れたく、サルビアをベッドに敷きつめて彼女を死ぬまで抱いていたいなどと、なんのこっちゃでこの詞は…。甚だしき女の自己妄想というしかない。逆さに吊るされて鼻血はでようとも、こういう詞の発想は浮かばないだろうの自信がある。ならばこれも才能か?

あげくこの曲は性行為を望む歌だといわれ、ホンマかいなのあんりゃビックリだ。一体どこに性行為の描写がと思いつつも、「サルビアの花をあなたの部屋に投げ入れたい」の歌詞がその比喩表現であるらしい。何を想いながら歌詞を作ってもいいが、そんなことを独善的に比喩で表現されて誰が理解に及ぶ者がいる。暗に述べているとはいえ、意図を聴いたらつまん曲になる。

歌った三人の女子高生はそんなことは夢にも考えてないだろう。作詞の相澤は作曲の早川にそのような暗示をしたのか?もとまろのメンバーである三人は、青山学院高等部に在学中にTBS『ヤング720』の番組スタッフに、番組のコーナー『フォークグループ勝ちぬき歌合戦』に出場することを進められて出場して5週勝ち抜いた。その後にレコードデビューを飾る。

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『サルビアの花』は5週目に歌った曲。レコードデビューをしたものの本人達はプロになる気がまるで無く、『サルビアの花』一枚だけをリリース、大学進学に合わせて解散した。三人の名は海野圭子、山田真珠美、織間千佳子といい、ネット情報による近況として、海野圭子は現在結婚して姓は松本となっており、エッセイストの玉村豊男経営のワイナリーで働いている。

山田真珠美はもとまろ解散後、1972年10月8日に開催された『第4回ポピュラーソングコンテスト』に、「びっくり箱」のメンバーとして出場、『カーニバル』という曲を演奏した。現在音楽に携わっているかは不明。織間千佳子についての情報はまったく分かっていない。レコードジャケットには当時の三人の姿が映っているが、どの子が誰なのか分からない。

早川は自著に以下のエピソードを記している。2003年、もとまろのメンバーだった海野圭子はライブハウスで早川のオリジナルに衝撃を受け、アンケート用紙に以下の記入をした。「はじめまして。18才の頃『もとまろ』というグループで『サルビアの花』を歌わせていただきました。初めて本物のサルビアを聞き頭をガーンと殴られた気がしました」。早川は感謝の礼状を出したという。

男の心情を歌った曲だがこの曲は女性歌唱が合う。自分も初めて早川の『サルビアの花』を聴いた時はあまりのショックで、以後は彼の歌唱では聴きたくない曲となった。多くの女性歌手によってカバーされているが、早川の他にも甲斐よしひろ、井上陽水、あがた森魚ら男の声で聴けるが、彼らが歌いたい気持ちとは別に、男の歌唱が曲の情緒を壊してしまっている。

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