自分がこども時代のことをたくさん覚えている。その時の心情ですら忘れてはいず思い起こすこともできる。すべてとはいわないが、あの時どう思ったか心の流れや動きまで脳裏に浮かぶことはある。そのことが貴重で大事なことに思える。それがこどもが何かを理解することになるだろうと。誰もがこどもであったはずなのに、大人になれば大人の論理や都合が優先する。
物事を正しく考えるならそれも大切だし、否定はしないが、果たしてそれらが正しく考えた上での結論かどうかを、親は自問し苦しまねばならない。なぜなら、正しいことは自分の思いに相反することもあり、苦しまねばならないとは、そちらの方が多いからだ。以前、「逆こそ真の子育て論」というのを書いたが、親が基本的に親バカである以上そういうものかも知れない。
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改めていうなら、「親が子どもにこうしてやりたい」と思うそのことは実は正しくなく、「こうしたくない」や禁止事項に子どもにとって正しいことが多い。自分は冷静にそのように実感した。そうでなくとも、人は自分の行動をつい正しいと思いがちだから、真に正しい行いとは自分の意に反していたりする。そこの見極めや嗅ぎ分けをする労力も行為も実は苦しい。
本当はしたくないことをするのは誰でも苦しいだろう。だから、好きなことを正しいと思うことが楽なのだ。人間はずるいし横着な生き物だ。いつだったか子どものころに、「動物は生きるために食い、無用な食は行わない」という記述を目にしたときは感動した。率直に動物は偉いと思ったことも忘れない。また、動物が動物を捕食することで増減の調整も行われているという。
人間に置き換えて、「増減」を考えると、面白い事実に突き当たる。つまり、必要以上に食べるから太るという事実、果たして人間が賢いといえるだろうか?節操がない、自制心がないという点において、高度の肥満はそれを示している。確かに他人がとやかく言う問題ではない。デブは好きでデブになったのだから、悪口なんか言われる筋合いはないが事実なら正しい。
自分は生まれ持った容姿や境遇に批判を抱くことはないが、自己責任の範疇における自己正当化は説得力がないと判断する。「わたしは好きでデブになった」といってはみても、それは結果論を肯定してるにすぎず、「デブになりたくて乱食いした」のではなかろう。実際問題健康にもよくない酒やたばこにしても、医師に言われるまでもなく自制心は簡単に身につかない。
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子どものころは誰でも不自由であった。親から学校から規則や制約の羽交い絞めの中で生きていたようなもの。大人になって自由を供与された時の喜びはひとしおだったろう。自分も母親から離れて一人暮らしを始めたときは、言葉では言い尽くされない感激を味わえた。奴隷が鎖から解き放たれたようなものだったとう。親を無視したとはいえ、見えない呪縛に縛られていた。
「牢獄にいて人は初めて自由の値打ちを知る」とはいうが、自分で稼いで好きに使える成金亡者を批判したいとは思わぬが、あまりに自由にお金を使う自分に批判的になることはある。どちらかといえば好き勝手に生きたい自分であるがゆえに、自制心の必要を感じるのだ。フランクリンというアメリカの政治家・実業家がいる。彼は凧と雷実験で有名な科学者でもある。
彼はまた、ワシントン、ジェファーソンとともに、合衆国建国の三大偉人としても尊敬されている。その彼が『フランクリン自伝』の中で述べた十三の徳目があり、これは彼が実際に自己の修養のために課したものである。18世紀の人ゆえに、現代人には馴染めないこともあるにはあるが、いきなり、「心身が鈍くなるまで食うな。酔うまで飲むな」は耳の痛い至言であろう。
自戒の意味も込め、アメリカ人であるフランクリンの言語も記してみた。同じ人間であるフランクリンができたのだから自分にできないことはないと思うか、フランクリンだからできたと思うか、フランクリンが何処の誰か知らんが、人は人で自分は自分だと思うか、どれでも自由に選べる。これができたからといってフランクリンにはなれないが、多少の自己向上は望めよう。
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1.節制、自制、節度
・心身が鈍くなるまで食うな、酔うまで飲むな。
2.沈黙、寡黙、無口
・自他にとって無益なことは語るな。無駄口は慎め。
3.規律、順序、整理整頓
・すべての物は場所を定めて置き、すべての仕事は時間を決めて成すようせよ。
4.決意、決心、決断
・なすべきことなすよう決心せよ。一旦決心したことは必ず実行に移せ。
5.倹約、節約、質素
・自他にとって無益なことに金銭は使うな。
6.勤勉、努力、刻苦勉励
・時間を空費するな。常に有益なことを行い、無用なことはするな。
7.素直、正直、誠実
・嘘、偽りで他人に害を与えるな。純真潔白で公正に考え、口にも出せ。
8.正義、公正、公平
・他人の利益を傷つけるな。なすべき義務を怠って他人に害を与えるな。
9.中庸、穏健、温和
・何事も極端を避け、当然にして起こるべく害を受けようとも激怒するな。
10.清潔、きれい好き
・身体や衣服、住居が不潔であるのを許容も黙認もしない。
11.冷静、静穏
・日常の小事や出来事、不可避なことが起こっても心の平静を失わない。
12.純潔、貞節
・性交に耽って身体を弱めたり、自他の評判を損なわぬ事なきようにせよ。
13.謙虚、謙遜
・イエスとソクラテスを見習え。
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自制心の必要性を最近は強く感じるようになった。何の束縛も誰からの束縛もない自由を横臥できる境遇なら、意識して自身を絞めなければだらけてしまう。ウォーキングもカントの日々の散歩のように、雨の降らぬ以外はと厳格に続けている。自分のこうした徹底ぶり、へこたれない心の強さに磨きをかけたいとの意図もあるが、最近はそれらに加えて自制心を持ち出した。
ウォーキングを始めたころは、途中で自販機のジュースを、コンビニでアイスを…、欲するがままに飲んだり食べていた。ところが今は一切それをしない。雨には負けるが、風にも夏の暑さにも、自販機の誘惑にも負けぬ心身を作りたいわけではない。自制心の鍛錬である。約2時間30分程度の距離であるが、自販機の誘惑に負けないことを、自制心の鍛錬と課している。
ある意味くだらないが、くだらないことができるとかいえばそれは別。給水ポイントは中間点の公園一箇所と決めている。公園の水をタダで飲み、顔と手を洗い、そこで約15分の休息をとり、以後は自宅まで足を止めることはない。これも自制心。自制心が何を生むか?快感を増大させる。我慢の果てに幸福がある。若きころにある先輩が、「女とヤル時は溜めておけ」といった。
同じことだ。自宅の冷蔵庫の一滴を砂漠のオアシスと見立てる。自宅から30分くらいまで迫ると、あと少しで自宅…、冷蔵庫の冷えた炭酸水が頭を巡り始める…、そんな素朴な思いが数台の自販機を蹴散らせる。こうしたささやかな幸福感を人間は意識で生み出すことができる。130円を使うことで得られる幸福感、130円を使わぬことで得られる幸福感。どちらが高い?
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健康のためとか、何かと理屈をつけて自分を強いるのは能がない。変哲のない行為を楽しむための自制心の効用である。こどものころ、河原から宝石のような小石を見つけた想い出がある。それが幸せだった。こどもは無邪気・正直・素直・そして無垢。大人は理屈で動くが、子ども的感性を上手く自然に巧みに利用する能力(?)を絶やさぬ自分が好きなようだ。