2008年で生誕100周年を迎えたコンバース。 「100周年記念モデル」を次々と リリースしているが、キャンバスオールスター抜きにコンバースは語れない。オールスターは1917年に誕生し、老若男女を問わず幅広い層に 支持されているスニーカーだ。幾度のマイナーチェンジを経て現行のデザインになるが、その原型とも言われるのが、 オールスターのヴィンテージ、チャックテイラーモデル。
今から30年以上前のオールスターだが、根強い人気がある。「チャックテイラーって、ヒールパッチが違うだけ?」などと、興味がない人には同じに見えてしまう。そこで、チャックテイラーと、現行のオールスターの違いに迫ってみる。以下の画像は左が70年代のUSA製チャックテイラー、右が現行のオールスターだが、USA製は生産中止なのでベトナム製。先ずは分かりやすい違いとしてヒールパッチがある。
チャックテイラーのパッチの色は黒と紺が多い。60年代のパッチは 真ん中に大きな星が1つと左右に小さな星が2つ。 通称3つ星。70年代のは星が1つ。オールスターは、76年から白ベースのパッチになり、文字も 「chuck★taylor」から「ALL★STAR」に変更された。 USA製はパッチの下部に「MADE IN USA」と書いてある。 最近のはこのパッチが擦り切れないよう、 厚みが1ミリから2ミリに増している。
大きさは全体的にチャックテイラーが大きい。 ソールがチャックテイラーの方が5ミリほど分厚いため、 高さ、赤線と青線の太さも違う。色の違いは、オールスターと比べて、チャックテイラーの方が全体的に明るめ。キャンバスは白に近い生成りで、 赤線も鮮や。青線はそれほど差はないが、 チャックテイラーの方には細かい縦線が入っている。さて、デザインではなく履き心地の違いはどうか?
とりあえず重さが違う。どちらもセブンハーフで計量すると、チャックテイラーはソールが分厚いのでちょっと重めの450グラム。オールスターは、最近のアップデートで軽量化が図られたため、 370グラムと軽い。次にホールド感だが、チャックテイラーのサイドに山なりのステッチが入って いる(通気孔の左)。これは単なるデザインではなく、この裏に「あて布」という補強用の布がついている。
この「あて布」は現行のオールスターにはなく、80年代前半くらいまでのディテールとなっている。ヒールカウンター (踵部のあて布)を比べると、チャックテイラーの方が面積が大きく、ウェスト(土踏まずあたりの絞り)も キュッと締まっているので、チャックテイラーの方がホールド感は良いとされる。また、ソールも分厚くクッション性があることで、 履き心地はチャックテイラーに軍配が上がる。
靴紐はチャックテイラーがコットン100%、インソールの ロゴデザイン、シュータン(オールスターには布製のタグがついています)、 つま先の上がり具合(オールスターの方がツンと上がっている)、 通気孔の位置、アウトソールの細部、つま先の凸凹のきめ細かさ、 全体のシルエットなど、細かな違いは多い。 そんなチャックテイラーとオールスターの違いを一言で述べるなら、「存在感」であろう。
チャックテイラーの方は個性的で自己主張が強い。重厚感もあり、ヴィンテージならではの雰囲気が漂う。アメカジにマッチするのはチャックテイラー。それに対し、 現行のオールスターは上品で控えめ。自己主張をしないので、 アメカジでもモードに限らず、どんなスタイルにも合わせやすい利点がある。どちらが好きかは人によって違うが、オールスターはコストパフォーマンスの高さが魅力。
5千円前後で手に入る現行 モデルの方がいいと言う人もいれば、MADE IN USA、あて布、アウトソールのラバー、シューレース(靴紐)、 チャックテイラーといった、ヴィンテージにこだわる人もいる。たかがオールスター、されどオールスター。 長寿モデルだけに奥が深いスニーカーである。現在、コンバースUSAは米ナイキ社の傘下であり、インソールも改良されてクッション性は向上している。
さて、次はニューバランスについてだが、『ニューバランスのスニーカーはなぜ"オシャレ"なのか?| 坂井直樹「デザインのたくらみ』 なる記事がある。一足もないし、一度も履いたことのないニューバランスが、オシャレであろうとなかろうと興味はないが、近年ニューバランスのスニーカーが流行している。カジュアル靴を扱うライフスタイル部門(2013年1~10月期)の売上高は、前年同期比54%増。
もともと、偏平足などを治す矯正靴の製造メーカーとして誕生したニューバランス社。社名は、履いた人に"新しい(new)バランス(balance)"感覚をもたらすことに由来している。どちらかというと地味なイメージをもたれていたニューバランスが、なぜ今オシャレと言われ、流行りだしたのか?かのラルフ・ローレンは、ニューバランスの最高傑作「1300」モデルを、「まるで雲の上を歩いているようだ」と言った。
「キャシディ ホーム グロウン」の八木沢博幸氏は、ニューバランスについて、「すごく保守的だけれどリッチ、質素だけれどスタイリッシュ、という彼らのスタイルがすごく新鮮で、憧れていました」。カラフルさや派手さではなく、「履き心地」や「質素の中にあるスタイリッシュ」に"オシャレ"を見い出す人が急増している。見た目より機能性を重視する動きは、「究極のノーマル」というトレンドに通じている。
機能性重視でモノを選べば、結果的に「普通な外見」の物を選ぶことになる。なぜなら普通の外見とは、「人とモノとの最良の関係が考え抜かれた上でのデザイン」を指す。紙を止める"あの"クリップや、アイスクリームを食べる"あの"木製スプーンのように、無駄がなく、機能的な面から、「やっぱりこれ!」といえるモノだ。「機能的な物は美しい」といったのは、appleのスティーブ・ジョブズだった。
こんにちの物質社会において、過剰な生産・消費活動による環境へのダメージを配慮、無駄を省き、本当に必要なものを身につけようというトレンドが叫ばれている。それが、機能性や普通こそが「オシャレ」だとし、そのアンバランスな正論が、世の中に蔓延しつつある。ニューバランスのヒットは、「履き心地」や「質素の中にあるスタイリッシュ」に"オシャレ"を見い出す人々が急増している点にある。
さらには、ナイキのスウォッシュやアディダスのスリーストライプスなど、スポーツブランドのスニーカーにはブランドを象徴するキャッチャーなデザインが欠かせない。が、ニューバランスのNマークは見れば誰でもそれがニューバランスのアイテムである事がわかるくらい、説得的で訴求力の高いデザインといえる。自分も含めてニューバランスの巨大な「N」を、どうにも好きになれない人はいる。
本当に機能性だけなら、アシックスやミズノのシューズが巷に溢れなければならないが、ファッションアイテムがマスにヒットする為には、デザインのわかりやすさが必要であり、ニューバランスが支持されている理由は、そのわかりやすいブランドアイコンによるデザイン性とも言われている。またスニーカーの中でも高価な価格帯であり、ファッション好き以外にはなかなか手を出しにくいものであった。
よって、ファッション好きだけに留まっていたニューバランス人気が本格的にマスに拡大された原因として576の廉価版である574のリリースが大きい。セレクトショップだけでなく、ABCマートなどの量販店でも取り扱われるようになり、その価格の安さと販売店の多さによる入手のし易さ、そして量販店でも手に入るのにセレクトショップでも扱っているバリューの高さがマスへのヒットに繋がって行った。
もう一つ、ニューバランスのヒット理由として、マッチするファッションテイストの拡大があげられる。メンズ、レディス問わず、レトロスポーツがトレンドとして拡大している。スタジャン、プルオーバースウェット、スウィングトップ、ウィンドブレーカー、コーチジャケットにライン入りソックスといった、レトロ感のあるスポーツアイテムとのコーディネイトが目立っている。それにスニーカーが合うのは当然である。
ニューバランスは怖ろしく流行のスニーカーでありながら、ゆえに「流行に飛びついたと思われるのがイヤ」と、避ける人もいるようだ。自分はそれはない。流行してようがいまいが、気に入ったら買う。ニューバランスの次はナイキと予測を立てるファッションアナリストもいる。彼らは職業柄流行やトレンドを予測する立場。自分のナイキ好きは何だろう?好きなものに理由も理屈もないと言うのが正解か。
「好きなものはしょうがない」、「好きになったものはしょうがないだろ」ということだ。案外、嫌いなものについての明確な理由はハッキリしている。ニューバランスの巨大なNが嫌だ」といっても、好きな人間は「なんで~?」と訝しがる。子ども時代のかつてのヒーローに月光仮面、七色仮面、スーパージャイアンツ、ナショナルキッドなどがいたが、胸に巨大なNのナショナルキッドは好きでなかった。
それが理由というわけでもないが、無意識もしくは潜在的な理由かは分らない。ある奴が、「スーパーマンだって、胸に「S」って書いてあるじゃないか?」というので、「あれはTシャツのサイズを現すSだろ?」と、ギャフンの煙に巻いておく。「いくらなんでもアイツがSってこたあないだろ、LLもしくは3Lでは?」と、jokeにjokeを返してきた…