Quantcast
Channel: 死ぬまで生きよう!
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1448

さまざまな自己省察 ②

$
0
0
いろいろなシチュエーションで本当の自分を晒せば、他人はそういう自分をそれぞれに捉えたであろう。ライヴで席を立たず、耳を澄まして聴いている自分を、「クラシックのコンサートじゃないのに…」と言った者もいた。「なぜもっとのらないんだ?」、「のるというより、いい音楽をじっくり聴いていたいんだよ」。「ふ~ん…みんなと一緒に騒ぎたくないの?」

「うん、オレは音楽を聴きたくて、だから金を出してる…」などと言っても、なかなか理解は得れない。外国から来たアーチストたちも異様におとなしい日本人の聴衆に驚いたらしい。日本公演を前に、「日本人はおとなしく一緒になってノったりはないから、そう思っておけよ」と、来日経験のあるアーチストからアドバイスを受けた、とあるロックバンドが言っていた。

イメージ 1

実際、どうなんだろう?アーチスト側からすると、一緒にコンサートを楽しむ聴衆と、じっと聴き入る聴衆と、どっちが演りやすいのだろう。ミック・ジャガーだったか、「こいつら音楽を聴きに来てるんじゃね~。ただバカ騒ぎしたいだけさ!」そう聴衆を詰るような発言をしていたが、「ちゃんと聴いてくれる日本人の聴衆は好き」というミュージシャンはいる。

リップサービスかも知れないが、その辺りのことは当事者でないし、本当のところは分らない。が、スタジオ録音よりもライヴの方が好きというアーチストは結構いるようだ。ライヴの雰囲気に熱くなって、演奏にプラスアルファが加味されるからだという。ハードロック系やジャズ系以外の、クラシックピア二ストのそういう発言も聴いたことがある。その逆もあった。

グレン・グールドというピア二ストは、絶頂期にコンサートを止めた。その理由を彼はいろいろ述べているが、次のような言い方もした。これは、グールドが「コンサートは死んだも同然、レコードなどの録音技術のない過去の遺物であり、遺産である」。の発言に対し、「コンサート活動を主体に行っている同業者をあなたは個人的に傷つけていないのか?」に答えたもの。

「ある意味そうとも言えます。私はコンサートを信じない。コンサートへ通う大部分の人たちも同じでしょう。人々は思い出を刻むためにコンサートに行くんです。その思い出を燃え立たせるとある程度音楽に近づいたと思える、そのためにコンサートに行くんです。音楽に近づくこと等ありません。コンサートに通う大部分は音楽家ではなく、音楽について無頓着と思うから。」


ハッキリ述べているが、グールドなりの偏見もあり、的を得ている部分もある。別の理由としてこうも言う。「わたしにとって生の聴衆は負担なのです。コンサートでの演奏をやり直しができないことにむかつくんです。ある演奏旅行におけるわたしの演奏はヒドイものでした。おそらく練習不足のせいです。あるいはレコードの良い演奏と比較して思うのかも知れません。

良くない演奏が進むと止めたくなるんです。曲の途中で止めて、もう一度最初からと言いたくなるんです。今まで何度もそういう気持ちになりましたが、スキャンダルと酷評を覚悟できず、できませんでした。もし、それが許されるならステージに戻ってコンサートを続ける価値はあると思います」。この言葉はある意味責任感に満ちた、また、独創的な発言である。

ここまで考え、思うのか…であるが、このような発言をする者は他にいず、コンサートをしない理由がこのような考えにあるというのも驚きである。グールドの余りの率直な物言いは、彼の生き様にも現れている。聴衆を前に演奏することで、プラスアルファが加味されるアーチストもいれば、グールドのように、「聴衆が大きな負担になる」というアーチストもいる。

人間は幅広く一筋縄とはいかないし、多種多様である。そういえばロックアーチストのライブの名盤と誉れ高いディープ・パープルの、「ライヴ・イン・ジャパン」。あれがなぜ名盤となったのか?様々な人が様々に書いているが、思うに日本の聴衆の演奏をじっと聴くという姿勢に、メンバーも触発されたのではないか?そのように邪推している。いつごろからだろうか?

イメージ 2

ライヴでは1曲目から聴衆が総立ちとなり、最後の最後まで立っているのが通例、みたいになったのは…。「ライヴ・イン・ジャパン」のアルバム・ジャケットを見ても、結構座っている人が多い。遡って1966年6月30日 - 7月2日に同じ武道館で行われたビートルズ日本公演では、観客は座席から立ってはならないことを条件に、武道館使用が許可されたと言われている。

それが、当時のロックバンドに対する日本的な作法であったようだ。いずれにしても、座席から立たないこと、つまりお行儀がよいことが武道館使用の条件であると、解釈していいのではないか。ビートルズ以降も、おとなしく聴いてくれる日本の聴衆ゆえ、演奏しやすいというアーチストの印象であろう。会場によっても違うが、武道館では特に立つことにうるさかった。

イメージ 6

ビートルズ公演の10年後の、1977年のキッスのライヴ公演でさえ、映像で見る限りは誰もが座席に座っている。ところが、1978年のレインボウ日本公演札幌会場において、1曲目からファンがステージ前に殺到し、将棋倒しになって一人が圧死する事故が起こってしまった。この事故は当時社会問題となり、以来ライヴ公演で暫くは座席から立たないことが強制された。

おとなしく聴きいる聴衆とディープ・パープル、「ライヴ・イン・ジャパン」の相乗効果のほどは想像するしかないが、ロックバンド「メタリカ」のラーズ・ウルヒッヒはこのように言う。「あれを始めて観たのは73年2月だったが、あれほど強烈なライブは今まで観たことがなかった。ロックが忘れかけていることだが、ステージに上がったら一瞬、一瞬が大事なんだ。」

イメージ 3なるほど…。パープルはそのように演奏していたのだろう。メンバーだったロジャー・グローヴァー(Bass)は、「リッチーとギランはギターと声で刺激しあっていたし、一番いい時期にあった僕たちを純粋な形でとらえている」。キーボードのジョン・ロードは、「全員が熱くなっていた。だからあのアルバムは好きだ。皆が互いの音を聴いてそれぞれ最高のプレイをした。」

リードボーカルのイアン・ギランはどうだったか?彼は73年の二度目の来日公演後にバンドを脱退したが、辞めると決めたのは72年だったという。「自分が入った頃のパープルとは違うものになっていった。楽しめないなら辞めたほうがいいと決断した」とギラン。彼はロジャーと共にバンドを去った。ギランと確執のあったリッチー・ブラックモアは多くを語らない。

「『マシン・ヘッド』はヒット性を秘めたアルバムだったが、あれが広く受け入れられたのは、『ライヴ・イン・ジャパン』の後だ。ステージで取り上げたことで、より大きなものとなった。」とリッチーが言うとおり、「ライヴ・イン・ジャパン」は、「マシン・ヘッド」に影響を与えた。「ライヴ・イン・ジャパン」の企画は日本側から提案されたものだった、とジョン・ロードは言う。

「日本限定のライヴ盤を出したいとのことだった。ライヴには自信はあったが、ライヴ盤には消極的だった。よって、日本限定という事で承諾した。当初、『メイド・イン・ジャパン』というジョークのようなタイトルをつけてね。なぜなら、当時のイギリスで日本製品は二級品扱いだった。だから、日本限定発売にしたわけだが、聴いてみたら予想以上に素晴らしかった。」

元々ライヴ盤というのは、70年初頭は、金のためであって、音質クォリティなど望むべくもなかった。スタジオ録音でまともな作品が作れないとき、仕方なく出すという程度のものだったらしい。自分が始めてライヴ音源を聴いたのは、1964年にリリースされた「ビーチボーイズ・コンサート」であった。友人宅で、兄貴のレコードだからと、コッソリと無断で聴いた。

純粋なライヴというよりODで手が加えられている。音質も良く、臨場感ある録音。この時始めてビーチ・ボーイズを知ったが、ブライアンのファルセットが好きになれずファンにはなれなかった。次に聴いたライヴ盤は1965年発売の、「ザ・ベンチャーズ・ライヴ・イン・ジャパン」で、これは衝撃だった。モズライトの力のある分厚い音と、メルのドラムが強調されて迫力満点。

イメージ 4

グレッチの抜けのよいタムの音、カンカンに締め上げたスネアのリム・ショットにしびれた。スタジオ録音の美しい音よりも、ライヴ録音の粗雑だが鬼気迫る臨場感と、彼らの動きまでもが感じられた。最後の「キャラバン」で、ドラムのスティックでベースを叩くのはTV映像で観ていた。同じことをバンドでやろうとなったが、リードギターが「キャラバン」を弾くテクがない。

それでもメンバーにせがまれ、おそらく血まなこになって練習したのだろう。とりあえずごまかしながらも一応の「キャラバン」が出来上がったが、いい加減に弾いている自分に嫌気がさしてか、リードの碓井さんは「キャラバン」に自己嫌悪を抱いていた。それはともかく、ベンチャーズ・コピーバンドは、リードギターさえどうにかなっていれば、それでよかった。

懐かしい思い出だが、市民館でライヴもやった。が、高価なオープンリール・テープ・レコーダーなど誰も所有していず、残念ながら録音はないし、聴いてみたかった。自分たちの音楽は演奏で聴くのみで、それはまあ、聴くというより演るということである。それぞれのメンバーに、それぞれの演奏がおぼろげに残っていることだろう。昨今の進化した録音機材が羨ましい。

イメージ 5


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1448

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>