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子どもの貧困対策 ②

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『貧乏は遺伝する』の記事に書いたが、現段階では「子ども食堂」を各地でつくろうというムーブメントが各地で盛んのようだ。食に困っている子どもたち、あるいはひとりでご飯を食べている子どもたち、また、母子(父子)だけでさびしく食べている親子が、子ども食堂にやってきて楽しくご飯を食べる、そんな取組だ。ホームレス支援の「炊き出し」にあたる。


すばらしい取り組みである。そのことで子どもたちに笑顔が生まれ、それを見る大人たちも幸せな気持ちになり、さらには子どもたち自身が、「孤独ではないんだ、助けてと言ったときに助けてくれる大人たちがこの社会にいるんだ」と思えるようになる。同時に、関わる大人たちも、自分が生活する地域を変えていける、そんなきっかけになるのではないだろうか。

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無料学習支援なども広がっている。居場所づくりと学習支援、これが子どもの貧困対策の主流となりつつある。相互扶助、助け合いの精神は、ヒューマニズムの観点から尊いものであるが、これだけでは不満である。納得もできかねる。憲法25条の条文が過ぎる。1.すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。これは生存権を謳った文言だ。

生存権を簡潔に言うと、人間が人間らしく生きる権利のことである。人間が生きることそれ自体は「生命権」という問題だが、生存権とは、人が一定の社会関係のなかで、健康で、そして文化的な生活を営む権利がある。それが憲法に保障されている。これらは国家の社会保障制度で補うものである。つまり国民の権利は国家・政府の義務によって支えられる。

生存権は子どもの貧困だけではない。2015年5月29日東京都526人を皮切りに、全国13都府県で「年金支給額の引き下げを憲法違反とする集団訴訟」が始まった。これは年金法で定められている年金のデフレスライドの実施や、年金財政を安定化させるための給付抑制が、最低生活を保障する憲法に反するという主張だ。この集団訴訟の主要なポイントは以下の3点にある。

第1は、個人単位の国民年金の給付額は、40年加入で月額6.5万円、平均ではわずか5万円に過ぎず、これで単身者の生活が保障されるものではないだろう。その上、無年金者が100万人も存在する。第2に、過去のデフレスライド停止分の利得返済(特例水準の解消)は、物価上昇の中で解消するべきで、物価下落局面での年金支給減額は法律違反である。

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第3に、年金の実質減額(マクロ経済成長スライド)は、憲法で禁止されている、合理的な理由なく財産権を侵害する行為に相当する。というものだが、中身を精査してみると、本シルバー訴訟には以下の3つの視点が欠けている。①そもそも公的年金は、憲法25条に基づく生活保護のような最低生活保障ではなく、給付と負担の均衡原則に基づく「保険」である。

②公的年金の受給者が、過去に支払った保険料に対応する財産権を持つとしても、それは現実の給付額の一部に過ぎない。実際には、勤労者世代の財産に強制的に課される社会保険料・税を財源とした、多くの世代間の所得移転を受けていることである。③低所得階層の所得維持のための給付引き上げは、結果的に中・高所得層の年金受給者にも大きな利益となる。

現制度では大雑把に、月1万5590円の国民年金保険料を40年間負担すれば、65歳から月6万5008円の給付を、約20年間(男女の平均寿命)受け取れるが、給付額の半分が税金からの補助で賄われている。これは生涯負担の倍近い給付を保障する高収益の金融商品といえる。それでも高齢者の生活支援に不十分なら、当然にしてそれに見合った高い保険料が必要になる。

ところが保険料の負担増には反発が大きい。それと、無年金者や満額以下の年金しか受給できない受給者が多いという問題については、給与から保険料を強制徴収されるサラリーマン以外に対し、保険料を強制徴収が不完全な年金行政の問題にある。相互扶助の問題として若い時に率先して年金を払わず、貰う時期になって「少ない、足りない」はいかがなものか。

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集団訴訟のポスターには、「若者も安心できる年金制度を」と謳われているが、これは「年金給付拡大の恩恵は、いずれ若者が高齢者になれば受けられる」という前提に依存している。しかし、これは人口の年齢構成が将来も不変という、少子高齢化社会と矛盾した前提に基づく根本的な誤りであろう。確かに、高齢者はそれほど多くの年金を貰っていない。

が、しかし、過去40年間に男性の平均寿命が11歳伸びるなど、長寿化による生涯の年金受給額の増加が重要である。現在の年金制度は500兆円強の積立不足(隠れ債務)が存在しており、この額は日本のGDPの額を上回っているが、現在の高齢者の年金給付が問題なく行われている現状は、勤労世代の積立金を取り崩すことでなんとか賄われているに過ぎない。

集団訴訟のポスターには、「若者も安心できる年金制度を」と謳われているが、これは「年金給付拡大の恩恵は、いずれ若者が高齢者になれば受けられる」という前提に依存している。しかし、これは人口の年齢構成が将来も不変という、少子高齢化社会と矛盾した前提に基づく根本的な誤りであろう。確かに、高齢者はそれほど多くの年金を貰っていない。

が、しかし、過去40年間に男性の平均寿命が11歳伸びるなど、長寿化による生涯の年金受給額の増加が重要である。現在の年金制度は500兆円強の積立不足(隠れ債務)が存在しており、この額は日本のGDPの額を上回っているが、現在の高齢者の年金給付が問題なく行われている現状は、勤労世代の積立金を取り崩すことでなんとか賄われているに過ぎない。

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自分も年金受給者である。65歳になれば満額を自然に受け取れるものだと思っていた。が、社会保険庁から以下の問い合わせが来たのに笑ってしまった。65歳給付を1年遅らせて66歳にしていただけるなら、年8%の増加させますというもの。なぜ笑えたかといえば、仮に支給額が月額20万円として年間240万。それに対する8%増加分は年額19.2万円となる。

年額19.2万なら10年でも192万円ではないか。そのために1年間の240万を貰わないで果たして得なのか?損なのかは、人によって違うだろうが、数字上でいえば、11年以上生きられたら月に1.6万円づつ得をする計算になる。選択の問題であろうが、自分は少し笑ってそれを選択しなかったということ。子どもの貧困ばかりではなく、高齢者の貧困問題もないわけではない。

昨年6月30日、新幹線車両内でガソリンかぶって焼身自殺した男がいた。黒焦げ遺体の運転免許証で東京都杉並区・林崎春生容疑者(71)と判明した。彼は犯行前に年金受給額の少なさと保険料や税金の高さに怒りをぶつけていた。林崎容疑者と40年来の付き合いのある男性は言う。「今春ごろに空き缶回収の仕事を辞めて、6月から年金生活と話していました。

『年金が少ない』とよく言っていて、滞納があったのか、国保や住民税で6万円も払わないといけないと怒っていました。『区役所に縄を持って行って首を吊ってやる』と言っていたし、実際、区役所に行って自殺の話をしたら、職員から『本当にそんな覚悟があるんですか』と言われ、ハヤシさんは、『お前も一緒に死んでくれるか』と言い返したと話していました」。

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林崎の居住する杉並区の生活保護基準は14万4430円で、生活保護受給者は、国民健康保険や住民税などが減免される。林崎容疑者は35年間真面目に年金を納めたにもかかわらず、生活保護水準以下の12万円の支給しか受けられない、「下流老人」だった。アパートの大家によると、1年ほど前に「生活が苦しいから家賃を下げてほしい」と言われ、千円下げたという。

ただ、支払いは2カ月分のまとめ払いだったが、「遅れたことはなかった」と話す。貧困に苦しむ高齢者の実態を記した『下流老人』の著者で、生活困窮支援のNPO法人「ほっとプラス」代表理事の藤田孝典さんは言う。「彼は典型的な下流老人です。現役時代の収入が多くなく、貯蓄も底をついた。生活の助けを求めることのできる家族や友人関係もない。

こういった人たちが、いざ年金だけで生活する年齢になると、突然貧困層に落ちる。これはまれなケースではなく、私の試算では、高齢者の9割が下流老人になる可能性があります」。戦後日本人の典型といえる林崎容疑者の生い立ちは、この日本を支えてきた高齢者や老人にとって他人事ではない。政府や自治体がやる子どもの貧困対策が、居場所づくりでいいのか?

よって、この世帯の経済的な問題や複合的な問題を解決が急務となる。2015年12月21日、政府はひとり親家庭などに支給している児童扶養手当の加算額を増やす方針を決めた。現行では2人目の子どもに月5000円、3人目以降に3000円ずつ加算しているが、それぞれ所得に応じて最大で10000円、6000円に引き上げる。2人目の増額は36年ぶり。3人目以降は22年ぶりとなる。

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児童扶養手当は現在、年収130万円未満で子どもが1人の場合、満額の42000円が支給され、保護者の年収に応じて減額される。2人目以降の加算額は固定で、10000円から3000円の範囲で変動させる仕組みに変える。費用の3分の1を国、残りを地方自治体が負担する割合は維持する。塩崎恭久厚労相は、「特に低所得の人に配慮した。限られた財源の中で最大限の拡充を図った」と述べた。

そこに補助金をつけることで、子どもの貧困対策は事足れるのだろうか。子どもの貧困とは、子どもが育つ世帯の貧困であり、子どもの親たちの貧困問題である。多くが非正規や不安定就労、無職などで、子どもたちの育ちに十分な経済的な余裕がなく、あるいは長時間労働で子どもと過ごす余裕がないなどして、孤立している世帯の問題と言わざるを得ない。

この児童扶養手当の増額により、ひとり親家庭の貧困率が54.6%から3%削減されるという。80億円の予算で3%、それだけ厳しい状況であるのが分かるが、スズメの涙の5000円増額でも、子どもの10日分のおかず代になることを考えれば、十分とはいえないにしろ助かるはずだ。さらには女性の賃金を上げること、非正規労働を正すことも今後の課題である。 


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