ある場面で頓智が利くのも洒落たジョークが出るのも頭のよさであろうか。アメリカの第40代大統領のレーガンが大統領に就任して間もない頃、銃で狙撃され救急病院に運び込まれた。弾丸摘出手術前に、レーガンは医師たちに向かってこう言ったという。「ところで、あなた方はみな共和党員だろうね?」。何ともウイットのあるジョークセンスに、大統領としての人気は一気に高まったという。
これも機転というのだろう。このような状況にありながら、気の利いたジョークがいえるほどのユーモア精神に満ちた人はなんと魅力的であろう。アメリカ人のユーモアはひとえに国民性といえ、ユーモアセンスのないアメリカ人は、アメリカ人にあらずといわれるほどに大統領であれ、大企業のCE0であれユーモアは必須であるが、日本人のユーモアセンスの無さもまた国民性tいえよう。
日本人は娯楽としての笑いは愛好するが、日常生活の中でユーモア感覚を働かすことはあまり得意ではないようだ。というより、さまざまな場でユーモア発言をしようという発想がない。極度なまじめさが尊重されることもあってか、社会生活の中にまぎれこむ笑いは、“不真面目なもの”として排斥される傾向にあるようだ。確かに日本人は、「竹を割ったような性格」を好むところがある。
そこには、ユーモアは住みにくいということになろう。日本人なら真面目に受け答えする場面で、アメリカ人が気の利いたジョークをいうなどは頭の良さと感じられる。これはもう唐突で断片的な、“おやじギャグ”とは似ても似つかぬ異質なもの。日本人が物事の二面を見たりうっとうしい天気を素敵な天気としたり、直進する道の他に曲がった道はないかとか、大は小と言い換えるのは天邪鬼性である。
ユーモアというより、したたかさであり、ひねくれた僻み根性的ないやらしさといえなくもない。勤勉で生真面目な日本人の国民性にユーモアが磨かれることはおそらく今後もなかろうし言わぬが花かも知れぬ。大統領といえばケネディの演説は定評があった。記者会見席でも唸らせる言葉を述べたが、彼が大統領選に出馬したとき、他の候補を推すトルーマン元大統領はケネディにこう諭した。
「あなたはまだ若いもう少し辛抱して待つことを要請する」。ケネディはこう反論した。「トルーマン氏は若い人間を信頼できないというなら、ジェファーソンは独立宣言を書いていなかったし、ワシントンは大陸軍を指揮していなかったろう。マディスンは合衆国憲法を書けなかったし、クレイは下院議長にはなれなかった。コロンブスもアメリカ大陸を発見していなかった」。
ケネディは事実を述べてはいるが、根底にはアメリカ人のユーモアセンスが言わせる言葉といえよう。もし日本人が老害どもから若さを責められたなら、ムキになって若いことの良さや素晴らしさを強調するだろうが、これでは脳がない。日本人の生真面目さというのは、「お前は何でハゲなんだ?」と皮肉もどきに聞かれたさいに、「遺伝だからしょーがない」と答えるだろう。
嫌なことを聞かれて腹立ち半分に応えるより、「お前には髪が似合ってそうだが、どうも俺に髪は似合わないかな~」などとブラックジョークで返せば相手を面食らわせて楽しめる。ハゲと小舟で釣りに出かけた友人が、「お前はハゲ(ハギ)でも釣った方がいいんじゃないか?」といったところ、舟から突き落とされたという。ハゲは禁句だが、それを禁句にさせないのが度量。
レーガンは暴漢に狙撃され、命までも失いかれないというネガティブな事実を、プラスに持って行ったのはお見事。昭和35年7月14日、後継首班が池田勇人に指名された直後、岸信介元首相(安倍総理の祖父)は暴漢に刺された。その際、「早く医者を呼べ、早く…」と必死に喚き散らしていたというが、発した言葉が悪いとはいわぬまでも、人間的な器を感じさせられるのは自分だけであろうか。
頭の回転にいいのはダジャレとなぞかけといわれるが、それとは一線を画す品のあるジョークには教養すら感じられる。上手い言い回しや気の利いた比喩もしかりで、頭を良くするにはこれらを好きになることだ。ブラックジョークがいえる人ほど頭の回転がよく、それを言う事によってさらに脳を鍛えれるらしい。議論や言い合いなどの際に罵倒のバリエーションが多い人ほど頭がよい。
つまり、日々の脳の鍛え方で頭の回転はトレーニングが可能である。タダの悪口しかいわない人・いえない人は、いわぬ人よりバカに思えるが、罵詈雑言がその人の品位を落しているということだが、しかも本人が気づいていないところが憐れである。IQの高い人ほどブラックジョークを好むという研究結果もあるが、「皮肉屋はボケ易い」というマイナス面もあるので注意。
最後に、「頭がよくて得すること」ってあるのだろうか?頭がよければ仕事ができる。仕事を効率よくこなす。何かトラブルや難問があった時にしっかりと考え解決策を導きやすい。「stay hungry, stay foolish」。これは有名大の卒業式でのジョブズの言葉。スピーチの最後の一言なので全体を見る必要がある。彼は、「自分の信じた道を突き進むバカになれ」といったのではないか。