スニーカーの魅力も人それぞれで、お気に入りのナイキは、スニーカーを芸術の域にまで高めたメーカー。靴は歩行の際に障害物から足を守るためのものから、跳んだり、走ったり、投げたりの、アスリートの運動性を高める機能をとことん追及した。それが今やスポーティーファンションとして、あるいはシックなコーデにおいても、スニーカーは愛されている。
ナイキといえばジョーダンに代表される、エア・ジョーダンシリーズにも魅力的なスニーカーは多く、ファンも少なくないが、自分はジョーダンシリーズには興味がなく、一足も所有していない。今後も所有はないだろう。スポーティな要素が強いエア・ジョーダンシリーズは、カジュアルにもスポーティな格好にも全モデルがほぼ相性が良いが、自分は基本的にローカット志向。
これまで発売されたナイキのデッドストックなどを眺めているうちに、欲しいという前に手にして近くから眺めていたいと、それほどに美しいスニーカーは山とある。名画等を眺めているうちに部屋に飾って毎日観ていたいという感覚だ。靴は眺めるものではないが、ナイキのスニーカーは眺めて楽しい。美しいものを所有したいというのは、人間の芸術に対する畏怖であろう。
多くのコレクターという人は大枚はたいて芸術作品を手中にするが、そこには所有欲というものもあろう。自分もナイキのスニーカーをよく買うが、現行品よりもコレクターが手放すデッドストック品が多い。コレクターの定義が何かはわからないが、自分的にはナイキコレクターちは思っていない。その理由は、いかに美しくとも、履くを前提にしない物は購入しない。
つまり、コレクターとは集める事が主と自分なりに定義する。したがって、このスニーカーはどの洋服と合うかなどと思考し、あまりに足先だけが目立つ奇抜なものについては、購入を避ける。若者はすべてのものが正統と言えるほどに、何を着、何を履いてもハマるが、老齢者にはあり得ない若さの特権だ。だからか、極度な色使い、多色商品はとても買う気になれない。
スニーカーの魅力としての共通項でいうと、カジュアル全盛の今の時代にマッチしてること、デザイン、カラーリングの豊富さに加えて、スポーツ選手が履くカッコよさ、若々しいイメージ感などなど。マイケル・ジョーダンのシグネチャーモデルAIR JORDANは、1985年に登場したが、この復刻版であるAIR JORDAN1がオークションなどで平均7万円前後となっている。
スニーカー一足7万円に驚いているようではスニーカーの世界ではズブの素人。アレキサンダー・マックイーンは、プレミアムなしの定価で112,955円。アレキサンダー・マックイーンは英国の奇才と言われたデザイナーで、幼い頃からファッションデザイナーを志していたが、ファッション・スクールには歩まず、16歳で紳士服の仕立て職人としてキャリアをスタートさせた。
「ファッション界のフーリガン」とも称されたマックイーンは、挑発的な言動やスリリングな表現はたびたび騒ぎを呼び、大企業やリッチ層にこびない態度を貫き続け、ランウェイショーの最後の挨拶にも、チェック柄シャツやジーンズで現れたりした。40歳で非業の死を遂げた彼の死因は自殺と目されており、遺体発見の翌日には、母の葬儀が予定されていた。
流行だけがファッションでなく、好きな物を着るのが大切だ。「これをためらいなく履けた時代もあったんだろうな」と思って、そのように思うだけで満足を得れるからだ。ド派手なカラーリングは観賞用として十分である。デザイナーの想像力などにほとほと感心したりと、別次元の捉え方をする。「どうしてこんなスニーカーを思いつくんだ?」と目の保養になる。
スニーカーにも流行はあり、ナイキにも流行系はある。例えば数年前辺りから、「コルテッツ」がブームになっている。ナイキのコルテッツといえば、1994年公開の映画『フォレスト・ガンプ』で、フォレストが恋人ジェニーにプレゼントされ、ランニングの才能に目覚めるきっかけになったというあの一足。流行に関心がないので、コルテッツブームの背景は知らない。
知らぬなら知っておくのも知識。調べてみると、なんとNIKEで初めて作られたスニーカーであるという。創始者のブル・バウワーマンにより1972年に発表。ランニングシューズのパイオニア的存在として知られ、クラシックな配色が特徴的なスタイルは、ストリートから映画まで様々な場面で着用された。2012年春シーズンには、ヒールタグのついたオリジナルモデルが復刻。
近年のスニーカーブームもあり、「ナイキ」ではエアマックスと同様に人気のシリーズになっているという。が、関心がないこともあって所有していない。ナイキコルテッツは、そのシンプルさからいって、スニーカーというより、ランニングシューズの基本形・原点と言うべきものであろう。芸術性の限りを尽くした大盛り、テンコ盛りに比べてシンプルさが愛された。
靴ではないが、夏目三久が数日前に『怒り新党』で着てたナイキのトレーナー・ニットが話題になった。デザイナー阿部千登勢によるブランドsacaiとNikeLabのコラボ商品で、軽量性、保温性、通気性に優れたナイキテックフリース、ケーブルニットのディテールが保温性を強化され、この二つを融合させることで寒い日でもクラシックなスタイルを演出してくれる。
sacai×Nikelabのコラボは、シューズにも反映されている。Supreme×Nikeには名作が多い。また、ナイキには2003のフランス、パリにて "Dunk Low Pro SB PARIS"と呼ばれる幻のスニーカーが出現した(通称パリダンク)。アッパー部分にデザインされているのは、フランスの画家ベルナール・ビュッフェの壁画で、たしかにその美しさと貫禄は素晴らしい物がある。
世界限定200足で売り出されたが、何と1時間で販売中止となった。理由は、ベルナール・ビュッフェの著作権をクリアしていなかったためで、発売直後にクレームが入ったことによる。本商品が1月にヤフオクに出品され、最終落札価格は900,000円となる。まさにコレクターの世界である。と、これで驚いてはいけない。世界限定1500足「2011 NIKE MAG」は220万円の落札。
「NIKE MAG」とは、1989年公開の映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』で、主人公マーティーが着用した未来スニーカーを忠実に再現したもの。ナイキ・ジャパンでは日本に1足限定の「NIKE MAG」のオークションを、ナイキ原宿閉店後に開催。ナイキジャパンによると、この男性は同社が開催前にメールで参加希望者を募り招待した抽選25組(合計50名)の1人。
220万円という落札金額は、一般客を含めて行われた全10都市開催のなかで世界でもトップクラスの価格。男性はオークションを終え、「『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』が大好きで、ファンだったらこの機会は絶対逃せないと思った。どこまで価格が上がっても落札したいと思っていた」。満面の笑みであったという。欲しいものが手に入るのは嬉しいものよ。
ニューバランスは好みでないので買わないが、ナイキはこれからも買う。コレクターではなく、あくまで履くという前提で…。ただし、困ったことには下駄箱にまるで余裕がなくなった。何足かは靴箱に入れてしまって倉庫。そういう事情もあって買い控えてはいる。好きなスニーカーを履いて大地を蹴って生きていくのも、素朴な自己満足か。