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小学生名人vs中学生名人

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イメージ 14月29日に行われた2018年度「第43回小学生名人戦」で優勝した西日本代表の間悠亜(とい・ゆうや)君(福井県永平寺町松岡小4年)が、奨励会6級に合格した。入会試験は大阪の関西将棋会館で8月17日に行われ、間君は名人戦優勝を受け1次試験が免除、2次試験の奨励会員3人との勝ち抜け戦に臨み、1人目の対局で勝利した。その後の作文、面接試験などを経て合格の通知があった。

22日からの奨励会での初対局に臨む間くんは、「いろいろな戦法を勉強してオールラウンドな戦い方ができるようになりたい」と話す。四段になれば福井県初のプロ棋士誕生となる。間くんが初めて本格的に将棋の指導を受けた石内奈々絵さん(34・福井市)は、将棋ファンなら知る元奨励会員で、1998年9月に関西奨励会に6級で入会。翌1999年7級で退会した。

彼女は自身の奨励会経験から、「プロへの第一歩として奨励会入会はチャンスだが、入ってからが大変。強い子ばかりなので、くじけず上を目指す強さが必要」と間君にエールを送った。石内さんは奨励会退会後は、アマチュア棋士として華々しい活躍を見せ、アマ時代の里見加奈さんにも勝利して、「女流アマ名人」、「アマ女王」の二冠に輝いたこともある。

現在は一児の母の傍ら、自身が考案した紙製の子供の知育教材、「きょうりゅうしょうぎ」を商品化した知育教材開発部の社員として、商品や教材を利用した教室やイベントで活躍中という。小学名人戦の準決勝・決勝では相手の攻めを冷静に受け流し、勝負どころを見逃さずに決める将棋センスに、対局を解見守ったプロ棋士も、「まるで大人のよう」と絶賛した。

間くんと将棋との出合いは幼稚園のころに父から教わったが、面白さに目覚め、めきめき力を付けた。攻め急ぎがちになる子どもたちの将棋の中、相手の攻めをどっしり受けつつ攻守のバランスが取れた指し方は、「子ども離れしている」と現指導者の中屋光太郎六段(28)。この日、大盤解説したプロ棋士の中村太地王座も、「大人のような指し方」と、その冷静さを称えた。

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誰もその子の将来を予測できないが、8月22日の記事に書いた市岡真吾くんも2年前の小学生名人戦で同じ四年生で優勝、奨励会7級入会したものの成績が振るわず強制退会となった。これについては三通りの見方があろう。①本人の才能の欠如、②努力不足、③指導者の問題となる。①と②は不明だが、③についての意見はあるようだ。指導者とはアマ棋界最強の早咲誠和氏。

彼の将棋については主観的な様々な評がある。しかし、大変な努力家であったのは間違いない。同郷の故杉崎里子氏によると、早咲氏が将棋を覚えたのは中学に入ってからで、熱病のように将棋の魅力に取りつかれた彼は、将棋年間の棋譜をすべて暗記していたというから求道者的なところもあろうか。まあ、アマ強豪といわれる人なら将棋は飯より好きというのは普通か。

「求道的変人」というが、一つことにはまると普通でなくなることがある。普通が無難を示すなら、無難は可もナシ・不可もナシ。よって、可もアリなら普通ではないことになる。加藤一二三や、桐谷広人予備軍はいくらでもいるし、お二人も周囲を気にしないで我が道を行くタイプだった。棋士に社会性はそんなに必要でない。早咲氏には、「早咲名人の将棋のきまり」という格言がある。

 ・「相○○なら、先に攻める方が良い」
 ・「玉頭は手厚く」
 ・「自分の駒台に金をのせる」
 ・「玉頭をねらう」
 ・「自分の駒台に金をのせ、相手の駒台に銀や角なら、勝つ」
 ・「定跡は覚えなくていい(将棋は生き物)」
 ・「先を読まない(バランスだけで指す)」
 ・「自陣角は死んでも打たないこと(角は敵陣に打ち込むもの)」
 ・「戦う相手とは自分、いつも自分と指している」

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など、独自の見解を持っており、早咲玉の考案者でもある。そんな師に影響されてか、市岡くんもタブレット使って、飛車と角の位置を入れ替えるなどの「独創的」な勉強していたようだが、奨励会に入ってすぐにBに落ちてそのまま退会というのは、プロには向かなかったというのが早い段階で分かって、それはそれで幸せだったということにはなろう。物は見方で変わる。

奨励会三段まで行けるというような、中途半端な才能が一番いらないということも言えるが、才能なのか努力なのか見極めは難しい。ハッキリといえるのは、将棋が多少強くともプロにはなれない、不向きだということになる。それでも努力を積み上げて再挑戦した瀬川や今泉の事例もある。彼らは好きな将棋で飯が食えるならそれでよく、タイトルに無縁であれ悔いはなかろう。

我が郷里の代表棋士といえば升田幸三である。今では同郷の棋士は多いが、同世代的には桐谷くらいだった。桐谷は升田の唯一の弟子で、当時彼は多くの棋譜を暗記し、「コンピュータ桐谷」と呼ばれた。升田は弟子志願の桐谷に、「ワシの弟子になったらいじめられるだろうが、辛抱せい」といったというが、独創的な升田将棋とは正反対の桐谷をたいそう可愛がったという。

さて、今年度の「第43回中学生名人戦」では初の女性名人が誕生した。富山県富山市出身の中学3年生野原未蘭さんである。彼女を指導するのがアマ強豪の鈴木英春氏。彼は元奨励会三段で1981年に年齢制限により退会となったが、その時のことがNHK『勝負~名人への遠い道』と題されてドキュメンタリーとして放映され、奨励会のことが世に知られるきっかけとなった。

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後に英春はアマで活躍するが、升田将棋を愛した彼は英春流という常識と定跡破壊戦法を考案した。奨励会時代も独創升田将棋に傾倒するあまり成績があげられなかったと察するが、アマチュアで彼の独創性が開花した。英春を師と仰ぐ野原さんは英春流一辺倒のようだが、小学生名人間くんの、「なんでも指しこなせる棋士になりたい」という柔軟性はない。

「英春流を継ぐ者は彼女。タイトルを取ってほしい」と後継者に期待を寄せる鈴木氏だが、アマ考案戦法の後継者などと言われては、野原さんが英春流外の戦法をやりにくくなろう。拘束などせずに、たまに英春流も指す程度が真に彼女のためと考える。プロ棋士にも「〇〇流」はあるが弟子におしつけることはしない。先日、TV特別棋戦で羽生竜王が立石流を採用した。

慣れない戦法に佐々木六段は時間を使うも羽生竜王を撃破。プロ棋士考案戦法には、森下システム、藤井システム、中座飛車、鷺宮流、横歩取り中原流、加藤流、青野流などがある。全国中学生のトップに立った野原さんが目指すは女流棋士、片や小学生名人は奨励会。小学生名人と中学生名人なら中学生が強いハズだがそうも言えない。彼女は奨励会受験をしないのでは?



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