ナイト会長のいう「エモーショナル・タイ」は、自分の感情と相手の感情を結ぶ絆、感情のつながりで、エモーショナル・タイを作りだすのがスポーツマーケティングだとナイトは言う。革命的な高性能シューズと、斬新な広告・マーケティング戦略で、ビジネス、スポーツ、大衆文化の世界を塗りかえたナイキの成功は、「JUST DO IT」の精神をモットーに挑戦し続けたナイトの強烈な個性にあった。
「JUST DO IT」は、世界中で知られているナイキのキーワードだが、"エモーショナル・タイ"も、創業者ナイトにとっての大切なキーワード。初めてナイキを知ったころ、あの珍妙なロゴマークに違和感があった。当時はアディダスの栄光の三本線全盛の時代、トレーニングシューズは三本ラインが断然カッコよかった。タイガーオニツカのシューズのラインも好きではなかった。
アディダスのスッキリ三本線に比べて数も多くてダサく、広島カープや西武ライオンズがタイガーオニツカ製スパイクを採用し、だんだんと慣れてきた。読売ジャイアンツの黒に白の三本線のアディダスがオーソドックスな風合いを見せていた。長嶋や王が個人的にアディダスとスポンサー契約ではなかったようで、その後、松井などはミズノ製の「M」ラインなどを履いていた。
トップアスリートと契約する事で、自社の商品をアピールしていく方法は、以前からあるにはあったが、これをスポーツマーケティングと定義したのは、ナイキのフィル・ナイトが初めだったのでは?それが最も成功した例が、マイケル・ジョーダンとの契約である。 ナイキ=ジョーダン、ジョーダン=エアなら、ナイキ=エアとなり、A=B、B=CよってA=C、の有名な三段論法だ。
ナイキ⇔エア⇔ジョーダンの素晴らしき三角関係。 ナイキのエアを知らしめるために、これほど見事なマッチングは、他の契約選手では不可能であったろう。とにかくジョーダンがジャンプをし、浮き上がるようなプレーに、NBAの試合を中継するアナウンサーも、観衆も、「THE AIR」と叫んだ。 さらにはゴルファーのタイガー・ウッズの登用で、ナイキはスポーツ界の頂点に立つ。
多くのサラリーマンゴルファーが、ナイキの用具を手にし、中学~高校バスケ部の少年たちもジョーダンのナイキを履いた。ナイキの用具を手にすれば、タイガーのように遠くに飛ばせられ、ジョーダンのように高く跳べるのを夢見てであろう。さて、ドイツ、バイエルン州に本社を置くアディダスは、1920年にドイツ・ニュルンベルク近郊で、「ダスラー兄弟商会」を設立したのが始まりとされる。
父を靴職人に持つ息子のルドルフ(兄)、アドルフ(弟)のダスラー兄弟が設立した靴製造会社だが、1961年にルドルフとアドルフの意見対立により「ダスラー兄弟商会」を解消し、弟のアドルフはアディダス社を設立した。 「アディダス」の由来は、アドルフの愛称「アディ」とファミリーネームの「ダスラー」をつなげたもの。兄ルドルフはRUDA社を設立したが、翌年、軽快なプーマ社と改められた。
アディダス社のトレードマークである栄光の三本線は、ロゴ扱いとなるために長さ・形など厳しい制限がなされている。アディダスは商標侵害で「Forever 21」や「ジェイコブ」など多くの企業を訴えているが、圧巻は2006年、テニスの四大大会をロゴ規定で訴えたこと。この訴えは、4大大会で選手が着用するウェアでのブランドロゴのサイズが制限されたことによる損害の賠償請求をするもの。
11ヶ月前にルールが決められてから、アディダスの登録商標である3本線ロゴに対するルール改正と話し合いが失敗に終わり、膠着状態になっていることから訴訟へ発展した。ウィンブルドンを主催するオール・イングランド・クラブを訴えることは、そこに所属のメンバーをも訴えることで、スポンサー契約しているT・ヘンマン(英国)らの選手らも被告の一員となる。
オール・イングランド・クラブの代表イアン・リッチー氏は、「ウィンブルドンの大会を通してテニスへ多大な貢献をしてくれている多くの選手を対象に入れるなど、遺憾と言う以外の何物でもない。クラブのメンバー個々人も訴えるなんて、高圧としか言いようがない。」と怒りを露にし、「選手達にはメーカーのロゴで埋もれた服装でプレーして欲しくない。選手達はまさに歩く広告塔である。
服装に付けるロゴへの制約や、品格のあるプロとしてふさわしいドレス・コードを維持していくのは当然のことだと信じている。」と、リッチー氏は今回の決定の背景を語り、「このルールはアディダスに限ったことではなく、全メーカーに出している。選手のウェアーのあちこちにでかでかと3本線のロゴを付けることを承認すれば、ナイキのマークやラコステのクロコダイルなども巨大化する。
私達の見解ではそのようなことは、グランドスラムやウィンブルドンには相応しくないと判断している。」と手厳しい。 こういう経緯もあってか、2014年、ウィンブルドン選手権の主催者が選手の服装や靴の色を白に限定するよう定めたルールの厳格化を発表した。ウィンブルドンの広報担当者ジョン・フレンド氏によると、昨年できた服装に関するガイドラインで、服と下着は白と決められた。
色の付いたものは、ヘッドバンドなどのアクセサリーしか認められていない。女性選手のスコートから覗くカラフルなショーツやアンダースコートは規定違反となるが、ガイドライン決定後も、女性選手が明らかに白以外のものをスコートの下に身に着けている例が後を絶たず、主催者のオール・イングランド・クラブは、選手に書簡を送ったり、控室の掲示などで規則を周知徹底させたという。
さらに違反が見つかった場合、コートに出る前に着替えを指示する方針を示した。女性選手のスコートから覗くカラフルなショーツやアンダースコートに特別な興味をもつファンもなくはないが、校則のような無意味な厳しい規制、下着まで点検するなどいかにも英国である。2007年、仏のタチアナ・ゴロビンが白いスコートの下にはいていたものが、"赤かった"ことで、ウインブルドンがざわついた。
まだ規制が厳格でないこともあって、ショーツではなくアンダースコートと見なされたため違反にはならなかった。日本人スポーツ選手で始めてアディダスと「グローバル選手契約」したのはテニスの松岡修造である。また、アディダスは、本年8月、NBAロケッツのシューティングガード、ジェームズ・ハーデン(25)に今後13年で2億ドル(約148億円)という巨額のスポンサー契約を結んだ。
同選手は昨季までナイキ社だったが、すでに契約期間は満了。ナイキ社は対抗オファーを出さず、ハーデンの移籍が確定した。昨夏のW杯で米国の優勝に貢献したハーデンは、昨季リーグ2位の27.4得点をマーク。シーズンMVP投票では次点となっていた。今季年俸は1576万ドル(約19億5000万円)に加え、アディダス社から1538万ドル(19億1000万円)が年収に加算される。
ハーディンは高校卒業からわずかNBA7季目で、スポーツ界の大富豪の仲間入りを果たす。 日本人メジャーリーグにも凄い選手はいるが、バスケットの大物選手はまるで別格。ジョーダンやハーデンのようなNBA選手がいつの日か現れるような気もないではないが、テニスの錦織には、4強としての地位を不動にして欲しい。同じユニクロのジョコビッチとの差があまりにも…
記事がナイキからアディダスに移行したが、先日アディダスのウォーキングシューズを試着したところ、「これではダメだ」であった。クッションが固すぎで、これほどナイキと違うものかとちょい驚いた。ただ、ナイキもアディダスも幅狭で、日本人の足に一番フィットするのはアシックスである。自分は通常26.5cmだが、アディダスは27cm、ナイキは27.5cm(AF1)、28cm(dunk、SB)を履く。
日本人の足は昔から、「幅広・甲高」と言われたが、足幅が狭く、足甲が低い現代人もいる。日本人の多様な足に合わせたシューズを研究して作ってきた、アシックスの最大の特徴はクッション素材。アシックスのランニングシューズの踵(かかと)には「GEL(ゲル)」と呼ばれるゼリー状のクッション剤が入っていて、このクッションが磨耗しづらい事が特徴だが、ソールは固め。
アディダスはとにかく軽いが固い。ナイキは見た目も良く、履く人のモチベーションを上げてくれる。履き心地が良く、疲れにくいシューズで普段の生活用に購入されている。幅広で日本人に人気のニューバランスは、デザインやカラーリングに特徴がある。「アブゾーブ」という独自のクッション材を使用、着地時の衝撃吸収と、離れる時のパワー(反発弾性)を兼ね備え、履き心地は抜群という。
1906年、ボストンでアーチサポートインソールや偏平足などを治す矯正靴の製造メーカーとして、ニューバランス社は誕生した。創業者ウィリアム·ライリーは、にわとりが3本の爪を使って完璧なバランスを維持していることに注目、それまであったアーチ(土踏まず)をサポートするデザインに加え、3点を支点としたバランス構造を組み合わせ、独自の「アーチサポート・インソール」を開発した。
シューズの中に入れることで「新しいバランス感覚」をもたらすことから、ニューバランス(New Balance)のブランド名が生まれた。足の解剖学的な知識、整形外科や運動生理学への深い理解があってこそ可能となる矯正靴の製造。このノウハウをもとに、60年代にはカスタムメイドのランニングシューズの製造を開始する。モデル「1300」は、今なおニューバランス最高傑作と称されている。
発売当時(1985年)、39,000円と高額にもかかわらず、その履き心地の良さゆえ多くの著名人に愛された。あのラルフ・ローレンをして、「まるで雲の上を歩いているようだ。」と言わせた名品。ナイキやアディダス、コンバースに比べて地味が売り(?)のニューバランスも、日本では「おしゃれ」なアイテムになったが、デザインなどの好みから履くのを敬遠する人は多い。