誰がつけたか「浪速のエリカ様」。維新の党の上西小百合衆院議員(31歳、比例近畿)が、病気で国会を欠席した後に旅行に行っていたとされる問題で、大阪維新の会は除籍処分を決めたが、上西議員は議員辞職を拒絶。上西議員は3日の会見で、国会を欠席した2日後に京都府宮津市を訪れたのは支援者との会食のためで、旅行ではなく仕事だったと釈明した。
しかし橋下代表は、一連の行動は極めて不可解で、日頃の言動にも問題が多い上西議員に対し、「このようなグダグダ状況にした騒動の責任をとって議員辞職をし、2、3年修業して次の選挙で維新からもう一度出直してはどうか」と打診したことを明かした。上西議員は、「議員の身分は法に触れない限り奪われない。それだったら除籍で結構です」と拒否したという。
橋下氏は、今回の処分の理由を、「彼女はこれまで国会議員としての言動に非常に問題があり、大阪維新の会として大阪府議会に指導預かりとして預けてたが、全然改善の見込みがないと報告が上がってきた」と明かし、「上西はああだこうだと言っているが、一連の行動と、これまでの言動を総合的に判断した」と説明、大阪維新のメンバーだった上西議員を批判した。
「(初当選から)2年、彼女は完全に永田町の感覚になっています。永田町の感覚では除籍にならないかもしれないが、維新は納税者の感覚でやる。税金をあんな議員の給料にあてることはできない。彼女を育てられず、お騒がせして申しわけありませんでした」と頭をさげた。「国会議員をやり続けたいみたいだ。あの議員とは二度と付き合わない」と、語気を強めた。
「あの議員とは二度と付き合わない」、「あんな国会議員の記者会見につきあって…」と述べるなど、同士からこれほど小バカにされた議員がかつていただろうか?橋下氏からすれば、どうしようもないバカ女に思えたのだろう。候補者を議員にさせるのは政治グループの代表者でも、政党党首でもない、国民である。が、政治家に相応しいと推薦したのは橋下氏である。
大阪維新の会の代表として橋下氏は、「二度と大阪維新の会は公認しない。彼女は政治家として修業が足りなかった」と責任と取った形で謝罪をした。身内に厳しいことはイイことであり、男の理性的な面と評価する。が、ことは上西議員のいうとおり、選挙民から付託を受けた国会議員は、以下の項目に該当しない限りその身分は保証されている。
1.任期満了となったとき
2.衆議院議員は、衆議院が解散されたとき(憲法第45条但書)
3.兼職することのできない(職務専念義務)公務員の職に就いたとき(国会法39条)
4.国会開会中は院の、閉会中は議長の許可を得て辞職したとき(国会法107条)
5.一方の院の議員が他方の院の議員となったとき(憲法第44条、国会法108条)
6.法律で定められた被選挙資格を喪失したとき(国会法109条)
7.比例代表選出議員は、選挙の際に所属していた名簿届出政党等以外の政党等に所属する者となったとき(国会法109条の2)
8.懲罰による除名処分を受けたとき(国会法122条4号)
9.選挙無効訴訟・当選無効訴訟の判決が確定したとき(公職選挙法204条以下)
10.資格争訟裁判で、議員就任後に議員資格を喪失したことが確定したとき(憲法第55条)
国会議員には憲法(第51条)によって保証された免責特権(自由な発言・表決のため、議院で行った演説や討論等については責任を問われないという特権)がある。それによって、議院内での行動は罰されないように思えるが、議院の秩序を乱した場合は懲罰が科される。スムーズな議会運営のために、議院に「院内の秩序を乱した議員を懲罰する権限」を与えている。
具体的には、正当な理由なく会議を欠席したり(国会法124条)、会議中議場の秩序を乱したり(衆議院規則238条・244条、参議院規則235条・244条)、秘密会における秘密事項を洩らしたり(参議院規則236条)、といった行為をすると懲罰の対象になる。上西議員は本会議を欠席したが、事前に医師の診断書が提出されており、"正当な理由なく会議欠席"に該当しない。よって懲罰対象とならない。上の項目以外にも、議院で無礼な物言いをしたり、他人の私生活に関して言及したり、およそ院内の秩序を乱したとされる行為は、すべて懲罰対象となるが、ここでいう院内とは、議事堂という建物を指しているのではなく、「人の集まりとしての議院」の意味で、議事堂外であれ議員活動している場合は院内に含む。懲罰は以下の4つがある。
1.公開議場における戒告
2.公開議場における陳謝
3.一定期間の登院停止
4.除名
4)の除名は、議院の秩序や品位を特にひどく害した者に科される(衆議院規則245条、参議院規則245条)が、議員の身分剥奪という非常に重い処分なので、出席議員の3分の2以上の賛成が必要となる(憲法57条2項但書)。なかなか厳しい条件であり、長い国会の歴史で除名該当者は各院1件。無所属参議院議員小川友三(本会議採決日・1950年4月7日。賛成110票・反対10票)
日本共産党衆議院議員川上貴一(本会議採決日・1951年3月29日。賛成239票・反対71票)。議員身分剥奪の除名は難しいが、過去政党除籍者は多い。上西議員は現在維新の党所属であり、大阪維新の除籍処分を受けて、党首で衆議院議員の江田憲司氏は、「国民の疑念を招いた点で責任は極めて大きい。厳しく処断をしたい」と強調したが、同日除名処分を課した。
今回の上西議員騒動に拍車をかけた議員の男性秘書だが、記者会見席に途中から登場し、議員秘書としての自身の記者への対応について謝罪した。男性秘書は上西氏を取材した記者に対し、「お前、わしの車に当たっとるんじゃ。コラァ!」と巻き舌で制止した様子がテレビで放映されていた。秘書は、「申し訳ございませんでした」と、型どおりの謝罪であった。
上西議員は2012年、第46回衆議院議員総選挙で大阪7区で62,856票で次点落選後、比例で復活当選。2014年の第47回衆議院議員総選挙においても大阪7区で出馬、67,719票で次点落選後比例復活した。大阪教育大学附属天王寺小学校、同中学、同高校、神戸女学院大学卒業という経歴だ。関西でも有名な小学校受験難関校らしいが、学力と頭の良し悪しは別としたもの。
彼女がどこの小・中・高・大学を出ていようがバカはバカである。超難関受験校に入学して賢くなるとは限らない良い見本であるが、政治家はどんなバカでも民意で選ばれる。ならば、比例復活議員の一体どこが民意?ちなみに2012年の衆院選で死票率は53.0%、2014年衆院選の詳細は以下の図表。死票とは、有権者の投票行動が議席獲得に結びつかなかった票をいう。
死票率53.0%という数字は、全国で300の小選挙区の合計で約3163万票となり、前回の46.3%と比べて9.7ポイント増。2012年の総選挙は、「第三極」として新たに日本維新の会や、日本未来の党が参戦するなど、12党が乱立するけたたましい選挙戦が繰り広げられたが、日本共産党も前回までの方針を転換、原則全選挙区に候補者を立てている。
当選者が1人の小選挙区制では、候補が多数で票が分散されれば当選ラインは下がり、落選候補の合計得票数が増える傾向があることから、死票率が上がったようだ。この選挙で小選挙区で237議席の当選者を出し、大躍進した自民党の死票率は12.9%と、大敗した前回選挙の74.0%から大きく低下した。一方、惨敗した民主党は前回の13.2%から82.5%に大幅上昇した。
第三極同士で共倒れが目立った維新の会も81.9%。小選挙区全勝の公明党はなんと死票率0%。上記した当選者1人の小選挙区制では、「落選候補の得票数が増える傾向がある」ことから、中選挙区制や大選挙区制に比べて当然「死に票」が増える。そこで考え出されたのが惜敗率。これは小選挙区における当選者の得票数に対する落選候補者の得票数の割合を示す。
「惜敗率」の高い次点落選者から比例区で復活させるという、重複立候補制である。そもそも公職選挙法では、「一つの選挙において公職の候補者となった者は、同時に、他の選挙における公職の候補者となることができない」と明記されている(第八十七条)。そこで1994年、立候補者が、「小選挙区選挙」と「比例代表選挙」に重複して立候補できるよう改正された。
当然ながら立候補する際に所属政党の許可が得られれば(公職選挙法第86条の2第4項より)、との但し書き付きであるが、許可するに決まっている。上西議員もこの恩恵を受けた比例復活ゾンビ議員である。「惜敗率」なる言葉を持ち出し決定された比例重複立制だが、これは最悪の選挙制度、「小選挙区制」を補完するために採用された、さらなる悪弊である。
理由は、有権者が落した候補が政党幹部によって生き返らされるからだ。そもそも「小選挙区制」の弊害は、1人しか当選できない故に、金と権力のある大政党所属議員しか当選することができない。「小選挙区制」のもとでは、中小政党が当選する(議席を得る)ことは皆無に近く、大政党だけが議席を得る。これに重複立候補制や復活当選が加わるとまさに親方日の丸だ。
選挙というのは、候補者を当選させることばかりではなく、落選させることも重要で、有権者が落選させたのに政党の権限で生き返させるのはどう考えてもおかしい。惜敗率だのと赤飯炊いて喜ぶゾンビ議員に胸糞悪い。悪運強い菅直人元首相は、国民が「NO!」と言ってるのに蘇った一人で、どの面下げて登壇していると思うが、選挙システムが悪いのである。
前回の選挙では地元に張り付き、危機感を前面に出し、ビール箱に乗って演説。「安倍自民の1議席を奪う意味は大きい」と訴えた。妻の伸子さんも、「今度が一番厳しい選挙」と支持を求めたが及ばず。しかし、比例の最後の1人の当選者となる。菅氏は、「小選挙区で議席を獲得できなかったことは私の努力不足。475番目の議席を入れていただいた」と言葉を詰まらせた。
前回の選挙では民主党海江田代表が落選するという波乱があった。これが民主党の末路を象徴した結果である。なぜ海江田氏は落選し、菅氏は当選したのか?二人とも比例と選挙区の重複立候補者である。衆院選の比例選挙は党ごとの、「名簿順」で当選者が決まる。これを、「拘束名簿式」といい、あらかじめ政党の側で候補者の当選順位を決めた名簿を確定しておく。
それによって政党の獲得議席数に応じて名簿登録上位順に当選者が決まるが、衆議院の比例代表制は、全国を11のブロックに分け、それぞれのブロックにおいて比例代表選出を行っている。各政党では当選議席数が確定すると、候補者名簿の上位から議席を割り振る。そのため名簿の上位に掲載されている候補者の方が、当然ながら当選の確率は高くなる。
どちらかが当選するが、名簿上の順位は同じなら「惜敗率」がものを言う。民主党の比例東京ブロックで獲得した議席は「3」であるのに、名簿の同順(1位)は15人いた。その15人から3人を選ぶのに「惜敗率」が使用されるわけだ。菅氏は、東京ブロックで惜敗率が上位となり、ギリギリで12回目の当選を果たし、海江田代表は惜敗率で菅氏に及ばなかった。
地元の選挙民が「ダメ」と意思を示したから落選したはずなのに、復活するなどこんなバカな選挙はないだろう。菅氏は2012年の衆院選でも、自民の土屋正忠氏(72)に敗北し、奇しくも2回連続の比例復活当選となった。上西議員も同じように2回比例復活である。ハッキシ言えば、地元選挙民が、「NO!」と落したような人間は、ダメというのは間違いないようだ。
『悪法も法なり』という法諺(ほうげん。法律がらみの格言・ことわざ)がある。ラテン語で "Dura lex, sed lex"("The law is harsh, but it is the law":「法は過酷であるが、それも法である」)と訳される。これはソクラテスの言葉とされているが、ソクラテスの言行記録とされる文献である『クリトン』に似た記述がある。法治国家は、法がすべてである。
その法にどんなに問題があったとしても、現行法律には従わなくてはならず、「惜敗率が高い落選者から比例区で復活」させるという、重複立候補制度の運用と結果は尊重しなければならない。『悪法も法なり』がもう一つ意味するのは、「法」の限界性。人の作る法は必ずしも「正義」を体現できていないばかりか、ときに正義とは矛盾する「悪法」も存在し得る。
であるなら、人の作った法や制度についての絶対正義を盲信することなく、その内容が社会正義と矛盾することがないか、謙虚にチェックし続けることが必要だ。橋下氏は、こんなバカでどうにもならない人間が議員であっても、辞めさせられないことにどれほど無念の思いを抱いているか推察できる。こんな人間に税金3000万円の虚しさが以下の言葉に現れている。
「29歳だった女の子が(初当選から)2年経つとこうなってしまうのか。国会議員は現金で給料2900万円ぐらいですか?国会で?」と傍らの江田憲司・維新の党代表を巻き込んで聞き出し、「2200万円!これに1200万円の経費が入り、3000万円以上の給料が29歳の女の子に入ったわけですよ。飛行機載るときにはVIP待遇。いや国会議員やると変わるもんだな。
もう完!全!に永田町の感覚ですね。ずっと議員やりたいみたいです」。言葉には悔しささえ感じられる。カネのために議員にしがみついてると言いたげだが、それはそうだろう、誰が考えてもそれ以外にあり得ず、高額給与所得者をそうそう簡単に辞めるはずがない。ノンポリ政治家はみんなお金のために議員をやっている。その上西議員の腹の中はおそらくこうだ。
「橋下さんね~、あんたガタガタいうてるけど、議員は簡単に辞めさせられへんことくらい、知ってるんやろ?うちらの身分は法に触れん限り奪われへんねん。あんたが気が済むなら、除籍でもなんでも好きにしいや。そこらのバカ女のうちやけど、議員にさせてもろうて感謝してるで~」。こういう態度が見え見えのバカ女に、どうにもならん苛立ちだろう、橋下氏の心中は…。
彼の元職は弁護士。弁護士という職業は法あってのもの。法を遵守し、法に依るところが大きい仕事だが、反面、法に対して胸糞が悪くなることもある。「何でこんな法があるんや?まったくバカげてる!」と。橋下氏の現在の心境だろう。法は完全ではないし、万全といえない。バカも法によって保護されるなら、まさに、「人生はむつかしいよ!」である。